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ゲーム業界、生成AIで激変の兆し 圧倒的王者Steamに挑むEpic Games

2023年09月19日 07時00分更新

生成AIの著作権めぐり、対立するSteamとEpic

 スウィーニー氏はこの状況について、「AIが生成したアセットに対する米国の著作権局のスタンスであり、理にかなっています。しかし、人間が作ったコンテンツが多く含まれ、さらにAIのコンテンツも含まれる製品は、たとえ特定のアセットだけが保護されなくても、全体として保護される可能性があります」と述べています。“AI生成のコンテンツが含まれているとしても、ゲームとしてまとまったものとしては、著作物として成立しうる”という立場ですね。

 米著作権局は現状、人間が作ったところとAIが作ったところの要素に分けて、それぞれ著作物かどうかの判断をしているので、この意見が通るのかは不明な点ではあるのですが、Epic Games Storeの経営トップの考えを示しているとも言えます。

 さらに、「特定の元となるアートが含まれている数10億の画像のトレーニングセットを持つ生成AIから作られたアートが、その元となるアートの派生著作物であるという考えは、既存の判例を大きく飛躍させるものです。どの裁判所も、そのような判決は出していません」(スウィーニー氏)とも述べています。

 これは1月に始まったアーティストたちが、Stable AIやMidjourneyなど、複数の画像生成AI企業を相手取って開始した集団訴訟のことを指しています。この裁判は、画像生成AIのデータセットは著作権を持つ50億もの画像を無許可でトレーニングしており、それにより生成したAI画像は著作権を侵害しているとして訴えたものです。

 7月にサンフランシスコ連邦地方裁判所の判事は、訴訟の大半を棄却する意向であることを明らかにしています。アーティストが作成した画像や、アーティストの名前を使ったテキストプロンプトに基づいて作成した画像であっても、生成された画像との類似性がないという考えからです。

 つまり、「画風」は似ているとしても、「オリジナルの画像」と同じものが出ているわけではないので、著作権は及ばないとしているのです。そのため、より直接的に著作権侵害をしている証拠を提出するようにと、原告に求めました。

棄却の方向を示したウィリアム・H・オーリック判事(サンフランシスコ連邦地方裁判所の公式ページから)

 裁判の決着はまだついておらず、最高裁まで行くと思われるので、まだまだどうなるのかはわかりません。しかし、画風には著作権はないとするのが、著作権の一般的な解釈であるため、原告が敗訴する可能性が高いと考えられつつあります。この判断を受けて、スウィーニー氏は、生成したものすべてに、著作権法上の権利があると主張するのはさすがに言いすぎだという考えを示したわけです。この考えは、Valveの声明と鋭く対立します。

 ちなみに、日本でも同じような点が焦点になっています。6月に行われた文化庁のセミナーで、AI生成物が著作権侵害になるかどうかの判断のポイントは、「著作物の類似性と依拠性があるか」ということだと、明らかにされています。画像生成AIで作ったものも、画風が似ていると感じられても、元々の画像に似てなければ、そもそも、著作権侵害とは言えないということです。

Epicはもともと生成AIに肯定的?

 Epic Gamesは2021年にアメリカ版のpixivこと画像投稿サイト「ArtStation」を買収しています。このサイトでは、今年の春ごろに「NO AI」運動が吹き荒れました。生成AIに反対するユーザーが「NO AI」のアイコン画像をポストする運動で、一時期、投稿される新規画像のほぼすべてがこの画像で埋め尽くされるという事態になりました。

 ArtStationの動きが注目されたのですが、選んだのはNO AIのアイコンをすべて削除し、「NO AI」タグを成立させる道でした。「学習してほしくない」という意思を示せるタグを作ったんですね。ArtStationは原則としてスクレイピングも禁止し、オプトアウトではあるものの、画像を学習から守るということにはしました。今でも文句は言われていますが、サイト上の騒ぎはおさまった状態です。かつAI生成画像もアップロード可になっているので、新規の画像のアップはされ続けています。Epic Gamesはこの頃から、生成AIに対して肯定的なスタンスだと考えられていました。

現在のArtStationのNo AIタグ

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