「ハチタイ」の愛称で知られる鈴鹿8時間耐久ロードレース。2019年以来、3年ぶりの開催となった昨年に引き続き、今年も鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された。観衆の声出しも解禁され、熱狂の「真夏の祭典」が帰ってきた。
ワークスからプライベーターまで
8時間後のチェッカーを目指す
バイクによる二輪耐久レースの最高峰「世界耐久選手権」(EWC)の第3戦としても実施される鈴鹿8耐。昨年の優勝チーム、ホンダワークスの33号車「Team HRC」といったワークスチームに加えて、「EWC(世界耐久レース選手権)」にレギュラー参戦しているチーム、さらには鈴鹿サーキットを走り慣れたプライベーターチームまでもが混走して8時間後のチェッカーを目指すのが鈴鹿8耐の醍醐味だ。
今回大会でもう1つ注目を集めたのが、昨年に引き続き「Team HRC」のマシンを駆る高橋 巧だ。高橋は昨年の優勝により、これまでの鈴鹿8耐での通算優勝回数4回を達成した。これにより高橋はワイン・ガードナー、伊藤真一、清成龍一、中須賀克行、マイケル・ファン・デル・マークと肩を並べている。今回で優勝すれば、高橋は2005年に宇川 徹が達成した通算5回と並ぶことに。最多優勝タイ記録を狙う高橋 巧の走りにも注目が集まることになった。
連覇を狙うワークス vs EWCレギュラーチームの構図に
FIM世界耐久選手権(EWC)は、4月にル・マン24時間で開幕。6月の第2戦スパ24時間を終え、第3戦の舞台となるのが鈴鹿8耐だ。昨年、EWCで年間チャンピオンを獲得し大きな話題を集めた「F.C.C. TSR Honda France」を、EWCランキング2位に抑えて1位で鈴鹿サーキットにやってきたのが「YART Yamaha Official EWC TEAM」だった。
「YART Yamaha Official EWC TEAM」はニッコロ・カネパ、マービン・フリッツ、カレル・ハニカといった3人のライダーがマシンを駆る。また、鈴鹿を拠点にするチーム「F.C.C. TSR Honda France」もジョシュ・フック、マイク・ディ・メリオ、アラン・テシェの3人がライダーに名を連ねる。昨年、鈴鹿8耐を制したホンダのワークスチームに対して、EWCのランキング上位陣チームがどういった戦いを繰り広げるかもファンにとって大きな見どころになっている。
8月4日(金)決勝に向け予選開始
レースが本格化
乾いた路面のドライコンディションのもと、金曜日には2時間のフリー走行を実施。日曜日の決勝レースに向けたバトルがいよいよ本格化していく。
金曜日の午後、そして土曜日午前の2回に分けて20分間ずつのタイムアタック(予選)を実施。各チーム、上位2名のライダーがマークしたベストラップタイムの平均で決勝レースのグリッド順を決めていく。決勝レースを見据えて各チームがタイムアタックを敢行するなか、昨年の優勝チーム「Team HRC with Japan Post」長島哲太/高橋巧/チャビ・ビエルゲが、トップタイムとなる2分06秒458をマーク。さらに、「TOHO Racing」(清成龍一/國峰啄磨/榎戸育寛)、「SDG Honda Racing」(浦本修充/名越哲平/國井勇輝)と続いた。
なお、鈴鹿8耐は毎年、11時30分に幕を開け、19時30分にチェッカーを迎えるため、レース最終盤は各マシンがライトを点灯して走行するナイトセッションとなる。この日も決勝レースを想定して、18時30分から夜間のフリー走行時間が設けられた。
8月5日(土) 2017年以来となるトップ10トライアル!
