2024年2月26日、AMDは「Radeon RX 7900 GRE」の販売をグローバル市場向けに解禁した。このRX 7900 GREは2023年7月に中国市場向け製品として発表済みであるため、型番だけはご存じの方もいるだろう。
RX 7900 XTとRX 7800 XTの間に位置付けられるGPUであり、AMDはRX 7900 GREを、WQHD環境でレイトレーシングを含めた画質を盛った状態でも快適にゲームが遊べるGPUであると謳っている。ちなみにGREとは“Golden Rabbit Edition”の略だ。
RX 7900 GREのグローバル向け解禁にあたり、AMDはRX 7900 GREの北米予想価格を549ドルと発表した。昨年の発表では649ドルスタート、そこから100ドル値下げされてグローバル市場向けに投入されたことになる。本稿解禁直前にキャッチした情報によれば税込10万円前後とのこと。
RX 7900 GREの仮想敵は「GeForce RTX 4070 SUPER(599ドル)またはRTX 4070(549ドル)」ということだが、RTX 4070 SUPERの“NVIDIA公式予想価格モデル”が税込9万5480円で実際のボリュームゾーンはもっと上であることを考えると、この円安状況でかなりがんばった価格設定といえるだろう。
今回筆者は幸運にもASRock製「AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC」をお借りしテストする機会に恵まれた。すでにスペックから性能的なデータまでネットを探せば情報が出てくるGPUではあるが、改めて既存のRadeonやGeForceと比較しつつ、どのような製品か検証していきたい。
MCDの数を調整することでスペックを調整
RX 7900 GREの特徴を一言でいえば、RX 7900 XT/ RX 7900 XTXと同じNavi31ベースのコアを使用しつつ、VRAMを16GB&256bit幅に抑えたという点だろう。CU数はRX 7900 XTの84基から80基とさほど変わっていないが、メモリーバス幅を320bit→256bitに、GDDR6のデータレートを20GB→18GBに絞ったことでメモリー帯域は最大800GB/秒→最大576GB/秒(RX 7900 XTの72%)にまで絞り込まれた。
格下のRX 7800 XT(Navi32)のメモリー帯域が最大624GB/secだったことを考慮に入れるとRX 7900 GREのメモリー帯域はかなり絞られてしまった印象がある。しかしRX 7800 XTに対してはCU数において1.33倍と数において勝っており、付随するROPやテクスチャーユニットなどの描画性能を左右するユニット数においても同様にRX 7900 GREの方が優勢とすることでバランスをとっているようだ。
またBoard Power、即ち消費電力に関してはRX 7800 XTよりも3W低い260Wに設定されている点もおもしろい。メモリークロックだけでなくGPUコアもクロックを絞ったが故の260Wという値だが、今回の検証用カードのようにファクトリーオーバークロックモデルでは実消費電力はもっと増える可能性がある。
RX 7900 GREのスペック:近傍の製品との比較 | ||||||
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RX 7900 XT | RX 7900 GRE | RX 7800 XT | ||||
アーキテクチャー | RDNA 3 | RDNA 3 | RDNA 3 | |||
製造プロセス | TSMC 5nm+6nm | TSMC 5nm+6nm | TSMC 5nm+6nm | |||
CU | 84基 | 80基 | 60基 | |||
SP | 5376基 | 5120基 | 3840基 | |||
Ray Accelerator | 84基 | 80 | 60基 | |||
AI MATRIX Accelerator | 168基 | 160基 | 120基 | |||
ROP | 192基 | 160基 | 96基 | |||
テクスチャーユニット | 336基 | 320基 | 240基 | |||
ゲームクロック | 2025MHz | 1880MHz | 2124MHz | |||
ブーストクロック | 2400MHz | 2245MHz | 2430MHz | |||
メモリーデータレート | 20Gbps | 18Gbps | 19.5Gbps | |||
搭載メモリー | GDDR6 20GB | GDDR6 16GB | GDDR6 16GB | |||
メモリーバス幅 | 256bit | 256bit | 256bit | |||
Infinity Cache | 80MB | 64MB | 64MB | |||
PCI-Express | Gen4x16 | Gen4x16 | Gen4x16 | |||
TBP/Board Power | 315W | 260W | 263W | |||
補助電源コネクター | 8ピン×2 | 8ピン×2 | 8ピン×2 |
RX 7900 GREがNavi31を使いつつメモリーバス幅256bit仕様で出せているのは、RDMA 3より採用されたチップレットデザインの柔軟性が多いに貢献している。RDNA 3ではGPUの中核部が収容されているGCD(Graphics Compute Die)とは別に、16MBのインフィニティキャッシュと64bit幅のメモリーコントローラーを一体化したMCD(Memory Cache Die)があるが、RX 7900 GREはGCD×1に対しMCDを4つに絞ることでメモリーバス幅256bit仕様を実現している。
RX 7900 XTXのMCDは6基で384bit幅、RX 7900 XTのMCDは5基で320bit幅ということを知っていれば改めて解説する必要のない話だが、RX 7900 GREはRDNA 3の設計的柔軟性がなければ生まれなかったGPUである、という点は強調しておきたい。
RX 7900 GREのその他の特徴は既存のRX 7000シリーズの特徴と合致する。即ちAI処理専用(今だどんなアプリで効くのか明確になっていないのが残念だが)のAI Matrix Accelerator、AV1エンコードやDisplayPort2.1といった特徴であるが、特にRX 7900 GREで新規要素はないので解説は割愛する。
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