埼玉県さいたま市の大宮盆栽美術館にて「盆栽×宇宙」をテーマとしたライトアップが行われている。12月10日までの金土日・祝日限定で、通常は午後4時に閉館するがライトアップ実施日のみ20時まで開館時間を延長中。入場料は一般310円/高大生・65歳以上150円/小中学生100円と通常通りだ。
大宮盆栽美術館は2010年に開館した世界初の公立盆栽美術館で、館内には樹齢200年や300年といった価値が高く芸術性に富んだ名品盆栽が室内外に120点以上展示されている。最近では「BONSAI」として海外でも高く評価されており、大宮盆栽美術館にも海外からの観光客が多数訪れるようなっている。
ただその一方で、埼玉県は他の首都圏に比べて外国人旅行者の来訪数が極端に低いという課題がある。日本政府観光局調べによると、コロナ前の2019年の首都圏における外国人旅行者訪問率は、東京都47.2%、千葉県35.1%、神奈川県7.8%に対し、埼玉県は1.1%。コロナ禍明けの今年、訪日客が増えている中で埼玉への来訪も増やそうと企画されたのが「SAITAMA Wheel2023」だ。
BONSAIの魅力を世界に発信
観光庁は今年1月、インバウンドの本格的な回復を図るために「観光再始動プロジェクト」を策定、埼玉からはさいたまスポーツコミッション/ジェイコム埼玉・東日本主催、さいたま市共催のイベント「SAITAMA Wheel2023」が選定された。これは、11月5日にさいたま新都心で開催された自転車競技イベント「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム2023」のプレミアム観戦ツアーと、盆栽美術館ライトアップの2つの事業から構成されている。自転車競技イベントは事前に台湾で宣伝し、台湾人観光客に対して観覧席の購入案内やコース試走、市内観光などのパッケージツアーを販売、盆栽ライトアップは自転車競技イベント中に会場その他で宣伝したほか、インターネットを通じて世界に発信してアピールした。
盆栽ライトアップを担当したのはパナソニック エレトリックワークス社だ。同社はこれまで、街角演出クラウド「YOI-en(ヨイエン)」を使って京都・平安神宮の應天門をライトアップした「NAKEDヨルモウデ2022 平安神宮」(2022年11月)や、北海道札幌の「サッポロアートキャンプ」(2023年1月)では雪景色をライトアップするなど、建物や風景を幻想的な光で照らして人々の目を楽しませてきたが、この実績が目に止まり、今回の盆栽ライトアップに採用された。
美術館の中庭で開催されているライトアップイベントは「THE BONSAI Microcosm journey~THE盆栽 小宇宙の旅」と題され、その名の通り「宇宙」をテーマにしている。盆栽は小さな鉢植えの中に四季折々や生命などが表現され「小さな宇宙」とも呼ばれていることから、この世界観をライトアップによって表現しようというものだ。
誕生日カラーで盆栽を染める
全体演出は秋の代表的星座であるアンドロメダ座をモチーフにした。星座を構成する星の形にLEDライトが配置され、それらを取り囲むように並んだ大型の盆栽が浮き出るようにライトアップ。すべての明かりが連動しており、電球色→春→宇宙→夏→秋→宇宙→冬と90秒ごとに色が変わっていく演出で宇宙と四季を表現している。
ユニークなのが、来場者はただ光の演出を見るだけでなく、自らが演出に参加できる仕組みを導入していること。中庭を一望できるテラスに設けたボードの二次元コードをスマートフォンで読み取り、誕生日を入力すると庭全体が誕生日カラーに変わり、アンドロメダ座が音とともに浮かび上がり、スマホにも誕生日カラーのアンドロメダ座が映し出される。
さらに、中庭入り口に設置したひときわ大きい盆栽にはプロジェクターの光を当て、同じくスマホから誕生日を入力すると太陽系の星々をイメージした演出とともに、太陽や月、金星などの誕生日から占ったイメージが表示される。
今回、初めての試みとなった盆栽ライトアップイベントだが、既にSNSの口コミによって外国人観光客の来訪が増えているとのことだ。開催期間に訪れた人々によってSNSで世界中に拡散されることで大宮盆栽美術館の認知度が上がり、盆栽自体の認知度向上にも貢献していると思われる。期間限定の開催ではあるが、SNS映えする写真が撮影できるという体験は、インバウンド市場拡大につながる有効な手段だと言える。
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