改善の余地が大いにある文章の共有活用の仕組み
筆者は折り畳みキーボードではないポメラの100、200、250、250Xと3.5世代を連続して使い続けている。毎回、キー入力文書作成デバイスとしての価値は十二分に認めても、ポメラのどの世代においてもいつも引っかかっているのは、文章の共有活用の仕組みだ。
今回のDM250Xもベースモデルと同じく、基本的な文書保管は内蔵メモリーかSDカードだ。昨今流行りのクラウドストレージによる共有を考え出すといろいろ面倒で特殊な手段を取り入れるか、ポメラ内蔵の「QRコード」か「アプリ接続」「アップロード」「PCリンク」などの「遠回り手段」しか、選択肢は見当たらない。
原稿や企画書をDM250Xで書いて、続きの仕上げをパソコンでやったりその逆をやろうとすると、かなり面倒だ。一般的には「アップロード」機能を使って直接DropboxやGoogle Driveにアップロードできると思ってしまうが、ポメラのアップロードは今もGmailの仕組みを使ってメールの本文として文書を送る仕組みだ。
残念ながら、ポメラは相変わらずグーグルに「信頼できないアプリやデバイス」と認識されている。そのため、ポメラで書いた原稿や文章をGmail経由でアップロードする際、2段階認証を通じて初期パスワードを発行し、それをポメラの設定画面にある自分のGoogleアカウントのパスワード欄にコピペしなければ、アップロードすることができない。
明らかにこれはポメラ側の仕様の問題だが、どうもポメラニアンの多くの先人はこの不具合にはそれほど不満ではないのか、使うことがないのか、ネット上にはクレームや愚痴があまり見当たらない。どうもポメラは、「文書入力単体完結型デバイス」でコワーキングやワークシェアとは無縁でも、生きていける奇跡のガラパゴス・デバイスなのかもしれない。
今回は久しぶりにポメラユーザーの多くが使っているであろうUSBケーブルでパソコンと接続してデータ転送するシンプルな「PCリンク」以外のもう1つの手段を試してみた。レガシーかつ奇想天外な手段は文書を複数のQRコードに変換し、スマホ上のPomeraアプリにより連続読み取りをするものだ。
QRコードによるスマホ側への読み取りは、4300文字程度の文書であればPomeraQRコードのサイズ(小)で29回スクロール読み取りすることが必要だ。もちろんPomeraQRコードのサイズを大きくすると、スクロール数は減る。例えばPomeraQRのサイズ(大)なら7回で4300文字を転送可能だ。サイズ(大)の場合、その操作に要する時間は実測で20秒近くだった。
一方、実際に同じ4300文字の文書をアップロード機能を使ってGmailのメール本文としてやってもWi-Fiルータを捕まえてアカウントにリーチし、実際のファイルを全てアップロードするには50秒くらいは必要だった。そして続いてGmailの本文から目的の文書を抜き出してDropboxなどのクラウドストレージに共有アップロードすることを考えれば、初めからQRコードを介してスマホに転送、その後クラウド共有する方が速いことになってしまう。
猫も杓子もクラウド時代に、相変わらずしっくりしないポメラの文書共有機能ではあるが、どことなく漂う昭和な魅力が、筆者も含め数少ない尖ったユーザー層にウケていることだけは、間違いなさそうだ。1人1台・転売禁止なのでしばらくは持ち歩いて会う人ごとに自慢したい。
今回の衝動買い
・アイテム:キングジム「ポメラ」DM250X Crystal
・購入:キングジム公式オンラインストア
・価格:6万280円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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