6月にも生成AI関係でリジェクト、理由は著作権
生成AIに対するValveの厳しい立場が明らかになったのは6月でした。AI生成のアセットを使ったと思われるゲームをリジェクトしたという話がRedditに投稿され話題となったんですね。その投稿者によると「AIが生成したと認められる2〜3個のアセット/スプライトを含むゲームのラフバージョンを提出」したことで、リジェクトされたということでした。
これについて、Valveは以下のように返答をしています。
「検討の結果、【ゲーム名】の知的財産が1つ以上の第三者に帰属すると思われることを確認しました。特に、【ゲーム名】には、第三者が所有する著作権で保護された素材に依存していると思われる人工知能によって生成されたアートアセットが含まれています。このようなAIが生成したアートの法的所有権は不明確であるため、ゲーム内のアセットを作成するためにAIを訓練したデータセットで使用されたすべての知的財産の権利を所有していることを確認できない限り、これらのAIが生成したアセットを含むゲームをリリースすることはできません」
その後、プログラムを修正して提出したものの、二度と再提出ができないリジェクトを受けたそうです。どのようなゲームを開発していたのかは明らかにされていませんが、Valveが生成AIを使ったゲームを制限していることが知られるきっかけになりました。
このリジェクトに対する疑問の声に応えて、Valveは7月にEurogamer誌にコメントを出しています。
そのなかでは、「私たちの目標は、SteamでのAIの使用を阻止することではなく、すでにあるレビューポリシーにどのように組み込むかを検討しています。端的に言えば、私たちの審査プロセスは現在の著作権法とポリシーを反映したものであり、私たちの意見を追加したものではありません。これらの法律や方針が時間の経過とともに進化するにつれ、私たちのプロセスも進化していきます」と述べています。
さらに、「自社のプラットフォームにおいて、イノベーションを歓迎し、奨励し続けます」としながらも、「開発者は適切な商用ライセンスにより、これらのAI技術を作品に使用することができます。しかし、既存の著作権を侵害することはできません」としています。
生成AIの利用企業が、100%所有権を持っているAIアセットであることを証明できない場合は、Steamでは販売できないとする方針のようです。
これは、現在のアメリカでの生成AIコンテンツの法的な著作権法上の位置づけがまだ議論中の状態にあるため、より保守的な立場を取っているとも言えます。その背景には、生成AIに反対するユーザーへの配慮であったり、生成AIを巡る裁判に巻き込まれたくないといった理由も考えられます。しかし、具体的なガイドラインなどの情報も公にされることもなかったため、その後の正確なスタンスがわからないという状況でした。
そんななか出てきたのが今回のケースです。もしValveの声明基準によるならば、現状、ChatGPTを使ったゲームの場合、ゲーム会社が確実な著作権者であるとはみなせないと考えていることがわかります。
「Epic Games Storeに掲載して」とライバル会社CEO
そんな情報がX(Twitter)上で駆け巡っていたところ、「Epic Games Storeに掲載してください。新しい技術を使ったからといって、ゲームを禁止することはありません」とリプライで声をかけてきたのがEpic Gamesのティム・スウィーニーCEOです。Epic Gamesは、Steamに挑戦する立場のゲーム配信プラットフォーム「Epic Games Store」を展開中で、開発者が自主登録して販売できる仕組みを今年からスタートしています。
Put it on the Epic Games Store. We don’t ban games for using new technologies.
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) September 2, 2023
スウィーニー氏は、生成AIについて重要な立場を明らかにしています。3月にアメリカ著作権局は、AIが生成したコンテンツに対して人間の著作権は認められないという見解を出しています。アメリカでは日本の著作権法と違い、出版などをする際に、著作権の保護を確実に得るために、著作権局に登録する必要があるという制度があります。著作権は“人間が作成したもの”に対して与えられるものなので、AIが作成したコンテンツは、人間が命令を出したものであっても著作権はないというスタンスなのです。現在、AIコンテンツについて著作権を認めるようにと、裁判が進められていますが、連邦地方裁判所の判決では、著作権がないという判決が出ています。
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