週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

第14世代のSpecial Editionはクセ強め?

暴れ馬すぎる「Core i9-14900KS」、今すぐ使いたい人向けの設定を検証!

2024年03月15日 00時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

Core i9-13900KSとほぼ同じ設定だが
ブーストクロックが増加

Core i9-14900KSと、その近傍製品とのスペック比較。まだインテルの公式データが公開されていないため、クロック等の数値にはまだ推測が含まれている。判明し次第更新する

CPUの情報:「CPU-Z」を使用。コア数やキャッシュ搭載量などはCore i9-14900Kと何ら変わらない

検証に使用したASUS製マザーボードに搭載されている機能でSP値(Silicon Prediction)をチェックしたところ、受領したCore i9-14900KSは102ポイントだった。SP値には個体差があることは承知の上だが、6.2GHz動作のために特別に出来の良い個体をCore i9-14900KS用にとっておいた、という説はない気がする

 Core i9-14900KSの仕様は1世代前のCore i9-13900KSに近い。即ちPBP(Processor Base Power)はCore i9-14900Kの125Wに対し150Wに増量されている。また、Core i9-14900KSのPコアは最大6.2GHz(TVB発動時)出せるよう設定されている。Eコアのブーストクロックも引き上げられているがこちらは4.5GHz止まりだ。それ以外の要素、即ちキャッシュ周りやメモリーの仕様、内蔵GPU等は変更されていない。

 まずは今回の検証環境を紹介しておきたい。マザーボードのBIOSはKなしモデルのパフォーマンス向上が盛り込まれた最新バージョン(2002)を使用している。BIOSはデフォルト設定でスタートしているが、前述の通り安定動作していない。Resizable BARやSecure Boot、Windows HD Color等はこれまでの検証と同様に有効化しているが、メモリー整合性は今回はオフにして検証している(理由は後述)。

【検証環境】
CPU インテル「Core i9-14900KS」
(24コア/32スレッド、最大6.2GHz)
インテル「Core i9-14900K」
(24コア/32スレッド、最大6GHz)
インテル「Core i9-13900KS」
(24コア/32スレッド、最大6GHz)
CPUクーラー NZXT「Kraken Elite 360」
(AIO水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」
(Intel Z790、BIOS 2002)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」
(16GB×2、DDR5-5600動作)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 4080 Founders Edition」
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」
(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0、システム用)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2)

 Core i9-14900KSを動かすには特別なBIOSは必要としない。第14世代が動くBIOSであれば問題なくブートするだろう。だが前述の通り、2024年3月上旬時点における最新BIOS、即ち“KなしSKUにおけるパフォーマンス向上”が可能なBIOSを使っていても、不具合が発生した。無論BIOSのデフォルトでは「CINEBENCH 2024」のマルチコアテスト(10分モード)すらも完走しない。さらに、頻度は低いがアイドル状態でフリーズが発生することもある。以上の点から不具合はCPU占有率と関連しているとは考えにくい。負荷が瞬間的に上がり、それに適応しようとブーストをかけた際、何かが追従できずに不具合が出る、という印象を受けた。

 以下は筆者がCore i9-14900KSでCINEBENCH 2024を完走できるような条件は何かと探っていた時のメモである。安定性向上BIOSがない状態であるため、見当違いのところを突いている可能性も十分にあるし、個体によって突くべき設定が違う可能性もある。

①LLCのレベルを上げる
 CINEBENCH 2024で落ちる瞬間はシーンのレンダリングをしている最中というよりも、シーンのレンダリングが終了した後に多発する。またアイドル時にもフリーズするという点から、何らかの処理が発生した時の電圧変動についていけないのでは? という点が疑われる。

 そこでLLC(CPU Load-line Calibration)が悪さをしている可能性がある。ASUS製マザーボードの場合、自動(Auto)のほか、レベル1〜8までの設定があり、高レベルにするほど電圧変動が抑制される。ASUS製マザーボードではOC用としてレベル4を推奨(BIOS内表記による)している。LLCのレベルを上げれば解決するかと思ったが、レベル6や8にしてもCINEBENCH 2024テストで不具合が出た。

CPU Load-line Calibrationのレベルを高く設定するほど電圧変動が抑制されるが、OC向けのレベル4より上に設定しても不具合は根絶できなかった

②Performance Power Delivery Profile(PPP)を利用する
 Core i9-14900Kレビュー(https://ascii.jp/elem/000/004/163/4163402/)では、消費電力の非常に大きいCore i9-14900Kにおいて、消費電力とパフォーマンスのバランスをとる(とインテルが謳っている)「Performance Power Delivery Profile」、略して“PPP”を使用して検証した。

 無制限運用時よりも若干性能は下がるが、CPUの消費電力は劇的に下がる(無制限時よりも約100W低下)。これをCore i9-14900KSにも応用してみたらどうだろう。PL1/PL2を253W、ICCMax(Core Current Limit)を307Aに設定したが、CINEBENCH 2024のマルチコアテスト10分完走には至らなかった。単純な電力制限の問題ではないと考えられる。

ICCMaxを307Aに、PL1/PL2を253Wにするとインテルが言うところのPerformance Power Delivery Profileとなるが、この設定でもCINEBENCH 2024では完走することなくブルースクリーンが出た

③CPU温度を90℃制限にする
 Core i9-14900KSの限界である6.2GHzまでブーストさせようと頑張り続けるから落ちる、という仮説を立てれば、もっと強烈な抑制をかけてみるというのはごく自然なアプローチだ。ASUS製マザーボードの場合「ASUS Multicore Enhancement」設定を「Auto」ないし「Enabled」にすれば、いわゆるMTP(Maximum Turbo Power)無制限状態での運用となる。

 筆者がインテル製CPUを検証する場合、近年この設定を使用している。もちろんASUS Multicore Enhancementを「Disabled」にしてPBPやMTPの設定を“CPUの定格通りに”すれば不具合なくCINEBENCH 2024も完走するのは確認できたが、わざわざCore i9-14900KSを買うのに厳密な定格運用はナンセンスだ。

ASUS Multicore Enhancementの設定:AutoないしEnabledにすればCPUの定格を無視してMTP無制限で回すようになる。一方、Disabledにすれば安定性は確実に取れるが性能は激しく落ちる。ならば最後の選択は一番下の「Enalbed - Remove All limits (90℃)」となる

 そこで第3の選択肢である“CPU温度を90℃を超えない限りにおいてMTP無制限運用”という設定が浮上する。これを使用することで期待通りCINEBENCH 2024が完走するようになったが、それでも低確率でフリーズやブルースクリーンに落ちる。そこでLLCをレベル6に設定したところCINEBENCH 2024は完走し、その他の不具合も“ほぼ改善”できた(100%でないのが腹立たしいが)。これならCINEBENCH 2024でいきなりCPUパッケージ温度が100℃に到達するわけでもなく、360mmAIO水冷の運用には好適だ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事