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IMART2023実行委員 数土直志氏インタビュー

マンガ・アニメ業界のプロがガチトークするIMART2023の見どころ教えます

2023年11月21日 17時30分更新

IMART初回は文化庁関連のイベントだった

マンガとアニメは近いようで遠い存在。ビジネスモデルも大きく異なる

―― 行政のサポートがなくても『IMARTを続けたい』と思われたのはどんな理由からでしょうか?

数土 マンガとアニメは隣接しているコンテンツなのに、合同のイベントというのは不思議とあまり発生しません。出版のマンガ業界とアニメ業界というのは、近いようで遠い面があるんです。お互いにバラバラに動いている感じもあります。

―― どんなところが「遠い」と感じるのでしょうか。コンテンツビジネスの場でアニメとマンガが連携することは非常に多いです。近年はマンガ原作をアニメ化するだけではなく、たとえば電子書籍が配信されたタイミングでアニメの何かが動きます、といった連動企画が増えていたりもします。

数土 連携は当然増えていますよね。しかし、マンガとアニメのビジネスモデルがあまりにも違うために、そうした企画でも、意外とみなさん、お相手の仕事のことはよくわかってないんじゃないかな? とも思っています。

―― マンガとアニメの「ビジネスモデルの違い」とは、どのようなものでしょう?

数土 マンガに紐付く出版社は、近年ライツ(版権)の売り上げも上がっていると思うのですが、基本的には書籍を売る、つまりマンガは「コンテンツそのものを売る」産業です。一方でアニメは映像販売を土台としつつも「ライセンスビジネス」の側面が強いんです。むしろキャラクタービジネスに近い。

 そして構造も違います。マンガは、1作品ごとの投下コストはそれほど高くありません。マンガ家さんとアシスタントさん、編集さんがいれば作品はできます。だから出版社的にはものすごい数の球(作品)を投げて、そこからヒット作が出ることで投下コストを回収しつつビジネスとして回しています。

 対してアニメは「ものすごい数の球」は投げられません。1作品ごとに億単位の予算がかかりますし、個人作業ではなく数百人単位のプロジェクトです。このような構造の違いもあると思います。

―― マンガとアニメは同じ「キャラクターコンテンツ」だから、ビジネス形態も似ているかな思ったら、1作品ごとの規模やコストに対する考え方、作品づくりの発想も個人か集団かなど、大きく違うんですね。

数土 そうなんです。そこでIMARTを「マンガとアニメの相互理解を促進するイベント」として続けたいと僕らは考えたんです。

「マンガはカルチャー、アニメはビジネス」語られ方がアンバランス

数土 それから、僕自身の問題意識としては、マンガとアニメの「語られ方」がアンバランスだな、と思うことがあります。

―― 「語られ方」というのは?

数土 マンガとアニメでは、発信されていく分野に違いがあるんです。

 イベントに焦点を絞っても、「マンガ」には作品論を発表したり、マンガ家さんが語るトークショーなど《カルチャー》視点でのイベントがたくさんあります。けれど《ビジネス》を語るイベントはあまり……。最近では電子書籍やアプリなどマンガのデジタル化やIT企業の参入で、ビジネスイベントも増えましたが、僕らがIMARTを始めた4年前は少なかったと思います。

 逆に「アニメ」は《ビジネス》視点でのイベントが多い。アニメ制作会社の社長やプロデューサーが語るトークイベントがあったり、「Anime Japan」みたいに海外向け商談の場とファン向けイベントが合わさった形で開催されていたりと産業面では充実しています。

 一方で作品評論や文化を語る《カルチャー》イベントは、まだまだ十分でないかと思います。

 《アカデミック(学術)》のイベントとなると……学会での発表あるものの、世間に向けた発表はあまりありません。ビジネス、そしてカルチャーに比べてもアカデミックはそれほど注目されていない印象です。マンガのアカデミックのほうが盛り上がっているし、研究者も多いと思っています。

ほかでは聞けないアカデミックなセッションが目白押し

―― マンガは作品論が多く学術的に発展して、アニメはビジネスを軸にして産業的に発展した感じがあります。それはマンガに研究者が多くて、アニメはライターが多いことともつながっている気がします。

数土 そうですね。だからマンガとアニメは別々にイベントが開催される傾向にありました。

 そこで、もう少し双方向に交流できる、マンガとアニメがクロスオーバーするようなイベントがあればいいなと思ったんです。

 また、ゲーム業界の「CEDEC(Game Developers Conference)」のようなイベントが、マンガとアニメでも成り立つのではないか、というのもIMARTの設立した背景にあります。双方の業界人が集えば、新しい発見があると思うし、交流も生まれてほしいと考えています。

「マンガ×アニメ」双方向や「アニメ記事の海外発信」をテーマにしたセッションも

―― マンガとアニメのクロスオーバーを目指しているそうですが、そこをテーマにしたセッションにはどんなものがありますか?

数土 昨年は『マンガがアニメに望むこと、アニメがマンガに望むこと』というセッションを実施しました。

―― 直球ですね! 少し間違うと双方の業界に波紋を起こしそうな……。

数土 はい。忖度がほぼないのがIMARTの良いところだと僕は考えています。

 カルチャーやアカデミズムの文脈では、昨年の『マンガ・アニメがアートなのか、メディア芸術再考』も僕のお気に入りです。文芸評論家の藤田直哉さん、アニメ評論家の藤津亮太さん、美術評論家の小松崎拓男さん、ゲーム研究と美学を専門にする松永伸司さんにストレートに討論していただきました。

―― 数土さんはIMARTの「アニメ」担当委員ということで、ここからはアニメについてお聞かせ下さい。数土さんご自身はどんなところをポイントにしてセッションを組んでいますか?

数土 僕が企画を立てるのは、基本、実行委員の方々が作った企画にない、そしてなおかつ入れたほうがいいと思う分野です。今回は2本ありまして、1つは『アニメカルチャーをいかに海外に伝えるか -国内メディアの挑戦-』(登壇者:鳩岡桃子「月刊ニュータイプ」副編集長、井木康文 株式会社テレビ朝日インターネット・オブ・テレビジョン)。

 日本のアニメ記事を海外に発信するにはいろんな課題がありますが、大きいのは翻訳と収益化です。その挑戦をされている企業の担当者の方々に登壇していただきます。

―― 今後は作品だけでなく、関連記事も海外進出させていこう、ということですね。

『アニメカルチャーをいかに海外に伝えるか』では、「日本からアニメカルチャーと情報を世界に発信する仕組みづくりに挑戦する担当者」が集う

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