実験だけでなく、商業映像への現実的な活用も進む
清澄白河BASEで撮影した映像は多岐にわたるが、いくつかの事例も紹介された。クリエイティブレーベルのPERIMETRONが撮影したKingGnuのミュージックビデオ「Stardom」はバーチャルプロダクションとボリュメトリックキャプチャの両方を用い、疾走感あふれる映像表現に挑戦している。また、TYO driveの「drive」では、2台の車を活用したカーチェイスシーンを撮影している。これらの映像はメイキング動画もYouTubeで公開されている。
CM撮影の事例も増えており、芋焼酎「木挽ブルー」の撮影では、撮影時間/天候などの制約が非常に強く、撮り直しが困難なマジックタイムの繊細な映像反射表現にチャレンジ。実写では撮り直しが困難だが、何回も同じ条件で撮影ができるという利点を生かし、グラスの反射表現など理想のディティールにこだわれたという。
東映「王様戦隊キングオージャー」など、週次のレギュラー番組で使用する事例も出てきている。カメラ位置と連動して背景の3DCGが変化するIn-Camera VFX、2D映像を流して複数の場所でロケをこなすのと同じ効果を得るScreen Process、そしてボリュメトリックキャプチャーという3つの撮影手法を瞬時に切り替えながら週次の撮影に載せていくノウハウも蓄積されたという。美術、CGチームとの連携も大きな糧となった。
なお、ボリュメトリックキャプチャスタジオの活用事例としては、TBS系で10月から放映される火曜ドラマ「マイ・セカンド・アオハル」などもあるという。
背景アセットや大道具など、ビジネス連携も進む
スタジオとしての進化点はすでに述べたスクリーンの追加だけでなく、In-Camera VFXに使用するカメラトラッキングシステム「Mo-Sys StarTracker」に加え、オプチトラックを20台ほど設置。また、ワークフローを改善。制作工程の組み方だけでなく、どの技術をどのスタッフィングでやれば、理想のスケジュール感、理想のコストで実現できるかについてのノウハウ蓄積が進んでいるという。
また、バーチャルプロダクションは清澄白河BASEだけでなく、パートナーとの間の連携も広がっている。具体的には、角川大映スタジオと相互連携しながら最新技術の提供をし、スタッフの派遣や技術ノウハウを提供。角川大映スタジオではできないものを清澄白河BASEで補うといった取り組みができた。また、背景素材として使用できるアセット「BACKDROP LIBRARY」についても外部連携し、東急不動産の物件をロケハン・キャプチャ(3DCG化)したり、大日本印刷から神田明神の3DCGアセットの協力を受けるなど、ビジネスの循環を広げる取り組みが進んでいる。
背景映像を3D撮影するための専用カーも開発
面白いのは、特許出願中の技術を用いた360度撮影素材。VENICEカメラを向かい合わせで配置し、公道を実際に走って撮影した素材を20点ほど公開したばかりだという。
このほか、「清澄白河BASE」制作シミュレーターとして、ウェブ会議などのリモート環境でも実際の撮影シミュレーションができる仕組みを用意している。
バーチャルプロダクションの課題としては、専門知識を持つ人材の不足が引き続きある。ここは清澄白河BASEの知見をドキュメント化したり、スタッフの外部派遣をしたりして、映像業界全体の発展につながるようにしている。
活用事例を紹介
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