インテル「Arc Aシリーズ」は、同社初のDirectX 12 Ultimateに対応したディスクリートGPUファミリーだ(同シリーズにはモバイル版もあるが、ここでは触れない)。
1998年のi740以来、インテルがコンシューマー向けディスクリートGPUを手がけるのはほぼ4半世紀ぶりという状況だが、描画機能としてはレイトレーシング(DXR:DirectX Raytracing)やVRS(Variable Rate Shading)に対応。
さらにAI向けの回路「XMX(Xe Matrix Engine)」やAV1対応のハードウェアエンコーダー(QSV)も搭載するなど、現行のGeForceやRadeonと比較しても遜色のない機能を揃えている。
このArc Aシリーズは2022年秋頃の発売開始以来、地道に改善と新モデル投入を続けている。昨年はエントリー「A380」を筆頭にハイエンド「A770」や「A750」をリリース。今年は最安のエントリー「A310」や新たなゲーミング向けのミドルクラス「A580」も投入された。
このArc Aシリーズを横並びで性能比較しようというのが本稿の目的だが、普通に横並びで比較するだけでは面白くない。Arc Aシリーズのドライバーは今もブラッシュアップが続いており、初期ドライバーと後期ドライバーでは性能の出方が天と地ほどの差になっているものもある。
そこで今回はArc Aシリーズの横並び性能比較と同時に、歴代の代表的ドライバーでの成長過程も検証してみたい。
6種類のArc Aシリーズを用意
今回はASRockより、Arc Aシリーズを搭載した6種類のビデオカードをお借りした。それぞれ簡単に紹介していきたい。価格は本稿執筆時点(12月26日)のものなので、年末商戦後は若干価格が変動している可能性もある。
2オンス銅箔を利用した基板や高品質な部材と基板設計も豪華
製品名:Intel Arc A770 Phantom Gaming 16GB OC
実売価格:4万9000円前後
製品名:Intel Arc A770 Phantom Gaming 8GB OC
実売価格:4万9000円前後
Arc AシリーズのフラッグシップモデルがA770。これを全長305mmの大型GPUクーラーと組み合わせたのがこの製品。Phantom Gamingシリーズを名乗るだけあって、下位シリーズ(Challenger)よりもやや強めファクトリーOC仕様となっているほか、2オンス銅箔を利用した基板や高品質な部材など、基板設計も豪華。
A770搭載カードはVRAM 8GBと16GBモデルがあるが、両者に決定的な性能差はないことの方が多い。生成系AIやクリエイティブ系アプリで多量のVRAMを消費するケースではより安心。VRAMを多量に食うゲームにも16GB版は魅力だが、A770の場合8GB版と16GB版でゲームのパフォーマンスに差がつかないことも珍しくない。現行執筆時点における最安値は8GB版の方が安いが、流通数が多いためか16GB版の方がわずかに安価なようだ。
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