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金属同士を溶かして接合する“溶接”

小型スポット溶接機「W04」を使うと一瞬で電池にタブを付けられます

2024年02月12日 18時00分更新

※注意:こちらは資格等不要の小型版ですが「火花が目に入る」「火傷する」などの危険はあります。お子様の近くで使わない・ゴーグルを付ける等の安全対策は必ず自己責任にて行ってください

 金属同士を溶かして接合する“溶接”。溶接棒やトーチを使い、バチバチと火花を散らしながら作業していく様子は特別感があります。まだやったことがないので、いつか試してみたいものです。

 ただし、もっと規模が小さいものであれば、意外と簡単に試せたりします。その代表ともいえるのが、薄い金属板の溶接に使われるスポット溶接機。接続したい金属板へ局所的に大電流をかけることで発熱させ、溶かし付けるというものです。大型のものであれば車や金属筐体の組み立て、小型のものならボタン電池の電極、リチウムイオン電池の接続などで使われています。

 通常の溶接と違いは、線ではなく点(スポット)で留めていくのが大きな違い。また、局所的な加熱による溶接なので、周囲へのダメージが少ない、作業時間が短くて済むというのもメリットでしょう。

 例えば電池の場合、ハンダ付けだと高温を長時間加えることになり、電池の劣化や不良の原因になりがちです。これに対してスポット溶接なら、電極表面に一瞬熱を発生させるだけで済むため、ダメージが少なくて済みます。

 電池ならハンダ付けじゃなくてソケットを使えばいいじゃないか、というのも一理ありますが、電池の交換が考えられていない機器であれば、接触不良が少なく、価格を抑えられるタブ付けのほうが現実的でしょう。

 そんなタブ付けを、個人が手軽にできるようにしてくれる工具が、小型スポット溶接機「W04」です。

小型スポット溶接機「W04」

Hong KONG MECHANIC製のスポット溶接機「W04」。秋葉原・東京ラジオデパートで販売されており、4980円で購入しました。(撮影:鈴鹿廻)

バッテリー内蔵でいつでもどこでも使える!

 パッケージに含まれているのは、本体、プローブ1本、テスト用タブ、充電用USBケーブル(A-C)。これだけでも一応使えますが、電池へのタブ付けをするならプローブがもう1本ないと難しいため、追加での同時購入がおすすめです。使用時に免許は不要ですが、慣れない作業で怪我をする恐れがある場合は、手袋やゴーグルを着用してもいいでしょう。

小型スポット溶接機「W04」

スポット溶接に最低限必要なものは、ひと通り揃っています

小型スポット溶接機「W04」

追加のプローブといっても、770円と安価

 本体の仕様をざっと確認してみると、出力電圧4.2V、最大650Aというもの。3850mAhのバッテリーを内蔵しているので、電源ケーブルが届かない場所でもスポット溶接が可能です。

 充電は本体のType-Cポートから。ただし、Type-C出力の充電器は接続しただけでは電力が供給されないため、W04を充電できません。素直に付属のA-Cケーブルを使うのがいいでしょう。

 とくにマニュアルなどは入っていませんでしたが、使い方は簡単。「Switch」を押すたびに1〜4までLEDが光っていきます。この光っているLEDの数が電流量。つまり、4段階で強さを調整できるという意味になります。

 ちなみに、4まで光らせた後、さらにもう一度「Switch」を押すとLEDがすべて消えます。この消えているときが電源オフ。この状態では動作しないので、安全にしまうことができます。

小型スポット溶接機「W04」

これは3まで光っているので、4段階中3つ目の強さ

 溶接方法は2通り。1つはプローブを「+」に接続して使う方法で、本体上部にある「Welding Of Copper Head」を「−」として扱います。具体的には、対象をヘッドの上に乗せ、上からプローブの先端を押し当てます。

