「Stable Diffusion」のStability AIもついに有償化、厳しい懐事情が背景に
この傾向は、特に中国企業だからというわけではありません。グーグルなどのアメリカの大手IT企業でも同様です。
以前から研究発表はするものの、実行環境をそのまま公開してこなかった傾向がありました。近年、Googleは写真から3Dを生成するNeRFの技術について、多くの研究を発表してきていますが、その実行環境は必ずしも一般に公開されているわけではありません。
ユーザーとしては、そうした論文の成果は、何らかの製品やサービスに実装される形になるまで待つ必要があるのが通常でした。
ただし、2021年以前ならこれは当たり前のことでした。それを、一瞬であれひっくり返したのが、昨年8月の「Stable Diffusion」の学習データと実行環境の一般公開だったんですね。
当時、Stability AIのCEOのEmad Mostaque氏は、推定23億枚のトレーニングにかかった費用が60万ドル(約8500万円)だったことをX(旧Twitter)で明らかにしています。60万ドルは個人にとっては小さな金額ではありませんが、スタートアップ企業としては必ずしも大きな金額ではありません。昨年夏頃まで、画像生成技術は、初期投資が小さくても参入余地がある市場だったのです。
しかし、Stability AIは今年8月に入り、SDXLモデルの公開に合わせて、月額10ドルのサブスクリプション型サービス「Clipdrop」に一般ユーザーを誘導したり、企業向けのAPIモデルでの収益化をはかるようになりました。Mostaque氏は今年11月に入り、8月の売上は120万ドル、11月の売上は300万ドルになるとの見込みを明らかにしています。米Fourtune誌は毎月800万ドルの費用がかかっていると報じていることから、恒常的な赤字状態であると考えられます。
10月にインテルより5000万ドルの転換社債での投資を受けたとされているものの、新しい収入源を切実に必要としていたようです。
そうして12月14日、Stability AIは新しいメンバーシップ制度「Stability AI Membership」を発表し、有償化の方針を明確化しました。高速生成を売りにしたStable Diffusion Turbo、動画を生成するStable Video Diffusionなど、新たに発表された学習モデルを商用利用する場合にはメンバーシップへの登録を求めています。
年間売上が100万ドル未満、もしくは、投資を受けた金額が100万ドル未満の場合には「プロフェッショナル」に登録が必要で、月20ドルの支払いが必要です。それ以上の規模の企業の場合は「エンタープライズ」とされ、価格は要相談となっています。
Mostaque氏はメンバーシップ制度の発表前、価格設定をいくらにすべきかをユーザーに問いました。当初は月100ドルで提案したものの、かなりの反発があり、半日も経たずに20ドルで再提案したという経緯があります。
現状は自主申告制でもあるため、多くの利用企業にどうやってお金を払ってもらうのかはハードルになると思われます。いずれにせよ開発費を回収できなければ企業としての存続は難しいため、課金は避けられなかったと言えます。
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