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ラー博にまつわるエトセトラ Vol.34

あの銘店をもう一度第25弾 五感に訴える一品料理としてのラーメン 札幌「けやき」

2023年11月17日 12時00分更新

 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 2022年の7月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」と、2022年11月7日より、1994年のラー博開業時の8店舗(現在出店中の熊本「こむらさき」を除く)が、3ヶ月前後のリレー形式で出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

新横浜ラーメン博物館

 前回の記事はこちら:あの銘店をもう一度第25弾 クセはあるけどクセになる 旭川「蜂屋」

 過去の連載はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 あの銘店をもう一度第25弾は、味噌ラーメン専門店札幌「けやき」さんです。出店期間は2023年11月21日(火)~12月11日(月)の3週間。

けやきの「味噌ラーメン」

 札幌「けやき」の誕生は1999年の11月。来年で25周年を迎えます。創業者・似鳥 栄喜さんは、ホテル・レストラン等での料理経験を経て、1983年に創作和食店「わびさび」を開業。「わびさび」は地元の人たちからも支持を受け、一躍人気店となります。そんな似鳥さんが、繁盛店となった「わびさび」を手放し、「けやき」をはじめた理由はどのような背景があったのでしょうか?

 似鳥さんによると「当時、観光で来るお客さんから、立て続けに味噌ラーメンの美味しい店を聞かれたのがきっかけで、それならば自分が納得できる味噌ラーメンを作ってみようと。しかし、いざラーメンを作ってみるとこれが非常に難しい。味はどんどん変化していくし、全く安定しない。最初は店の締め料理としてくらいの気持ちでしたが、その奥の深さに魅せられ、気づいたら2年もの時間を費やしてしまいました。その間、常連さんには迷惑されるほど試食をしていただきました。私はラーメンほど奥が深く、難しい料理に出会ったことがありません。味噌ラーメンの聖地で味噌ラーメンを極めたいという想いが強くなり、ついには"わびさび"まで手放してしまいました」と当時を振り返っていただきました。

 「けやき-欅」の屋号には、「欅の幹のように太く硬く、根がしっかりしていて揺るがない、1本の木のようにありたい」との想いが込められております。

創業者の似鳥栄喜さん

 「味噌ラーメン新時代。ラー博が出した答え」というコピーは、札幌「けやき」がラー博に出店した際のキャッチコピーです。「けやき」が出店したのは2004年の12月。その年の10月末までは札幌「すみれ」が1994年の開業時から出店していました。

 「すみれ」の卒業が決まった後、私たちはあらためて札幌中のラーメンを食べ歩きました。当時、札幌でも味噌以外の様々な味を提供するお店が続々とオープンし始めましたが、私たちは開業時から"ご当地ラーメン"に着目していたこともあり、味噌ラーメン生誕の地「札幌」だからこそ、味噌ラーメン専門店を誘致しようという結論に至りました。

 そんな中、食に精通する札幌の方々が以前から口を揃えてオススメする店がありました。そのお店が「けやき」です。

けやき本店の行列

 私たちが初めて「けやき」のラーメンを食べたのは2000年のこと。全国各地のラーメンを食べ歩いてきたラー博スタッフにとっても表現する言葉が見つからないほど斬新で、当時のメモには「オープンしてまだ新しいお店だが、新時代を象徴する味噌ラーメン専門店」と書き残されていました。「ラー博が出した答え」には、「すみれ」卒業後の店舗は、札幌味噌ラーメンの文化を繋いでいくお店として、ラー博が「けやき」を選んだという意味が込められているのです。

けやきの味噌ラーメン

 巨大な寸胴鍋で取るスープは厳選された豚のゲンコツや背脂、丸鶏、数種類の野菜やシイタケなどが原料です。約十時間をかけ、じっくりとうまみを抽出しますが「日によって骨の状態が違うので仕上げに再度、必要な部位の骨を足して、一定の味を保っています」という徹底ぶりです。

けやきのスープ

 みそだれに使用するみそは、大豆みそや麦みそなど三種類のみそに野菜の甘みをプラス。まろやかさ、ツヤの良さ、深いコク、キレのよさを兼ね備えています。

三種の味噌

 麺は一週間寝かせて成熟させた中太の縮れ麺で、スープが程よく絡みます。プリプリとした食感がやみつきになります。

成熟させた中太の縮れ麺

 中央にこんもりと盛られた具は白髪ネギやキャベツの青み、ニンジンの赤、キクラゲの黒など、彩りも鮮やか。

彩りも鮮やかな具材

 「けやき」には味噌ラーメンを食べて育った生粋の地元の人々から、味噌ラーメンを札幌のご当地と感じていなかった若者、そして美味しい味噌ラーメンを求めてやってくる観光の人々まで、幅広い人々に愛されています。

 札幌「けやき」のラーメンがラー博で食べられるのは実に14年ぶり。

 札幌味噌ラーメンの新たな歴史を作った「けやき」さんのラーメンを、五感で味わっていただきたいです。

 出店期間は2023年11月21日(火)~12月11日(月)です。

 皆様のお越しをお待ちしております。

 そして次回、銘店シリーズ第26弾はドイツ・フランクフルト「無垢ツヴァイテ」さんです!

 お楽しみに!!

新横浜ラーメン博物館公式HP
https://www.raumen.co.jp/

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文/中野正博

中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。

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