Auracastを使うには?
Auracastでは対応する送信機と受信機が必要となる。送信機はノートPCやスマートフォンを指し、LE Audio対応であればAuracastの送信機になれるが、LE Audioには20以上の新機能があり、Public Broadcast Profile(PBP)というプロファイルが使える状態になっている必要がある。
パソコンやスマホがLE Audioに非対応でもドングル型の送信機を利用することができる。写真はBluetooth SIGのCMOであるKen Kolderup氏に持っていただいたところだが、かなり小さい。これを使えば、USB-C対応の「iPhone」をAuracast送信機にし、アプリで再生中の音楽を数十台のワイヤレススピーカーやイヤホンにブロードキャストできるそうだ(すでにUSB-C対応のiPadでは試してみたらしい)。また、ノルディック製の試作基板も見せてもらった。これをベースにAuracast送信機を作ることができるようだ。これにアナログ入力があれば、テレビなどの音声を簡単にAuracastで配信ができるようになる。
受信機はLE Audio対応のイヤホンなどだ。Auracast Experienceではクアルコムのリファレンス・イヤホンが使用されていた。これはMWCやCOMPUTEXでのAuracast Experience、あるいはクアルコムのSnapdragon Sound Gen2 とLE Audioを組み合わせた発表イベントで使用されたものと同じだ。
リファレンス・イヤホンとはドライバーメーカーやチップメーカーが製作したイヤホンだ。商品を開発するメーカーにドライバーやチップの使い方を説明したり、設計の参考にするために用いられる。市販するためのものではない。
スマホを経由せず、イヤホンで直接音声を聞ける
重要なポイントはAuracastを受信するのはあくまでイヤホンであり、スマホは必須ではないという点だ。Auracast Experienceではイヤホンのチャンネルを切り替えるUIとしてスマホアプリを利用している。イヤホンには画面がないので、スマホでAuracastのチャンネル名やメタ情報を見せているわけだ(Auracastでは音声と同時に、Advertisementというメタデータも送信している)。
実際、Aura Experienceで使用したスマホはAndroid 12が動作する「Pixel 6a」であり、LE Audio対応ではなかった。また、今後イヤホンにスイッチで周囲にあるAuracastのチャンネルを順に切り替える(ローテーションする)機能が付けば、スマホを使わなくても聞きたいチャンネルの音声に合わせられるだろう。
Auracastはこのように機材についての柔軟性も高く、導入についての敷居は思っていたよりも低いように思えた。公共の利益ともなりうる機能なので、オーディオメーカーだけではなく自治体や鉄道会社なども率先して導入を考えてもらいたい新技術だ。
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