パーソナルオーディオイベントのCanJamが、アメリカのニューヨークで3月9日から10日まで開催された。CanJamはHead-Fi主催のイベント。パーソナルオーディオは、ポータブルオーディオだけでなくデスクトップオーディオなども含まれる。イベント自体の雰囲気は、日本のヘッドホンイベントに似ている。
イベントの様子はHead-Fiのフォーラムにある動画や参加者の書き込みで分かる。日本市場ではまだ見かけないが、日本にも近いうちに登場しそうな製品が登場しているので、ピックアップしてみよう。
Campfire Audio「Fathom」
まず日本でも人気の高いCampfire Audioの新作「Fathom」。米国サイトの製品ページは公開されているが、国内導入については不明だ。6基のバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーを搭載したマルチドライバーイヤホンだが、その構成に特徴がある。2基が低音域用ドライバー、2基が中音域用ドライバーというのは普通と変わらないが、残り2基が超高音域用ドライバーとされている。つまり通常の高域用ドライバーはスキップされているのだ。詳細は不明だが、クロスオーバーの分割帯域を通常よりも高い周波数帯においていることが関係していそうだ。Campfire Audio伝統のT.A.E.C機能も搭載されていないようだ。なお、Fathomという名前は海洋分野に使われる水深の単位。いままでのネーミングルールとは異なるものだ。
以上から、Campfire Audioの新機軸を打ち出した製品と推測できる。イベントで試聴したという書き込みは少ないが、正確な音再現を目指した設計のようで、「帯域特性のバランスが取れていて優れている」「低音は抑え気味だが、質の高い表現だ」というコメントがあった。このあたりは、新製品に試聴に長い列を作る日本とは異なり、アメリカの参加者は新製品に対してそれほど関心が高くないのも特徴だろう。
真空管搭載のAstell & Kern「SP3000T」
やはり日本でよく知られているAstell & Kernは「SP3000」の真空管バージョンである「SP3000T」を出展している。DAC ICには「AK4191EQ」と「AK4499EX」を搭載し、DACやデジタル部分はほぼSP3000を踏襲しているようだが、アンプ部分に真空管を搭載している点が異なる。「SP2000T」では真空管部にコルグの「Nutube」が採用されていたが、SP3000TではレイセオンのJAN6418軍用規格サブミニ管(ミニ管より小型の規格)を採用している。これは実際に真空管が軍用に使われていた時代のNOS(新古品)が使用されているようで、かなり本格的な真空管アンプとしての設計が採用されていると言える。SP2000Tで搭載されたオペアンプとのハイブリッド形式も搭載されている。
参加者は「SP3000よりも暖かく、より肉厚で低音寄りのサウンドだった」とコメントしている。SP3000とは音質が異なるのではなく、個性が異なる製品で使い分けるようなものだという声もあった。
Cayin「N3 Ultra」
また、真空管搭載のDAPでは、Cayinも「N3 Ultra」という機種をCanJamに出展している。こちらもSP3000Tと同じ真空管を搭載している。N3 Ultraはフラッグシップ限定版製品「N30LE」に搭載されたGen3真空管オーディオ回路が採用されているということだ。N30LEは日本でも発売されていたので、N3 Ultraも国内導入が期待できるかもしれない。
HIFIMAN「EF499」
日本でもよく知られているHIFIMANは「EF499」という新製品を登場させている。これはDAC内蔵のヘッドホンアンプ製品だが、従来搭載されているHIFIMAN独自のヒマラヤDACではなく、フィリップス製のR2R形式DACを搭載した廉価版。海外価格は259ドルとなっている。国内で販売される場合も比較的低価格で購入できるのではないか。
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