週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ソニーPCLのOSVP拠点「清澄白河BASE」が進化、圧巻のスクリーンや撮影車を見てきた

2023年10月02日 08時00分更新

実験だけでなく、商業映像への現実的な活用も進む

 清澄白河BASEで撮影した映像は多岐にわたるが、いくつかの事例も紹介された。クリエイティブレーベルのPERIMETRONが撮影したKingGnuのミュージックビデオ「Stardom」はバーチャルプロダクションとボリュメトリックキャプチャの両方を用い、疾走感あふれる映像表現に挑戦している。また、TYO driveの「drive」では、2台の車を活用したカーチェイスシーンを撮影している。これらの映像はメイキング動画もYouTubeで公開されている。

 CM撮影の事例も増えており、芋焼酎「木挽ブルー」の撮影では、撮影時間/天候などの制約が非常に強く、撮り直しが困難なマジックタイムの繊細な映像反射表現にチャレンジ。実写では撮り直しが困難だが、何回も同じ条件で撮影ができるという利点を生かし、グラスの反射表現など理想のディティールにこだわれたという。

 東映「王様戦隊キングオージャー」など、週次のレギュラー番組で使用する事例も出てきている。カメラ位置と連動して背景の3DCGが変化するIn-Camera VFX、2D映像を流して複数の場所でロケをこなすのと同じ効果を得るScreen Process、そしてボリュメトリックキャプチャーという3つの撮影手法を瞬時に切り替えながら週次の撮影に載せていくノウハウも蓄積されたという。美術、CGチームとの連携も大きな糧となった。

 なお、ボリュメトリックキャプチャスタジオの活用事例としては、TBS系で10月から放映される火曜ドラマ「マイ・セカンド・アオハル」などもあるという。

背景アセットや大道具など、ビジネス連携も進む

 スタジオとしての進化点はすでに述べたスクリーンの追加だけでなく、In-Camera VFXに使用するカメラトラッキングシステム「Mo-Sys StarTracker」に加え、オプチトラックを20台ほど設置。また、ワークフローを改善。制作工程の組み方だけでなく、どの技術をどのスタッフィングでやれば、理想のスケジュール感、理想のコストで実現できるかについてのノウハウ蓄積が進んでいるという。

撮影に使用するVENICE 2カメラ。In-Camera VFX用のシステムを装備している。

カメラ位置をトラッキングするために天井にドットが配置されている。

スクリーンの周囲にはトラッカーが追加されている。

 また、バーチャルプロダクションは清澄白河BASEだけでなく、パートナーとの間の連携も広がっている。具体的には、角川大映スタジオと相互連携しながら最新技術の提供をし、スタッフの派遣や技術ノウハウを提供。角川大映スタジオではできないものを清澄白河BASEで補うといった取り組みができた。また、背景素材として使用できるアセット「BACKDROP LIBRARY」についても外部連携し、東急不動産の物件をロケハン・キャプチャ(3DCG化)したり、大日本印刷から神田明神の3DCGアセットの協力を受けるなど、ビジネスの循環を広げる取り組みが進んでいる。

各分野での連携

背景映像を3D撮影するための専用カーも開発

 面白いのは、特許出願中の技術を用いた360度撮影素材。VENICEカメラを向かい合わせで配置し、公道を実際に走って撮影した素材を20点ほど公開したばかりだという。

撮影に使用するカメラ搭載のクルマ

 このほか、「清澄白河BASE」制作シミュレーターとして、ウェブ会議などのリモート環境でも実際の撮影シミュレーションができる仕組みを用意している。

「清澄白河BASE」制作シミュレーター

 バーチャルプロダクションの課題としては、専門知識を持つ人材の不足が引き続きある。ここは清澄白河BASEの知見をドキュメント化したり、スタッフの外部派遣をしたりして、映像業界全体の発展につながるようにしている。

活用事例を紹介

えっ!? リアルな図書館にヒーローや怪人が登場??

バーチャルプロダクションをデモする、ソニーPCL クリエイティブ部門 ビジネスプロモーション部 マーケティング課 櫛山 健一郎氏。

図書館をイメージしたシーンを大道具と組み合わせて実現

背景には多数の本が並んでいる

CG素材であるため、光のあたり方なども現場で見ながら、細かく調整できる

よく見ると、背景にクワガタオージャーや怪人がいる。

ボリュメトリックキャプチャスタジオで撮影したデータを活用し、何人も同時に出す……と言ったことも可能に。

手のかかる自動車のロケも自由度高く

自動車の撮影もリアルに

写真に撮ると映像とは思えないほどリアルだ。

背景も自由に変えられる。

運転者のアップなど、実写では難しいシーンもこだわって撮影できる。

海外の街並みをバックに。複数の国をまたいだロケなどは、日程や予算などで普通は現実的ではないが、バーチャルプロダクションであれば1ヵ所で終えられる。

大自然をバックに。

現実ではあり得ない、サイバーパンクな空間もバックに。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう