ノートPCの歴史を変えた「VAIOノート 505」と「VAIOノート C1」は今も心を掴んで離さない
◆きのこたけのこ論争に匹敵する
「VAIOノート 505」VS「VAIOノート C1」
「VAIOノート 505」と「VAIOノート C1」。自分の人生を変えることになったVAIOノートは何? と聞かれたら、この2つのモデルで支持者は真っ二つに分かれて、きのこたけのこ論争に匹敵する争いが巻き起こるかもしれません(注:40代以上に限る)。
それくらい、往年のWindows PCユーザーに大きなインパクトを残したVAIOノート2大巨頭について触れてみたいと思います。
◆VAIOノート 505はマグネシウム合金の感触が良かった
通称“VAIOノート 505”の正式型番「PCG-505」は、1997年10月に発売されたB5ファイルサイズのノートPCです。約23.9mmという薄さと、約1.35kgの軽量ボディー。そして本体にマグネシウム合金を採用しています。のちに各社も同様のPCを投入することとなり、「銀パソ」ブームの火付け役とも言われていました。
初号機のスペックは、10.4型SVGA(800×600ドット)TFT液晶に、MMXテクノロジーPentiumプロセッサー(133MHz)、メモリー32MB、HDDは1GB、OSはWindows 95というスペックでした。動作はキビキビ、キータイピングのしやすさや性能を担保しつつ、絶妙なコネクター配置や、ディスプレー横に収まるペン収納サイドポケット、ペン操作に対応したタッチパッド、当時の技術でここまでできるのかといわんばかりの薄くてスタイリッシュなボディーには、ガジェット心をくすぐるギミックがふんだんに盛り込まれていました。
そして、VAIO独特のシルバーとパープルを基調としたカラーリングと、マグネシウム合金だからこそ感じられるそのひんやりとした金属の質感。あらゆる要素が、従来あったノートパソコンとは一線を画していて、全PCユーザーの心を奪いました。
プロセッサーの処理能力やメモリー、HDDの容量の少なさがあったとしても、25万円という価格との絶妙なバランスもあって、発売日に瞬く間に売りきれてしまい入手困難になった事を覚えています。
ただ、惜しむらくは初のマグネシウム合金を採用したモデルだったがゆえに、天板にあるVAIOロゴがくぼんでいるかのように見えるような印刷による処理となっていました。
その後、細かなマイナーチェンジを経て、1999年に登場した「PCG-N505SR」は、10.4型、XGA(1024×768ドット)TFT液晶に、モバイルPentium II プロセッサー(400MHz)、メモリー128MB、HDDは8.1GBまでにハードウェアは進化しました。そしてついに! 念願の! 天板のVAIOロゴがついにエンボス加工になり、そのかっこよさと合わせて魅力が爆発。
VAIOノート505の虜になった人たちは、おそろしい勢いで買い替えと買い増しを繰り返していきました。「このVAIOノート505を手にして、外に持ち運んで使いたい! いや、何なら持ち運んでいる俺カッコイイ!」を体現した魅力的なサブノートとして、その存在を世に知らしめたのでした。
◆さらに小さくなった「VAIOノート C1」
そして猛烈なファンが多い“VAIOノート C1”こと「PCG-C1」は、VAIOノート505よりも約1年遅れて登場。VAIOノート505よりもさらに小さくて、横幅240×奥行き140×高さ37mm、重さ約1.1kgという横長サイズのモバイルミニノートPCでした。
スペックは、MMXテクノロジーPentiumプロセッサー(233MHz)、メモリー64MB、3.2GBのHDD、OSはWindows 98を採用していました。そして特徴的な、ド変態ディスプレーの1024×480のTFT液晶。まるで今のディスプレーのトレンドを先取りするかのような横に超ワイドな画面は、モバイルするノートPCにおいての作業効率が最高に良く、キーボードも横17ミリピッチあってキータイピングも快適なのです。
キーボード中央に、スクロールに対応したスティック式のポインティングデバイスが備わっているのもVAIO C1ならでは。ちゃんと左右のクリックボタンも備えたうえに、中央にある物理ボタンを押しながらポインティングデバイスを操作することでドキュメントなどを自由に動かすこともできるギミックもありました。
そしてVAIO C1の象徴となるのが小型カメラ「モーション・アイ」。液晶パネル上部のベゼルに埋め込まれている、27万画素の1/6型CCDカメラで、くるっと180度回転させて自分のほうに向けることも反対側に向けることもできます。静止画はもちろん、動画を撮って編集したり、効果をかけたムービーを作ったり、映像ありきのテレビ会議ができたり、カメラで2次元バーコードを読み込んでソフトと連動したりと、画素数の低さをものともせず、数多くのソフトウェアとの連携することで近未来を切り開きました。
とはいえ、本体を折りたたんだ状態で37mmというのは結構ぶ厚くて、実際にはそんなにコンパクトなわけではなかったのですが、そこはマグネシウム合金のボディーとVAIOノート505と同じカラーリングもあいまって、そのかっこよさは突出しており、見せびらかせたいミニノートのナンバー1でした。
VAIO C1シリーズはモデルチェンジするごとにチャレンジングなモデルを投入していました。
1999年に登場した「PCB-C1XE」は当時ソニー製品に次々へ搭載されていたジョグダイヤルを搭載。「PCG-C2GPS」は象徴であるモーションアイをなくす代わりに、付属のGPSレシーバーを使って自分の位置を把握できて、ディスプレーは屋外でも見やすいポリシリコン液晶を搭載していました。
今から25年も前のガジェットなのに、まさに今のスマホで当たり前になっていることを本気でやろうとしていたのがこの最初のVAIO C1シリーズだったと言っていいでしょう。それはもう当時のガジェッターの心を鷲掴みでした。
どちらのモデルも小型という制約があるサイズだったことと、時代がPC進化の過渡期という事もあって、毎度毎度の新機能がこれほどまでに楽しみだった事はなく、VAIOの進化があるから今を生きていける! と思えるほどでした。
ただ、行き過ぎた存在感はのちの足枷になるのが世の常。VAIOノート 505は、ノートPCの歴史を一変させてしまったがゆえに、今度はソニー自身が越えられない壁として立ちはだかってしまいました。
このあとに発売されるすべてのモバイルノートPCは、過去のVAIOノート 505と比較されるという呪縛に囚われることになったのです。一方で、VAIO C1シリーズは根強い人気を誇りつつも、さらなる小型のノート「VAIO Uシリーズ」の登場により、さらに僕たちガジェッターを喜ばせることになるのです。
筆者紹介───君国泰将
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