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『ザイム真理教――それは信者8000万人の巨大カルト』(森永卓郎 著、三五館シンシャ)を読む

財務省はカルト教団化している 森永卓郎氏が知ってほしかった「真実」

2023年09月28日 07時00分更新

大手出版社から軒並み出版を断られた

 だが当然のことながら、そんな状態では自身の将来を守ることはできない。だからこそ、わかりやすく解説する必要があるということ。つまり著者にとってそれは、「自分のために、なんとか真実を理解してほしい」という切実な思いでもあるのだろう。

 財務省は、宗教を通り越して、カルト教団化している。そして、その教義を守る限り、日本経済は転落を続け、国民生活は貧困化する一方になる。(「まえがき」より)

 本書のページをめくっていくたびに、これが決して大げさな表現ではないことを読者は知ることになるだろう。ザイム真理教という名称自体は冗談めいているかもしれないが、実のところ彼らの考えていること、やっていることは非常に恐ろしいのだということをも。

 それは、著者が本書を世に送り出すまでの経緯にも表れている。2022年末から翌年の初頭にかけて一気に骨格をつくり揚げ、そののちできあがった原稿を大手出版社に持ち込んだものの、軒並み出版を断られたというのである。つまり大手各社は、このテーマの本を出すこと自体を拒んだわけだ。

 私は出版の世界では、言論の自由は守られていると信じていた。もちろんふつうのテーマは自由に書けるし、実際に私もたくさん本を出している。ところが、ことザイム真理教に関してだけは言論の自由がほとんどないのかもしれない。(「まえがき」より)

 そのため出版をあきらめかけていたなか、本書の版元だけが引き受けてくれたのだという。そんなプロセスを経なければならなかったということ自体に問題があるのは明らかであり、そういう意味でも、本書に目を通してみてほしいと強く感じる。

 
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筆者紹介:印南敦史

作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

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