OECDの調査によると日本のICT活用実態は改善されている
日本の高校生、情報モラルはあるが技術に自信なし
環境は整うも十分な活用には課題
2022年12月、OECDは義務教育終了段階(高校1年生)の生徒を対象とした「OECD生徒の学習到達度調査(PISA2022)」を発表。同時に、生徒を対象としたICT活用調査も同時に実施された。日本におけるICT活用実態についてご紹介したい。
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なお、日本では高等学校におけるGIGAスクール構想の一人一台端末や環境は、令和4年度中に完了させる計画で進められていたため、調査時(令和4年6~8月)ではまだ途上だったことには注意が必要だ。
「学校でのICTリソースの利用しやすさ」について聞いたところ、「学校には、インターネットに接続できるデジタル機器が十分にある」「学校には、生徒全員のために十分なデジタル・リソースがある」という回答は多かった。学校でのICTリソースの利用しやすさ指標は、OECD平均を上回っている。
ただし、各教科の授業でのICT利用頻度については、OECD諸国と比較すると低い。特に、国語、数学、理科での活用が低くなっている。
また、「ICTを用いた探究型の教育の頻度」指標もOECD平均を下回っていた。文章を書いたり編集する利用は多い一方で、実社会での課題に関する情報を集め、集めた情報を記録・分析・共有・報告する場面でデジタル・リソースを使う頻度は他国に比べて低かった。
環境は整いつつあるが、まだまだ活用の面で課題が残っている。ただしGIGAスクール構想で一人一台端末が実現したばかりということを考えると、今後、利用頻度や探究型学習での活用も伸びてくるのではないだろうか。
日本の高校生は情報モラルが高い
日本の生徒の情報モラルは、OECD諸国と比較して高い。「インターネット上で情報を検索するときは、様々な情報源を比較する」「インターネット上の情報をSNSで共有する前に、その情報が正しいかどうか確認する」などがOECD諸国より高い傾向にある。
日本の高校生はコンピューターやプログラミングへの興味関心はOECD諸国並みにあるが、プログラムを作成したりトラブルが起こったときに原因を特定したりできる自信は低めとなっている。
また、平日のSNSやデジタルゲームに費やす時間が3時間以上の生徒の割合は、OECD平均より少なくなっている。日本でもOECD平均でも、SNSやデジタルゲームに費やす時間が1時間を超えると、読解力・数学・科学3分野の平均点は低くなる傾向にある。
日本におけるICT活用が諸外国と比べて低いことは、以前から指摘されてきたことだ。しかし、環境が整ったことで利用の機会も増えており、徐々に改善されてきていると言えるのではないか。今後も若者における変化に注目していきたい。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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