担い手不足や若手への技術継承が業界全体の問題として指摘される建設業界。他の業界と比べても生産性向上につながるデジタル化が遅れており、今でも紙と電話で仕事を進めているところも多い。
今回は、その建設業界において、民間・公共問わず、建築・防水・内装などあらゆる建設業務を総合的に手掛けているビッグルーフがLINE WORKSを導入し、運転日報や研修アンケート、朝礼マニュアルなどのアナログだった業務をデジタルへシフトさせたその経緯と効果について、ビッグルーフ プロジェクト管理部 直井優太氏に話を伺った。
ガラケーからスマホへの移行を機に社内DXを本格化
ビッグルーフは1993年に設立。2023年には女性の活躍を推進し、男女平等参画の実現を目指して取り組む「女性のエンパワーメント原則推進事業所(文京区)」として登録を受けている。建築工事から防水工事、内外装工事など、建築に関する一式を手掛けている建設会社だ。売り上げの8割は公共建築で、東京都や国からの公共工事を手掛けている。
ビッグルーフもコミュニケーションは電話とメール、業務は紙で処理していた。しかし社内DXの第一歩として2023年1月にガラケーからスマホに切り替え、コミュニケーションをLINE WORKSに集約した。
直井氏が所属するプロジェクト管理部は社員の業務を代替・支援するさまざまなSaaSのシステムを導入し、社内のDX推進を担っている。
「全社的にアナログ業務を脱却しDXを推進する必要があると感じていました。まずは、スマホに切り替えるタイミングで、コミュニケーションを円滑化するため、LINE WORKSの導入に至りました」(直井氏)
全従業員にアカウントを配布し、社内コミュニケーションをLINE WORKSに一本化した。メールよりも気軽にやりとりできるため、細かい打ち合わせが頻繁に行なわれるようになったそう。たとえば、スケジュールの変更の際、以前は何度もメールを送受信したり、電話で確認していたのが、チャットで手軽に行なえるようになった。
また、建設現場ごとにトークルームを作成し、協力会社も交え、現場監督と上司が参加してコミュニケーションしている。エリアの担当上司は現場にいないことも多いが、各現場の会話が常に見えているので、課題と解決をリアルタイムに把握できる。マネジメント層の業務効率化にも一役買っているという。
月60件提出されていた運転日報もデジタル化で業務効率改善
コミュニケーションだけでなく、業務でもLINE WORKSの活用が広がった。たとえば、運転日報。2022年4月から安全運転管理者の業務が段階的に拡充され、その中で運転日報の記録はさらに厳格化された。白ナンバー車を5台以上利用する事業所は、安全運転管理者を選任する必要があり、その業務内容として「運転日報」の記録が義務付けられている。現状は紙で提出している企業が多く、提出・保管などにコストがかかっている。
ビッグルーフでは、社員が現場へ向かう移動手段に社用車を利用しており、運転日報の記入と管理を徹底する必要がある。従来は、この運転日報を紙に手書きして、月に1回、その紙の日報を見ながらExcelに情報を転記する作業も発生していた。
「ドライバーは運転する前にペンで記入し、紙の日報をファイリングしていました。この作業をデジタル化したいとは思っていたのですが、専用アプリは見つからず、だからと言ってお金をかけて開発するものでもないと思い、後回しにしていました。そんな時、LINE WORKSのアンケート機能を使えば、運転日報を残せると聞き、試してみることにしました」(直井氏)
アンケートでは、運転前に車両を選択し、運転開始時刻と運転前の総走行距離を入力。運転終了後はまた終了時刻と運転後の総走行距離、現場名、備考などを入力する。入力時間そのものは紙に手書きするのとあまり変わらないが、スマートフォンでサクッと入力できるのは便利だ。
その結果、月末の集計作業は大幅に負担が軽減した。一ヵ月に60件分くらいの運転日報が提出されるが、それをExcelに転記する作業が不要になった。以前は、集計日に車を乗っている人がいる場合、手元の記録表を撮影して送るといった手間も発生していたが、LINE WORKSならリアルタイムで情報を把握できる。
「消費したガソリンの経費をどの現場に行くときに使ったのかという集計もすぐに行なえます。経理の面でも業務効率が改善しました。運転日報はテンプレートとして用意されているので新たに作成する必要はなく、社用車を持つ企業であれば建設業界に限らず多くの現場で役立つと思います」(直井氏)
アンケート機能は社内研修でも効果を発揮しているという。研修では、参加者・主催者双方の意見を集め、内容を改善していくことが重要だ。以前は紙のアンケートで回答してもらっていたため、アンケートを回収/集計する作業が億劫になり、あまり研修参加者の意見を追いかけられていなかったそう。さらには、その作業が面倒なため、研修を開催することにも及び腰になっていたという。
しかし、LINE WORKSのアンケートであれば、スマホからもさっと回答してもらえるので、参加者側も主催者側も手間が大きく省けたという。回答が自動でグラフ化されるので、一目でポイントが把握できるようになり、今後の開催に向けてどのように改善すればいいのかもわかるようになった。
「弊社では座学・現場研修をはじめ、原価管理研修など部門を跨いたさまざまな研修を行なっています。LINE WORKSのアンケート機能は結果を自動集計し、グラフなど視覚的にわかりやすく表示されます。それを参考にしつつ、各研修のアンケート結果を比べたところ、最も参加者からのポジティブな反響があったのは現場研修だということがわかりました。それからは反響の高い研修は継続的に開催するようになり、また改善が必要であると判断したものに関しては内容を変えるなど試行錯誤し、結果的に有意義な研修が増えたと思います」(直井氏)
開催される研修の数や質は大幅に改善され、そして、異なるプロジェクトのチームメンバーと出会い、コミュニケーションも活発化した。研修は若手のスキルアップにもつながり、スキルアップした若手からは「以前よりも仕事が楽しい」という声もあるという。これもLINE WORKSの導入効果の一つといえるだろう。
LINE WORKSの掲示板も活用している。建設現場では、毎日必ず朝礼を行っている。業者ごとの作業内容や仕事の流れなどを確認するもので、ベテラン社員であればスムーズに進行できる。しかし、新人だと多くの人の前で、何を話していいのかわからなくなってしまうこともある。
会社としてはできるかぎり若手にも積極的にチャレンジして欲しいことから、LINE WORKSの掲示板に朝礼のマニュアルを作成しておき、若手はそれを見ながら話してもよいことにしている。若手の積極性を引き出すために、わかりやすい情報を共有する、というのは素晴らしい取り組みといえるだろう。
同業他社の事例をヒントに社内DXを進めていく
ビッグルーフではLINE WORKSを導入して、まだそれほど経っていないのに、さまざまな業務で活用し、大きな導入効果を得ていた。直井氏はどのようにして、LINE WORKS活用の情報収集をしているのだろうか?
「LINE WORKSの建設コミュニティに参加しているのですが、ITをもっと活用して業務改善したい、という熱い想いを持っている人たちが集まっていて、気づきも多くいい学びの場になっています。色々と質問させていただいたり、他社の事例を聞きながら、その施策を自社でも採用したりもしています。もちろん、外部のITベンダーさんからアドバイスをいただくのもいいのですが、同業種の中で情報交換ができるコミュニティは貴重な場で、とてもありがたいです」(直井氏)
今後も、LINE WORKSを活用しながら社内DXを推進していく、と直井氏は語ってくれた。なお、ドライバーの運転日報の管理については別途連載の「LINE WORKSでドライバーの運転日報をラクラク管理」もご一読いただきたい。
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