ディーゼル・デミオで世間を盛り上げたい! ロードスター専門店なのにデミオで レースに参戦し続けるNOPRO
個人的に長くロードスターのオーナーをしていて、それと同時にロードスターの専門店も数多く取材してきました。今回は、そんな取材を通して顔見知りとなったショップのひとつを紹介したいと思います。神奈川県の葉山にある「ノガミプロジェクト」、通称「NOPRO」です。
ロードスター専門店なのにデミオでスーパー耐久に参戦
神奈川県三浦半島の葉山町にあるロードスターの専門店が「ノガミプロジェクト」です。「NOPRO」をブランド名としているため、そちらの名前で知っている人もいるかもしれません。1998年にオープンして、今年で25年目を迎えた古株のショップのひとつです。
昔から神奈川県の三浦にお店を構えていましたが、コロナ禍直前の2019年秋に現在の場所に移転。新しい店舗は、横浜横須賀道路の逗子ICから逗葉新道を経て料金所を出て、5分もかからない場所にあります。旧逗葉新道沿いですが、高速道路から行くと右側にあり、ちょっと見つけにくいので、初めて行くときは注意が必要です。
そんな「NOPRO(ノガミプロジェクト)」ですが、ここのところ熱心に行なっているのがレース活動です。「スーパー耐久シリーズ」に参戦しており、今年で12年目。5月に開催された富士スピードウェイでの24時間レースでクラス優勝を果たすなど、大きな存在感を放つ存在となっています。ただし、ユニークなのはロードスター専門店でありながらも、レースにはデミオで参戦していること。ショップのプロモーションという意味で言えば、ロードスターで参戦するのがベスト。なのに、なぜデミオで参戦するのでしょうか?
「レース参戦は2011年の震災がきっかけ。当時は日本だけでなく自分たちチューニング業界もみんなが暗かった。それを盛り上げたいと思ったのが理由です。当初はNDロードスターでS耐をやるつもりでした。でも、最初はほかのチームの手伝いから始まっていて、そこがNDロードスターで参戦していたから、そこと競争してもしかたないと。そのため、デミオにしました」とNOPRO(ノガミプロジェクト)の代表である野上敏彦氏は説明します。
ショップの宣伝というよりも、レースで世間を盛り上げたいという気持ちが先だったのです。また、デミオでも選んだのはディーゼル・エンジン車でした。これも話題を集めることが理由だったとか。そして参戦2年目には初優勝を飾り、トップを争うチームにまで成長したというわけです。
ルマンに参戦していたマツダスピードの出身
個人的には、NOPRO(ノガミプロジェクト)がレースで活躍するのは、その代表者である野上氏のバックボーンに理由があると思っています。
野上氏は1980年代の若いころに、ルマン24時間レースに参戦していたマツダスピードに在籍していたのです。そこでメカニックから事務方など幅広い仕事をしていました。そして、マツダがルマンで優勝した1991年に独立。その後は、東京科学芸術専門学校で教務部長(兼任)レーシングドライバーとして、学生を率いて全日本GT選手権に参戦します。現在のSUPER GTの前身にあたるカテゴリーです。そこでレーシングマシンとして使っていたのがRX-7(FC)やNA型ロードスターでした。
つまり、NOPRO(ノガミプロジェクト)の代表である野上氏は、もともとレース畑でキャリアをスタートした人物だったのです。その後は専門学校でレースを現場に人材育成を行ない、1998年から自身のショップを立ち上げました。レース畑からチューニング業界へやってきて、その途中からロードスターに関わっています。入口は、ロードスターではなく、レースだったのです。ですからレースに戻るのに際して、ロードスターにこだわらなかったのも、そうしたバックボーンを持っていたからと言えるでしょう。
得意とするのはNCロードスターのチューニング
レースばかりの話が続きましたが、NOPRO(ノガミプロジェクト)の本業は、当然ロードスターです。中でも得意とするのは2005年に発売となったNC型ロードスターです。
「NCは新発売されたときから、いろいろとトライしています。純正のコンピューターの頭がすごく良いので、2.3Lや2.5Lのエンジンに乗せ換えても、インジェクターさえやれば問題なく走ることができました。最近は、純正コンピューターを書き換えることもできるようになったので、常用域は純正に任せて、高回転域だけを書き換えるようにしています」と野上氏。
NC型ロードスターに関しては、エアロに始まり足回りなどの一般的なチューニングだけでなく、エンジン載せ替えというメニューまで用意されています。エンジンの載せ替えとは、NC型ロードスターの2リッターエンジンを、アテンザなどに積まれていた2.3Lや2.5Lに替えるというもの。同じマツダの純正エンジンを使うため、高い信頼性をキープしたまま、確実にパワーとトルクを得ることができるとか。予算は130~200万円で、実際には150万円前後になることが多いそうです。
「ディーラーに満足できない方は、ぜひとも来店ください。メンテナンスから、レストア、チューニングまで幅広く対応します」と野上氏。特にNC型ロードスターのオーナーさんは、チェックして欲しいショップです。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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