■アニメ業界の働き方改革は「ファイル共有」から始まった!?
前編に引き続き、アニメスタジオ「TRIGGER」の取締役・舛本和也さんをお迎えして2023年2月に生配信したインタビューを再構成してお届けします。
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まつもと では、2つ目のコーナーにいきたいと思います。昨今、アニメの制作工程は変化していますし、これからも変化が必要であるという状況にあります。
舛本さんはアニメの制作進行を目指す人向けの本を星海社さんから出版されていますし、同じテーマで同人誌も精力的に発表しています。
制作進行と言われて我々がイメージするのは、アニメ『SHIROBAKO』で描かれたようなスタイルですが、それが変わってきている、あるいは変わらなきゃいけない、というようなお話もこのコーナーでうかがえればと思っています。
舛本さんが『アニメを仕事に! トリガー流アニメ制作進行読本』という本を著したのは2014年です。それからだいぶ時間も経ちましたけれども……。
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舛本 本が出てから8年経ちますが、根本的にやらなきゃいけない仕事というのはあまり変わっていません。ただ、それを処理していくためのツールはすごく変わりました。1つのきっかけになったのはコロナ禍です。
急速に、色んなものがデジタル化していく流れのなかで、たとえばオンライン会議システムを使って、対面ではなく、場所を問わない状態での打ち合わせが可能になりました。どこでもできるようになった、というのは作業が軽減した大きな要因だと思います。
まつもと 最初はアレルギー反応もあったかと思います。
舛本 はい(笑)
まつもと 私は教育現場におりますが、未だにアレルギー反応がありますね。一方、色んな方にお話を聞く限り、アニメ業界はオンライン会議が当たり前になったと。
舛本 そうですね。
まつもと 素晴らしい!
舛本 あと、アニメ業界を大きく変えたのは、共有という概念です。
アニメ制作ではさまざまなものを管理するための表が必要です。5年前は基本的にExcelやWordのファイルデータが個別に存在している状態でした。そのデータをコピーしてメールで渡していたので、渡されない人は何もわからない、という課題がありました。
これを「Google ドキュメントやスプレッドシートを共有する」という方法に変えたことで、メールアドレスを登録した全員が同時に最新データを見られるという状況になりました。
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まつもと 事故も起こりにくいですよね。古いバージョンで作業してしまう人がいなくなるので。
舛本 そうです。ダイレクトな言葉でのやり取りだけではなく、各種データもオンデマンドで誰でも見られる状態になったというのは大きな改革だったなと思います。
そしてもう1つが、SlackやLINEなどのコミュニケーションツール。テキストベースで物事のやり取りをすることが生理的に嫌な方もいらっしゃいますが、コロナ禍でやらざるを得ない状況になって浸透していったというのはありますかね。
まつもと 使ってみると意外と快適で、拒絶反応があった人もなんとかなってしまいますし。
まあ当然、監督さんがどうしても大事なことを身振り手振りやその場の空気感も含めて伝えたいんだ、というときは対面で集まると聞きますが、データを右から左へ動かすのであればグループウェアで十分ですし、アニメ業界は切り分けが本当にうまくいったなと思います。
舛本 そうですね。幸か不幸か、強制的にやらざるを得ないという状況が変えた部分は大きいです。そしてもう1つ、デジタル作画によって在宅ワークが可能になったことで、アナログからデジタルに移行する方が増えました。
まつもと それは原画ですか?
舛本 原画、動画どちらもですね。もちろん業界全体ではありませんが、明らかにここ2~3年でデジタル作画の急速な浸透が起こっています。
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