 2枚の薄い金属板を溶接する、といったシーンで使いやすい方法です。

小型スポット溶接機「W04」

タブ同士の溶接などでは、この方法がおすすめ

 もう1つは、プローブを2本使う方法。「+」と「−」それぞれにプローブを接続し、両方の先端を金属板の上から押し当てます。タブを電池に溶接する、といった場合はこちらの方法がやりやすいです。

小型スポット溶接機「W04」

電池のタブ付けは、プローブを2本使うと楽

 どちらの場合も、プローブを押し当てると一瞬遅れて自動で動作し、溶接されます。別途スイッチなどを押す必要はありません。プローブをショートさせた場合は、スポット溶接機が壊れてしまわないよう自動でキャンセルされるようで、火花が散ったりしませんでした。その点も安心です。

 ちなみに、プローブの先端は取り外しが可能。予備が220円で売っているので、何度も溶接を繰り返して先端が潰れたり、手荒に扱って変形してしまった場合は交換してあげましょう。使いやすい形に加工する目的で購入するのもアリです。

電極は取り外し可能。220円で購入できます

ボタン電池にタブ付けしてみた!

 使い方がわかったところで、実際に試してみましょう。

 試してみたのは、付属していたテスト用タブ(多分ニッケル)と、手元にあった、スチール(ニッケルメッキ)タブです。厚みを測ってみると、どちらも0.1mmでした。

太いのが付属のニッケルで、細いのがスチール

 溶接の手順は、まず、強さを設定。続いてボタン電池にタブを乗せ、2本のプローブで2回押し当てて、合計4か所溶接するというものです。

 強さはボタン電池の12時方向が1で、そこから時計回りに2、3、4と強くしました。

ニッケルは、どの強さでもどれもくっついているように見えます

 ニッケルはくっついているように見えますが、どの強度でも指で強く引くと外れてしまいました。同じ場所を2回、3回と溶接することで、ようやくくっつく、という感じです。

外れなかったのは、強さ4で3回同じ場所を溶接した場合

 プローブで強めに押し付ける、同じ場所を連続して数回繰り返す、といったことをやると、比較的外れにくくなるようでした。電池によってもまた結果が変わりそうなので、コツをつかむまでイロイロ試してみるしかなさそうです。

 ちなみにスチールは、数回の繰り返しくらいでは簡単に外れてしまい、5〜6回やって、ようやくくっつく感じ。電池へのダメージを考えると、ニッケルのタブを使ったほうがよさそうです。

何度もしつこく試した跡。スチールは簡単に外れます

 なお、本体上部のCopper Headに乗せ、タブ同士の溶接を試してみたところ、こちらは1回(強さ4)でスチールでもしっかりくっついてくれました。上下で挟む方式であれば、スチールでもいけそうです。

上下で挟む溶接なら、スチールもOKでした

手頃な価格でイロイロ試せるのが一番の魅力

 正直なところ、電池にタブを付けたいからスポット溶接機が欲しい……という人はかなり限定されると思うだけに、万人受けする工具ではありません。とはいえ、ドキドキしながら電池をハンダ付けしている人にとっては、まさに欲しかったものです。

 使い方が難しいとはいえ、これが6000円もせずに手に入るというのであれば、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

 ちなみに、Copper Headに乗せて溶接する方法は結構汎用性が高く、手元にあったクリップで試してみたところ、溶接できちゃいました。

なんとなく試したら、バッチリくっついてました

 強度はそこまで期待できないとはいえ、ちょっとした針金工作などに使えそうですね。使い方次第では、大きく用途が広がるんじゃないかと感じました。

●お気に入りポイント●

・電池にタブが付け放題に

・2つの溶接方法が使える

・とくにCopper Headを使う方法に可能性を感じる

訂正とお詫び:初出時、一部表記に誤りがございましたので、訂正いたしました。(2023年2月13日16:15)

この記事を書いた人──宮里圭介

 PC系全般を扱うフリーランスライター。リムーバブルメディアの収集に凝っている。工作が好きだが、最近あまり時間が取れないのが悩み。

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