例年、日曜日の決勝レースに向けて、土曜日午後に行なわれるのが鈴鹿8耐の特別ルール「トップ10トライアル」だ。
金曜日午後、そして土曜日午前の予選を走行した上位10チームのみが走行するスペシャルステージであり、各マシンが1台ずつサーキットを占有する状態で走り1周の速さを競うもの。8時間とは異なる、1周限定のタイムアタックにサーキットに詰めかけたギャラリーからは歓声が沸き上がる熱狂ぶりとなった。それもそのはず、トップ10トライアルは昨年、悪天候により3大会連続となる中止になっていて、実に2017年以来、4大会ぶりの実施となったからだ。
結果は#33「Team HRC with Japan Post」の長島哲太が2分05秒329をマーク。2分05秒519をマークした「YART Yamaha Official EWC TEAM」をわずかに上回り、ポールポジションを獲得して決勝レースを迎えることになった。以下、10番グリッドまで。
2番グリッド/♯7「YART Yamaha Official EWC TEAM」
3番グリッド/♯104「TOHO Racing」
4番グリッド/♯73「SDG Honda Racing」
5番グリッド/♯12「Yoshimura SERT Motul」
6番グリッド/♯17「Astemo Honda Dream SI Racing」
7番グリッド/♯76「AutoRace Ube Racing Team」
8番グリッド/♯71「Honda Dream RT SAKURAI HONDA」
9番グリッド/♯95「S-PULSE DREAM RACING -ITEC」
10番グリッド/♯1「F.C.C. TSR Honda France」
8月6日(日) 運命の決勝レースがスタート
8時間後のチェッカーを目指して、50チームがホームストレートに集結。定刻の11時30分、コースサイドからライダーがバイクに猛ダッシュしてまたがりスタートを切る、鈴鹿8耐では恒例となったル・マン式で戦いの火ぶたが切られた。
レースはポールシッターの#33「Team HRC with Japan Post」、さらに2番グリッドからスタートした#7「YART YAMAHA OFFICIAL TEAM EWC」がトップの座を巡って序盤からバトルを展開。8時間耐久レースの開始直後とはとても思えない、2台のマシンによる激しいバトルがコース上で繰り広げられた。
トップ争いのマシンがまさかの展開に
レース開始から60分が経過すると、#33「Team HRC with Japan Post」が徐々にトップの座を固めていく。追いかけたい#7「YART YAMAHA OFFICIAL TEAM EWC」だったが、マシントラブルからかまさかのスローダウン。すると、決勝レースは10番グリッドスタートながら、大きな期待が寄せられていた昨年のEWCチャンピオン#1「F.C.C. TSR Honda France」までもが、レース序盤で転倒を喫することに。
これにより、#33「Team HRC with Japan Post」はさらに盤石の状態となる。そんななか、2番手を走行してレースを盛り上げたのが鈴鹿8耐第1回大会の優勝チームでもあり、EWCにフル参戦するヨシムラの#12「Yoshimura SERT Motul」だった。#33「Team HRC with Japan Post」を先頭に、2番手を#12「Yoshimura SERT Motul」、さらに後方を走る#95「S-PULSE DREAM RACING-ITEC」、#76「Auto Race Ube Racing Team」、#104「TOHO Racing」、#73「SDG Honda Racing」が3位表彰台を懸けて走行を重ねる。
一時的な降雨も大勢に影響はなく
18時。「Team HRC with Japan Post」が1時間30分後のチェッカーに向けて周回を重ねるなか、かなり一時的だが雨が降り、これにより各チームはタイヤ交換の選択を迫られることになった。2番手を走っていた#12「Yoshimura SERT Motul」は、ピットに入りレインタイヤへ交換。すぐにコース復帰したのもつかの間、レース最終盤で転倒という不運に見舞われてしまう。
すぐ小康状態になった雨を経て、サーキットが夕闇に包まれると、各マシンがライトを点灯。ナイトセッションと呼ばれる夜間走行へと進むも、#33「Team HRC with Japan Post」は終始、危なげない走りをキープ。終わってみればポールtoウィンで昨年に続いての優勝を飾ると、2位には#104「TOHO Racing」、3位表彰台は#73「SDG Honda Racing」が獲得した。
だが、レース翌日となる8月7日(月)に実施されたレース後の車両検査において、#104「TOHO Racing」がレギュレーション違反となり失格。#73「SDG Honda Racing」が2位、#1「F.C.C. TSR Honda France」が3位に繰り上がり、Hondaが1~3位を独参することになった。
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