顧客影響は566万件
1973年4月の稼働以来、50年間に渡り、運用時間中にオンライン取引を停止したことがない安全性、信頼性を誇る全国銀行データ通信システム(全銀システム)に、2023年10月10日から11日にかけて障害が発生。三菱UFJ銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、山口銀行、北九州銀行、三菱UFJ信託銀行、日本カストディ銀行、もみじ銀行、商工組合中央金庫の10行で、RC(中継コンピュータ)本体装置がシステムダウンし、テレ為替業務が全面的に不能となる事象が起きた。
障害による顧客影響は566万件に達した。
システムを運用する全国銀行資金決済ネットワークと、システムを開発したNTTデータの2者は、金融庁による報告徴求命令に対して、11月30日、同庁に報告書を提出。それを受けて12月1日に行った会見で、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)の辻 松雄理事長は、「2日間に渡り、全銀システムが停止し、金融機関のお客様、金融機関のみなさまに大変なご迷惑、ご心配をおかけした。改めてお詫びする」と陳謝した。
NTTデータの佐々木裕社長も、「システム上の直接の原因はNTTデータであると認識している。預金者や金融機関に多大なる迷惑をかけた。再発防止にしっかり取り組んでおり、今後本格対処を進めていくことになる」と説明した。
世界から敬意を表される“ZENGIN”の安全性だったが
全銀システムは、安全性を象徴する大規模システムとして評価され、世界中の関係者から、敬意を持って「ZENGIN」の名称で呼ばれている。
全国の金融機関をネットワークで相互に接続し、振込取引などに伴う為替通知を、コンピュータと通信回線を利用してオンライン処理。取引に伴い発生する金融機関間の資金の貸借を日々決済しているシステムで、日本のほとんどの預金取扱金融機関となる1133機関が活用している。平日日中の為替取引に対応する「コアタイムシステム」に加えて、2018年10月からは、平日夜間および土日祝日の振込に対応する「モアタイムシステム」を稼動し、24時間365日の体制を整えた。現在、1営業日だけで、平均約911万件、約14兆円の取引が行われている。まさに、日本の決済システムの中核的役割を果たしている。
2019年11月に稼動した第7次全銀システムでは、安全性や信頼性向上の観点から、収容能力および処理能力の増強、サイバーセキュリティ対策の強化、電力消費量の削減などを図っている。
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