負荷が低いと微妙になる時がある?
ここから先は実ゲームでのベンチマークとなる。画質は基本的に最高設定、レイトレーシングが使えるならそれも使用した。さらに解像度はフルHD(1920×1080ドット)/WQHD(2560×1440ドット)/4K(3840×2160ドット)の3通りでフレームレートを比較する。まずはDLSSやFSR 2等のアップスケール技術やフレーム生成を使わすにパフォーマンスを比較するとしよう。
筆者はゲームのフレームレート計測時に「CapFrameX」を利用しているが、その際にGPUの実消費電力(の平均値)やそれを元にした10Wあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)等をPowenetics v2を経由して取得している。
まず「Overwatch 2」では画質“エピック”をベースにレンダースケール100%、フレームレート上限600fps、さらにFSR 1/2はオフに設定。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。
GPUによるフレームレートの序列は3DMarkのスコアー序列と変わらないが、解像度がフルHDの場合、RTX 4070 TiとRTX 4070 Ti SUPERの平均フレームレートの差が非常に小さい。
3DMarkでも負荷の低いテストにおいて両社の差が小さかったという結果も合わせて考えると、描画負荷がある程度低い時はRTX 4070 Ti SUPERの実力が出にくいのではないだろうか。ただ、Overwatch 2のテスト手法はフレームレートのブレも大きいので、誤差の出方がたまたまこうだった、という可能性もある。
そして、解像度が上がると着実にRTX 4070 Ti SUPERの方がRTX 4070 Tiよりも高い平均フレームレートを発揮するようになる。WQHDよりも4Kの方が両者の差が拡がっている(WQHDで約5%、4Kで約14%)点に注目したい。メモリーバス幅192bit幅のRTX 4070 Tiは4Kになるとバス幅が律速になりやすいが、メモリーバス幅256bitになったRTX 4070 Ti SUPERはその心配が軽減されていることを示している。
上記フレームレートのデータが観測された際に、各GPUが実際に消費した消費電力(TBP:Total Board Power)の平均値、ならびにTBPと平均フレームレートから求められるTBP 10Wあたりのフレームレートも比較してみよう。
こちらもGPU性能の上から順に並んでいるだけという印象。RTX 4070 Ti SUPERはSM数が増え描画性能もあがったぶん、ゲーム中の消費電力も大きくなる。ワットパフォーマンス的にはRTX 4070 Ti SUPERとRTX 4070 Tiは僅差だが、4KのみRTX 4070 Tiが息切れしている点に注目。
下位モデルに関していえばフレームレートが出にくいとはいえそのぶん消費電力も低いので、解像度が同じならワットパフォーマンスに極端な差はつかない。Ada Lovelace世代のGeForceの優秀さが示されている。
「Call of Duty」でもアップスケーラーやAFMFを使わない状態でのパフォーマンスを検証する。画質は“極限”とし、レンダースケール(RS)は100%に設定。レイトレーシング系は設定を有効化しても特定の局面でしか効かないので無視している。「Modern Warfare III」についてくるゲーム内ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
先日発売したRTX 4070 SUPERはRX 7800 XTにフレームレートで負けてしまったが、同格の足回り(VRAM 16GB/256bit幅)を備えたRTX 4070 Ti SUPERが出てくると話は違ってくる。
ただ、興味深いのはフルHD時はRTX 4070 Tiの方が平均フレームレートにおいてRTX 4070 Ti SUPERを上回っているが、最低フレームレートはより強力なRTX 4070 Ti SUPERの方が高く、よりカク付きが軽減されている事を示している。解像度が上がるとRTX 4070 Ti SUPERの方が優勢になるが、Overwatch 2ほどの差はつけられなかったようだ。
RTX 4070 Ti SUPERの消費電力を見ると、フルHDやWQHDではRTX 4070 Tiと同等かわずかに低い値を示している。つまり何らかの事情で仕事をさせてもらえなかったという事を暗示している。それがβドライバーのせいなのか、CoD自身の問題なのかまでは切り分けることができない。
さて、CoDは先日のアップデートでいよいよFSR 3にも対応し、Radeon環境でもフレーム生成が可能になった。AFMFを含めた検証に入る前に、FSR 3という同条件の下で現行RTX 40シリーズとRX 7800 XTがどの程度の性能を出せるかを検証しておきたい。
画質設定や手法は前掲のテストを継承するが、FSR 3は“バランス設定”としている。
FSR 3を利用することでフレームレートが一気に伸びるが、その結果フルHD時におけるRTX 4070 TiとRTX 4070 Ti SUPERの逆転がさらに明確なものになってしまった。WQHDではほぼ同じ、4Kでようやく差が付く。
ただ、現状のFSR 3実装はやや雑な印象で、フレームレートのブレが突然大きくなる場合があるため、あくまでFSR 3実装直後のCoDではこうだった、程度の認識にとどめた方がよいだろう。ちなみに、RX 7800 XT(というよりRDNA 3世代のRadeon)はCoDと非常に相性が良いため、フルHDではFSR 3を利用するとRTX 4080をも越えるフレームレートが得られる点は興味深い。
フルHD時の消費電力を見るとRTX 4080〜RTX 4070 Tiまでが200Wあたりで頭打ち。これはFSR 3“バランス”設定を使用していることに関係がある。DLSSやFSRのバランス設定は出力解像度の58%の(入力)解像度から生成するため、入力解像度が低すぎて電力をあまり使わなくてもよい状態になっていると推察される。
ではなぜRX 7800 XTの消費電力が高いのかと言うと、これはGPUの設計思想の違い(キャッシュ階層、モノリシック/チップレットデザイン)が多いに関連していると思われる。
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