KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟のトップは4日に、都内で会見を実施。自民党のプロジェクトチームがまとめたNTT法廃止の提言について、慎重な政策議論を求める意見表明を行なった。
どういう議論がなされているか見えないまま事態が進行
「国民の皆さんに興味を持っていただきたい」
NTT法廃止の動きに対する、通信各社の意見は基本的にはこれまでと同様。NTT側が国際競争力向上の障害になっていると主張する、研究成果の開示義務については法改正の必要性を認めつつ、NTTは電電公社時代に国民の負担によって構築された局舎・電柱・管路など「特別な資産」を有しており、日本国内で通信サービスを提供する上でそれらの活用は不可欠である以上、公正な競争環境を構築するためにもNTT法の存在は必要というものだ。
その中でも、今回の会見で特に各社トップから訴えられたのが「オープンな場での議論の必要性」「国民全員のサービスに直結する話であり、ぜひ興味を持って見てほしい」という点だ。
特に前者について典型的な例として挙げられたのが、今回の自民党のプロジェクトチームによる提言がいまだ公開されていない点。
KDDI髙橋社長は、総務省の審議会と自民党のプロジェクトチームに呼ばれて発言の機会しているが、今回の提言の内容自体はまだ公開されておらず、新聞などのメディアで1日(金)に報道されたことで知ったとする。このように、どうした問題について、どういう解決がなされようとしているか、国民には知らされてないと訴える。
また、ソフトバンク宮川社長は、NTT法の廃止が「国民の生活、企業の経済活動のすべてに影響を与える」とし、特に10年、20年というスパンで見る必要があると主張する。同社の主要な通信事業はボーダフォン、日本テレコムと一旦外資の手に渡った企業を約2兆円かけて買収したことで成立している。しかし、それより桁違いに大きいNTTが外資の元に入った場合、買い戻せる企業があるのか、「本当に本当に危険な話だと思っている」と語った。
一方、日本ケーブルテレビ連盟 専務理事の村田太一氏は、ケーブルテレビ業界はNTTが持つ電柱や管路を利用してサービスを提供しているため、NTT法の廃止後も公正な競争が担保されるかという点で危惧があることを語った。現状でもNTTの電柱利用で拒否されることは少なからずあり、NTTグループの一体化後はさらに不透明になる可能性があるとし、グループ内の事業分離は維持される必要があるとした。
グループ内の事業分離、NTTの特別な資産を公正に利用するための議論については、KDDI髙橋社長から1つ、興味深い話がなされた。2020年のNTT持株によるNTTドコモの完全子会社化以前は、NTTに対する(接続条件などの)要望をまとめる際、NTTドコモ/KDDI/ソフトバンクの3社で話をする機会があったとするが、完全子会社後は(ドコモが抜けてしまい)そういう状況はなくなったとする。
また、KDDI髙橋社長は「(NTT法廃止の問題は)通信事業者の小競り合いではない。業界内で争っているという話では決してなく、通信の根幹に関わる部分。国民の皆さんにどれだけ関心を持っていただけるか、それが抑止力になると考えている」として、国民間での議論の喚起を期待した。
NTT広報によるX(Twitter)上での主張への反論を資料で配付
民営化後に敷設の光ファイバーも特別な資産の恩恵を受けている
なお、会場では11月17日に「NTT広報室」名義のX(Twitter)アカウント(@NTTPR)でのポストに対する、反論の資料が配付された。
NTT法に関連して当社よりお伝えしたいことがあります。
— NTT広報室 (@NTTPR) November 17, 2023
「税金で整備した光ファイバー網を持つNTTの完全民営化は愚策」説の勘違い
保有資産は最終的には株主に帰属するのでこの主張はナンセンスな話です。 https://t.co/f93p46Qq9R
たとえばNTT側は、KDDIやソフトバンクも、KDD(国際電信電話)や鉄道通信(JR通信)時代の資産をそのまま保有して事業をしているではないかと主張するが、性質が違うほか、その規模も圧倒的に小さいとする。
また、NTT側は「光ファイバーはほぼ全て公社ではなく民営化後に敷設しています」として、光ファイバーは通信各社が言う「国民の負担によって構築された特別な資産」ではないと暗に主張するポストを投稿しているが、局舎・電柱・管路など、通信ネットワークに必要な設備をそのまま独占的に引き継いだうえで光ファイバーを敷設しているわけであり、電電公社から承継した資産の恩恵を多く受けていると反論している。
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