確かにRX 7600よりは強力だが……?
検証は「3DMark」から始めるとしよう。あまりVRAMの容量が効くテストでもないので、RX 7600 XT 16GBが持つTBPとクロックがRX 7600に対しどれだけアドバンテージを持つかに注目したい。
どのテストを見てもRX 7600 XT 16GBはRX 7600に対しスコアーがやや増えた程度。伸び幅にして多くて4%(Fire Strike)、重いテストでは2%どまりというテスト(Speed Way)もあった。ラスタライズ系テストではRTX 4060に対してはアドバンテージを出せているが、レイトレーシング系テスト、特にDirectX 12 Ultimate対応が必須のSpeed WayではGeForce陣営に追いつけていない。レイトレーシングなんてフルHDゲーミング向けGPUで非現実的……と言いたくなる人もいるだろうが、そこはAFMFがなんとかしてくれるはず。
消費電力を比較は3DMarkの“Time Spy”におけるGraphics Test 2実行時における実消費電力をHWBusters「Powenetics v2」を利用して計測した。システム全体の消費電力とTotal Board Power(ビデオカード単体の消費電力)の2つの視点でまとめてみた。アイドル時は3分間放置した際の平均値を、高負荷時は平均値や最大値のほかに99パーセンタイル点の値も比較する。
まず、システム全体の消費電力は平均値で25W差。これはRX 7600 XT 16GBとRX 7600のTBPの差25Wとよく一致している。ファクトリーOCモデルだけあって最大値や99パーセンタイル点を比較すると差がもう少し拡大するが、まあ計算通りといってよいだろう。
ただカード単体の消費電力はシステム全体の消費電力よりもずっと差が大きい。なぜこのような結果になったかについてはまだ確たるものを得ていない。とはいえ、RX 7600 XT 16GBの消費電力はRX 7700 XTよりもかなり低く出ており、せいぜい600W程度の電源ユニットがあれば十分扱えるといえるだろう。
RX 7600とは僅差に終わる?
ここから先は実ゲームでのベンチマークとなる。画質は基本的に最高設定、レイトレーシングが使えるならそれも使用した。さらに解像度はフルHD(1920×1080)/WQHD(2560×1440)/4K(3840×2160)の3通りでフレームレートを比較する。まずはDLSSやFSR 2などのアップスケール技術やフレーム生成を使わすにパフォーマンスを比較する。
ゲームのフレームレート計測には全て「CapFrameX」を利用した。その際GPU実消費電力(の平均値)やそれを元にした10Wあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)もPowenetics v2+CapFrameXの組み合わせで集計している。
まず「Overwatch 2」では画質“エピック”をベースにレンダースケール100%、フレームレート上限600fps、さらにFSR 1/2はオフに設定。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。
最低フレームレートが安定していないのは毎回同じ展開にならないテストであるためだが、平均フレームレートを見るとGPUのパワー順に並んでいる。肝心のRX 7600 XT 16GBはここでもRX 7600のほんの少し上にとどまっている。
RX 7700 XTとRX 7600の性能ギャップを埋めてくれる製品と期待していた人には残念だが、Overwatch 2ではVRAM消費量も少ないためギャップを埋める製品とはいえない。同じVRAM 16GBを擁するRTX 4060 Ti (16GB)の方がフレームレートとしては良好だが、これはOverwatch 2が割とGeForce有利なゲームであるせいでもある。
次の表は上記フレームレートのデータが観測された際に、各GPUが実際に消費した消費電力(TBP:Total Board Power)の平均値、ならびにTBPと平均フレームレートから求められるTBP 10Wあたりのフレームレートとなる。
先ほどの消費電力比較ではカード単体の消費電力の差が大きいというデータが出ていたが、ゲームにおいてもその傾向は変わらず。解像度に関係なくRX 7600 XT 16GBは205W前後なのに対し、RX 7600は160W程度。約45W差という大きな差がついている。今回検証にしようしたRX 7600 XT 16GBカードがファクトリーOCモデルだからだろうか?
次に試すのはRadeonが圧倒的に有利な「Call of Duty」だ。まずはアップスケーラーを使わない状態で比較する。画質は“極限”とし、レンダースケール(RS)は100%に設定。レイトレーシング系は全てオフ(基本的に鑑賞用機能であるため)としている。「Modern Warfare III」についてくるゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
上位のRadeon(RX 7800 XT)はGeForce勢に対し圧倒的な強みを発揮しているが、肝心のRX 7600 XT 16GBはCU数が下位モデルと同じであるためか、平均フレームレートも最低フレームレートも今ひとつである。どうやら最低フレームレートの伸びはメモリーバス幅にかかってくるようで、GeForceはメモリーバス幅192bit以上、Radeonだと256bit幅以上でないとベンチマーク中に激しいスパイクが出るようだ。
さらに言えばこのゲームはVRAM使用量が多く、RX 7600 XT 16GBの場合フルHDで最大14GB使用する(本当に使っているのか、確保しているだけかは不明だが)。そのせいかRX 7600と比較すると最低フレームレートに大きな差が出ている。平均フレームレートでは快適なパフォーマンスが期待できそうだが、少々画質を調整してフレームレートのスパイクを抑制しないと、勝ちに繋がるような画質設定とはいかないだろう。
RX 7600 XT 16GBの消費電力は上位のRX 7700 XT(どちらもファクトリーOCモデル)に近い。ライバルのRTX 4060 Ti (16GB)と比較すると、GeForce勢のワットパフォーマンスの高さが際立ってしまっている。
CoDはFSR 3に対応しているため、RadeonoとGeForceで全く同じAPIを通じてフレーム生成を含めたパフォーマンス検証ができる。画質設定や手法は前掲のテストを継承するが、FSR 3は“バランス”、フレーム生成はもちろん有効としている。
フレーム生成なしと比べると平均フレームレートが一気に伸び、RX 7800 XTが価格で上回るRTX 4070 SUPERを置き去りにした。しかし、VRAM 16GBのRX 7600 XT 16GB vs RTX 4060 Ti (16GB)という比較では平均フレームレートにおいてRX 7600 XT 16GBが辛うじて上回るものの、最低フレームレート落ち込みにおいてRTX 4060 Ti (16GB)に負けるという結果となった。
最低フレームレートでRTX 4060 Ti (16GB)に負ける理由は、恐らくRDNA 3のInfinity CacheのメリットよりAda LovelaceのL2キャッシュの方が(CoDには)効果的だったのではないだろうか。FSR 3を使うことによりRX 7600 XT 16GBでもWQHDでカク付きつつも高フレームレートが出せるという点に注目したい。
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