"修理"といっても、とりあえず動けばいいという応急処置から、見た目も機能も壊れる前と遜色ない完璧なものまで、さまざまな修理のカタチがあります。また、趣味の工作で何か作ろうとした場合では、各機能や動作を確認するための実験、プロトタイプの作成、そして最終的な完成品と、工程ごとに作り方が変わったりもします。
このように、修理も工作も求めるクオリティは目的によって大きく変わります。もちろん、常に見た目も機能も完璧になるのが望ましいですが、全てにそのクオリティを求めるのはどうでしょうか。
理想的なのは3Dプリンター
でもそんな手間、かけられる?
例えば、複雑な形状でも比較的簡単に作成できるモノとして、3Dプリンターがあります。これを用意し、CADで損傷個所に合わせたパーツを作る、機能確認用に部品を固定する治具を設計・出力する、ということをできるのが理想なのは確かです。
しかし、CADでの設計はもちろん、3Dプリンターの出力にも時間がかかってしまいます。とくに1度しか使わないようなものであれば、設計の手間や出力の待ち時間を考えると億劫になってしまいがち。結局「そのうちやろう」と思ったまま放置……というのが、よくあるパターンでしょう。
こういったことにならないよう、最初の一歩は、思いついたことをすぐに形にできることが大切。とりあえずテープでぐるぐる巻きにして、応急処置や部品の固定を行う方がよっぽどマシといえます。
とはいえ現実問題として、テープでは強度が足りず、その場しのぎにすらならないことも少なくありません。
このテープでぐるぐる巻きにするくらい簡単で、応急処置やちょっとした工作、機能確認用の試作などに耐えうる強度がある素材として紹介したいのが、今回試用した「FORMcard(フォームカード)」です。
お湯に浸せばすぐに柔らかくなる!
プラスチックの多くは常温では硬く、熱を加えると柔らかくなるという熱可塑性という特性を持ちます。そのため、加熱して溶かし成形することで、様々な形を作ることができるわけです。
FORMcardも同じく熱可塑性を持ちますが、他のプラスチックと大きく異なるのが、その温度が非常に低いこと。お湯に浸すだけで柔らかくなり、手で簡単に形を作れるほどグニャグニャになるため、ものすごく簡単にプラスチック加工が行えるわけです。
つまり、温めて柔らかい状態なら、テープでぐるぐる巻きにするくらいの手軽さで扱え、冷えて固まれば、一般的なプラスチック同様の強度になるわけです。破損個所の応急処置や、ちょっとした工作に向いているというのも納得ですね。
ちなみに硬度はそこまで高くなく、1〜2mmくらいの薄さにするとハサミでジョキジョキ切れる程度。曲げればしなりますが、強く曲げても割れないため、かなり扱いやすい素材といえるでしょう。3mm以上の厚みにすれば曲げるのも難しくなるので、強度が必要な用途でも有望です。
試しにノギスのカバーを作ってみましたが、加工にかかった時間はほんの数分。粘土のように、こねて伸ばして包んだだけです。
難点を言えば、形を作っている間にもどんどん冷えていき、形を作りにくくなっていくことでしょうか。手早く作業しなければならないので、先に完成形を具体的に思い描いておいた方がいいです。
とはいえ、失敗しても大丈夫。再度お湯に浸せば柔らかくなるので、何度でもやり直しができます。一部失敗しただけなら、そこだけお湯に浸して柔らかくするといいでしょう。ドライヤーを使って温めるのもありです。
(次ページ:注意点は?)
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります