「UPDATE EARTH 2024 ミライMATSURI@前橋」会場レポート
前橋で見てきた最新テクノロジーは、暮らしや働き方の質を向上させることができる!?
群馬県・前橋市で開催された「UPDATE EARTH 2024 ミライMATSURI@前橋」。会場にはスタートアップを中心とした77の企業がブースを出展し、大いに賑わいを見せた。医療系テクノロジー、最先端デバイスとロボット技術のレポート記事に続き、本記事では、人々の暮らしや働き方に大きな変革をもたらすであろう新しいアイデアやテクノロジーを紹介する。
■目に見えない「人の感情」可視化
■会社経営、教育、医療、店舗などで感情データを活用
「人の感情」にまつわるユニークな技術を紹介していたのが、オリーブ株式会社(https://www.01ive.co.jp/)。あらゆるもののスマート化・デジタル化が進む中、すべてを生み出すエネルギーの源となる「人の感情」の源泉を生体データに基づいて解き明かし、スマート社会に反映・活用させるという。
ユーザーは同社設定のURLにログインするだけ。すると、PCに搭載されたカメラが生体データ、つまりパソコンの前にいる人の顔の輪郭と動きの特徴、その動きの量、顔の皮膚から計測した心拍情報をもとに、集中度や覚醒度、ストレスなどを分析・解析する。
分析・解析された感情データは、企業、教育、産業などあらゆるシーンでの活用が期待されている。たとえば企業であれば、仕事中に従業員が感じるストレスを発見し、チームメンバーのコミュニケーションの円滑化を促進。リモートワークでは、離れていても個々人の感情や生産性を把握し、パフォーマンスの向上や協力しやすい職場づくりに寄与できる。
経営層や人事・総務部門においては「健康経営・働き方改革」への取り組みにもつなげられるという。また、感情データを自身が知っていれば、いつどこでどんな仕事をしているときに没頭・集中・ストレスを感じているかを把握でき、快適な仕事環境をつくる自己マネージメントも可能になる。
教育現場では、教員の生徒指導の支援、親との情報共有、生徒学習内容の習得効率の向上などに活用。もっと身近なものでいえば、例えば、自動車にこの技術を取り入れれば、運転者のストレスや疲れが可視化されることによって、より快適な運転や車内空間が実現されることになる。
「感情を察する」ことは、世界でも日本人が最も得意とするという。その点に着目した日本ならではの取り組みに興味は尽きない。
■忘れられない声をいつでもそばに
■故人の声・姿・性格を再現するプロジェクト
「大切な人の声をもう一度聞きたい」。そんなニーズに応えるのが、東京大学工学部電子情報工学科の学生3人が立ち上げたプロジェクト「Kiroc(キロク)」(https://kiroc.net/)だ。最新AI技術によって声、姿、性格、記憶までも再現したデジタルクローンを作成することで、「亡くなった家族や友人にもう一度会いたい」という誰もが持つ思いを実現可能にする。
デジタルクローンは、故人であっても写真、音声、ビデオがあれば、そのデータを収集・スキャンした後、約1週間で作成。依頼者は完成したデジタルクローンと会話を楽しむことができる。会話そのものに着目し、価値観や考え方、記憶を自動的に、リアルタイムに学習する独自技術の研究開発によって、よりリアルなデジタルクローンへと成長していくという。
ブース内のパソコンに映し出されていた男性のデジタルクローンは、なめらかに動き、会話もスムーズ。まるで実在する人物と通常のビデオ通話をしているようなリアルなつくりに驚かされた。
当面は故人を対象とした成長戦略を掲げているが、将来は故人以外の全ての人を対象にした展開を視野に入れているという。たとえば病気で余命宣告をされた人や、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や咽頭がんなどの病気によって今後声が出せなくなる患者などに対しては「声が出なくなっても自分の声で話したい」「生きた証を後世に残したい」「残された子供に寂しい思いをさせたくない」といったニーズに対応。
また、マッチングアプリや婚活サービスでは本人を忠実に再現し、相手が本人の姿や声、性格を確認できたり、自分のデジタルクローンをタイムスタンプ的に残すことで若いときの姿や性格を振り返られるだけでなく、病気の兆候を発見したり、美容整形などに利用できたり。さまざまな既存のサービスに大きなイノベーションを起こすプロジェクトになることに期待したい。
■調べた単語を二度と忘れないための辞書アプリ
■LLMを活用して多言語辞書を生成・改善
株式会社BooQs(https://www.diqt.net/)は、単語帳一体型の多言語辞書アプリ「DiQt(ディクト)」を紹介していた。これは、心理学をはじめとした学習の科学に基づいて、一度調べた語彙を忘れないように復習できるアプリ。覚えたい語彙に復習機能を設定し、後日、問題形式で復習することによって効率的に覚えられるだけでなく、ゲーム感覚で挫折せずに続けられるのが大きな特徴だ。
問題の正解・不正解に応じて復習の間隔を自動で変化させ、心理学的に効果的なタイミングで復習できるようにしている。問題形式の復習は、ただ見返すだけの復習に比べて2倍以上も記憶に残ることが明らかになっているという。
現在、和英辞書・英和辞書をはじめ、世界各国の約70言語に対応。多言語辞書はLLM(Large Language Models。大規模言語モデル)を活用して意味や例文、発音記号などの情報を自動生成する一方で、生成AIがもたらすハルシネーション(誤情報)は専門知識を持つユーザーが編集できるCGMによって修正・改善する。これにより、より正確で、生きた言語が辞書に蓄積されていくという仕組みだ。
同社代表取締役の相川真司氏は、自身がエンジニアとして英語の技術資料と格闘する中、語彙の習得と忘却の課題を痛感したことから、このアプリの開発に至ったという。東京外語大学との共同研究も進んでおり、将来は消滅危機言語の保存にも活用していきたいと話していた。
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