対象企業は、アルファベット、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、バイトダンス
EU、IT大手6社に「ゲートキーパー」指定 厳格な新規則の遵守を義務付ける
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(European Commission)は9月6日(現地時間)、「デジタル市場法(以下DMA)」に基づき、厳格な新規則の遵守を義務付けられる大手企業、通称「ゲートキーパー(門番)」となる最初の6社と、ゲートキーパーが提供する22のコアプラットフォームサービスを指定した。
6社は今後、指定された各コアプラットフォームサービスについて、DMAの義務を完全に遵守するために6ヵ月の猶予を与えられる。
そもそもDMAとは?
デジタル市場法は、巨大テック企業の市場独占を防ぐことを目的に、オンラインサービスの安全性と透明性を確保することを目的とした「デジタルサービス法(DSA)」と同時に2020年12月に法案として発表され、2022年7月5日に欧州議会によって可決された法律。2022年11月から正式に施行され、2023年5月から適用されている
デジタル市場法の目的は、デジタル分野における競争力のある公正な市場を確保すること、具体的にはゲートキーパー企業が、他の企業やエンドユーザーに不公正な条件を課すことを防止し、重要なデジタルサービスの開放性を確保することを目的としている。
ゲートキーパーとは、EU圏内で一定の売上高を達成し、検索やSNSなどEUが指定する10のコアプラットフォームサービスで、巨大な影響力を持つ企業およびそのサービスを指す。
指定されたのは6社および22のコアプラットフォームサービス
今回はじめてゲートキーパーに指定されたのは、アルファベット(グーグル)、アマゾン、アップル、バイトダンス、メタ、マイクロソフトの6社。
この決定は、6社およびサムスンがゲートキーパーに指定される可能性があることを通知した後、欧州委員会による45日間の検討プロセスを受けたもの。今回サムスンは指定を外れたようだ。
あわせて、ゲートキーパーが提供する22のコアプラットフォームサービスおよび、対象となるサービス名も以下の通り発表された。
・Online intermediation services(仲介サービス):Googleマップ、Google Playストア、Googleショッピング、Amazonマーケットプレイス、Apple App Store、Metaマーケットプレイス
・Online search engines(検索エンジン):Google 検索
・Online social networking services(SNS):TikTok、Facebook、Instagram、LinkedIn
・Video-sharing platform services(動画共有):YouTube
・Number-independent interpersonal communication services(メッセージングサービス):WhatsApp、(Facebook)メッセンジャー
・Operating systems(OS):Android、iOS、Windows
・Advertising services(広告サービス):Google、Amazon、Meta
・Web browsers(ウェブブラウザー):Chrome、Safari
なお、「Virtual assistants(バーチャルアシスタント)」および「Cloud computing services(クラウドコンピューティングサービス)」の2つはコアプラットフォームサービスに指定されてはいるが、該当サービスはなかった。
ゲートキーパーに指定された6社は今後、指定された各コアプラットフォームサービスについて、DMAの義務を遵守するために6ヵ月の猶予が与えられる。
ゲートキーパーは6ヵ月以内に遵守報告書を提出の義務
ゲートキーパーに指定された企業は6ヵ月以内(2024年3月まで)に、DMAが指定する「やるべきこと」と「やってはいけないこと」の各義務をどのように遵守しているかをまとめた詳細な遵守報告書を提出する必要がある。
また、ゲートキーパーが義務を遵守しない場合、欧州委員会はその企業の全世界の総売上高の10%を上限とする制裁金を科すことができ、違反が繰り返される場合は金額を20%まで引き上げることができるとされている。
また、違反が組織的とみなされた場合、欧州委員会はゲートキーパーに事業またはその一部を売却することを義務づけるなど追加的な措置を講じることもできる。
ゲートキーパー各社の対応は?
一部の巨大テック企業による独占的商行為を取り締まることを目的として発表されたデジタルサービス法が、ようやく強制力のある法として執行が開始された。
ティエリー・ブルトン欧州委員会域内市場担当委員は「(本日の指定により)我々はついに6つのゲートキーパーの経済力を抑制し、消費者により多くの選択肢を与え、規模で劣る企業にも新たな機会を創出する。デジタル市場が公正でオープンであることを保証するために、ヨーロッパがゲームのルールを設定する時が来たのです」と意気込むが、指定を受けた企業側にも当然意見はあるだろう。
消費者側から見ればメリットしかないように見えるが、たとえば、DMAが「やるべきこと」と指定する「第三者がゲートキーパーのサービスと相互運用できるようにすること」などは、相互運用のレベルにもよるが、多大な予算も必要となるだろうし一朝一夕でできるとはとても思えない。
また、アプリ内課金や広告といった財政源となっているサービスの見直しについても難航が予想される。指定された各社はどのように対応していくのだろうか。
なお、ゲートキーパーの要件、義務などについては欧州委員会ウェブサイト内の「Questions and Answers」ページにまとまった記載がある。
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