IoTとペット家電の融合がエレコムから
エレコムは1月9日にペット家電市場への参入を発表しました。ペットを持つ人に向けて自動給水機、自動給餌器、測り機の3製品を1月中旬に発売します。店頭実勢価格は自動給水機が5480円、自動給餌器(1ボウル、4L)が7580円、同(2ボウル、6L)が8580円、ペット用フードスケール(測り器)が2479円。いずれも犬、猫向けの製品です。
1つ目の自動給餌器は、タイマー機能を備えた、外出中でも決まった時間に餌を与えることができる製品です。給餌の時間だけでなく、量と回数を細かく設定することもできます。具体的には6セット/日を給餌できるため、早食いや与え過ぎの抑制につながります。
面白いのは最大10秒間の音声録音が可能な点。犬を飼っている筆者としてはかなりうれしい機能で、たとえば外出する前に自分の声を録音しておけば、留守番中の犬にご飯のタイミングを知らせることができます。わがままを言うなら、わざわざ自動給餌器に向かって話さずにアプリとクラウド経由で、いつでもペットに話しかけられる機能が欲しいところです。忙しくしていると、つい自動給餌器での録音を忘れてしまいそうなため、次の製品ではぜひとも、外出先でも録音できる機能の実装を期待します。
また、残量がひと目でわかる半透明のフードケースのフタにはストッパーが付いており、万が一自動給餌器が転倒してしまったとしても、餌がこぼれにくいそうです。ほかにも乾燥剤を収納できるスペースが設けられており、餌が湿ってしまうのを防ぐことが可能です。容量は1ボウルタイプ(4L)と2ボウルタイプ(6L)。カラーはどちらもホワイトとブラックが用意されます。
2つ目の自動給水器はその名のとおり、手動で水を与えなくても済む製品。水を70%軟水化できるイオン交換樹脂、匂いや塩素を除去できる活性炭で構成した360度フィルターを採用し、食べカスやホコリ、被毛をキャッチしてろ過するため、清潔な状態を保てるそうです。
超静音設計もウリの1つとなっています。筆者も自動給水器を導入した経験がありますが、自動給水の機能自体は便利でも、夜になると音がうるさくて眠れないときがありました。商品開発部 新規開発課 課長 河内基典氏によると、こうした声はほかの製品のレビューなどで実際に見受けられており「それを踏まえて、超静音設計」を重視したといいます。
ではどれくらい静音なのでしょうか。「数値で表すと16.6db以下」(河内氏)で、他社製品でうたわれている数値よりも低い点をアピールしています。「ポンプ内部のモーターの摩擦を低減したほか、ポンプを水中に浮かせる構造にした」(河内氏)ことで、タンク側への振動が軽減され、ペットにも飼い主にも不快な音が聞こえづらくなっているそうです。
ただ、16.6db以下とだけいわれても、どれくらいの音の大きさなのかがパッと思い浮かばないため、暗騒音工法研究会のウェブサイトで調べてみたところ、「120dbが航空機のエンジンの近く、80dbが地下鉄の車内、60dbが人の会話、50dbが室外機、40dbがコオロギの鳴き声、30dbがささやき声、20dbが置き時計の秒針の音」だそうなので、エレコムの自動給水器はそれよりも静かだということです。
メンテナンスのしやすさもウリになっています。「市場に出回っているほとんどの製品がポンプを底面に装着する構造であるのに対し、エレコム製品は上フタとタンクを上フタの方にモーターとポンプを取り付けることで、フタを取り外して水を入れやすくした」(河内氏)といいます。
3つ目はペット用フードスケール。ぱっと見はただの測り器ですが、「国内のほとんどのペットが肥満体質である」(河内氏)ことから、高カロリーな餌ばかりを与えてしまわないよう、「ペットの健康第一」を優先して、カロリー計算機能を搭載させたことがポイントとなっています。
プレスリリースにはフード100g当たりのカロリー(kcal)、タンパク質(g)、脂質(g)を最大3件まで登録できると記載されていますが、河内氏いわく「タンパク質と脂質は、何グラムかではなく、ペット用フードのパッケージに書いてある、%をそのまま入力できる」とのこと。ペットフードの表記は100gに対して何%のタンパク質/脂質なのかが分かる表記になっているため、飼い主が%をgに直さずにそのまま入力し、簡単にカロリー計算をできるようにしたということです。
エレコムがなぜペット家電市場に参入したのか
エレコムとしてペット向けの製品を市場に投入するのは、今回が初めてです。エレコムといえば、スマートフォンやPCの周辺機器のイメージが強いですが、なぜペット家電市場への参入を決意したのでしょうか。
エレコムは、グループ会社であるDXアンテナとさくらインターネット社との連携により2023年3月にクラウド録画サービス「Antenna-eye(アンテナアイ)」の提供を開始しました。同サービスではDXアンテナの録画機能付き監視カメラで、防犯対策だけでなく外出時にペットの様子を確認する役割も果たします。
また、これを機にクラウド録画サービス以外の分野で飼い主をサポートできるような製品を提案し、提供すべくペット家電市場への参入を果たしたそうです。
加えて、「これまでのペット用品、メーカーは、デジタル分野における足取りが重い傾向」(河内氏)にあり、結果として電気の通らない製品が多くなっているそうです。
ペット家電を手掛ける日本メーカー、ジェックスの1強市場に挑むエレコムの強みは何かといえば、充電器やケーブルの中の電子基盤などを手掛けている点。そして、品質を重視している点にありそうです。今回、エレコムはいわゆるIoTに軸足を置かず、市場参入とともに投入する第1弾製品に対する反応を見ようとしているのかしれません。
ただ、犬を飼っている筆者としては、デジタル製品に強いエレコムに「ペット関連のIoT製品」へチャレンジしてほしいと願いたいです。河内氏によると、「監視カメラのAntenna-eyeアプリとの連携を考えてはいるものの、サーバーから製品に至るまでのプラットフォームの構築にはコストと時間がかかる」ことから、今回はIoT要素の取り入れを断念したそうです。
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