筆者はスマホだけでなく乗り物系全般も担当しているので、次の記事ネタとして、トヨタのサイトを見ながら何にするかな~と悩んでいた。すると、クルマラインナップのページに「ランキング」なるものを発見した。
見てみると「総合」「ボディタイプ」「年代別:男性」「年代別:女性」とかなり細かくわかれている。今回はこのランキングから、最近のクルマ選びや市場の傾向を考察する。
ただ、このランキングには電気自動車は含まれていないし、トヨタ販売店をベースにしたランキングなので当然ながらトヨタ車しかないし、軽自動車もない。とはいえ、自動車媒体などでよく見る「欲しいクルマランキング」もほぼトヨタ車で埋まるので、世間から大きく外れているわけでもないというのが前提だ。
この記事を読んでおけばさらに楽しめる
6月にトヨタが発表・発売したミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」についてはこちらの記事で詳細を紹介しています。
■安いクルマか高いクルマかの二極化
まず、総合から見てみよう。1位がアルファード、2位がヴェルファイアという、いわゆるアルヴェルと呼ばれる兄弟車がワンツーフィニッシュだ。6月に発表&発売されたばかりだし、人気のミニバンなので納得の結果だといえる。しかし、価格はアルファードが540~872万円、ヴェルファイアが655~892万円と、どちらも最上位モデルは900万近い高級車。さらに初期発注分以降の納期は不明という。にもかかわらず、この人気である。
次に3位以降は……ヤリス、シエンタ、アクアといわゆる庶民的なクルマが続く。価格はヤリスが147~254万8000円、シエンタが195~310万8000円、アクアが199万7000円~259万8000円。アルヴェルの半額以下である。意外にもカローラやプリウスといった街中でよく見かけるモデルや、世界的人気のSUVも入っていない(5位以下に入っているのかもしれないが)。
昔と比べてクルマも値上がっているし、レンタカーやカーシェア、サブスクもあるから、クルマを購入する人が減っているのは間違いないのかもしれないが、この両極端に驚いた。ミニバンだってノアやヴォクシーといったミドルクラスもあるのだが、売れているのはフラッグシップのアルヴェル(新型が出たばかりというのもある)である。
クルマに乗るならたくさん人が乗れて、さらに快適で、荷物が載る、いわゆる全部入りがいい! という層と、近所の買い物などで使う程度だから、安ければいい! という層がメインで、そこそこの性能でそこそこの値段というクルマは選ばれなくなっているのだ。ハイエンドが売れなくなって、ミドルクラスが中心になっているスマホ業界とはちょっと違う傾向である。
■男女の年代別でハッキリ出たクルマ格差
次に男女の年代別を見ると、さらに面白い結果になっている。
まず男性20代は1位からライズ、ヴォクシー、ハリアー、カローラ、プリウス。比較的安価なクルマがランキングに入る。若い世代はお金がないので納得だ。
だが、30代以降になると……
・男性30代:1位アルファード、2位ヴェルファイア、3位ヴォクシー、4位シエンタ、5位ノア
・男性40代:1位アルファード、2位ヴェルファイア、3位ヴォクシー、4位シエンタ、5位ノア
・男性50代:1位アルファード、2位ヴェルファイア、3位シエンタ、4位ノア、5位ヤリス
・男性60代以上:1位アルファード、2位ヤリス、3位シエンタ、4位ルーミー、5位アクア
なんと30代と40代はまったく同じ! コピペしたのかと思うほど同じなのだ。そしてアルファードは30代以降全年代で1位。ただ、面白いことに50代と60代になるとコンパクトカーがランクインしてくる。子育ても終わり、家族みんなで出かける機会もなくなったので、コンパクトカーで十分と選んでいるのだろう。
30代以降になると会社でそこそこの地位になって収入もアップし、家族も増えてくる人が多い。そんなとき、大人数で乗れるミニバンが選ばれるのはごく自然なこと。家族と、もしくは友達数人と長距離移動するなら、乗り心地がいいクルマを選びたい。しかも、クルマは高い買い物なのであとで後悔したくない。だったら、ちょっと高いけど良いクルマにしよう、と選ばれるのがアルヴェルの2車種ということだ。
スライドドアや3列シートなどで利便性も居住性もいいので、独身だったとしても車中泊したりキャンプに行ったりと趣味のクルマとしても使える汎用性の高さが選ばれる理由だろう。スポーツカーやコンパクトカー、SUVにはない魅力だ。
ちなみに、ミニバンは世界中のメーカーが出しているが、ここまでミニバンが選ばれるのは日本だけらしい。海外出張のたびに現地の自動車を観察しているが、たしかにミニバンはほとんど見かけない。ただ、要人の送迎などで使われているのは見かける(メルセデスのVクラスとか)。
次に女性年代別を見てみよう。まずは20代から。1位からライズ、アルファード、ヤリス、ヤリスクロス、ルーミーとなっている。若い世代にはやはりSUVが人気だ。ただ、2位にアルファードが入っているのが興味深い。ルーミーが入っているのは可愛らしいデザインだからだろうか。
こちらでも30代以降をまとめてチェックする。
・女性30代:1位アルファード、2位シエンタ、3位ヴェルファイア、4位ルーミー、5位ヴォクシー
・女性40代:1位アルファード、2位シエンタ、3位ルーミー、4位ヴェルファイア、5位ヤリス
・女性50代:1位ヤリス、2位アルファード、3位シエンタ、4位ルーミー、5位アクア
・女性60代以上:1位ヤリス、2位ルーミー、3位アクア、4位シエンタ、5位パッソ
男性とまったく違う驚きの結果に! そして全年代でランクインしている、ルーミーとシエンタの強さ。そして年代があがるにつれてコンパクトカーが増えている。ハイブリッドカーもプリウスではなくアクアが選ばれている。たしかに女性は「乗るならミニバンかSUV、自分が運転するならコンパクトカー」という人が多いように思う(スピーディー調べ)。
アルヴェルの2車種もランクインしているが、男性ほどの高級ミニバン信仰はなさそうだ。シエンタが全年代で入っていることからもわかるとおり、ミニバンは乗りたいけど値段は安い方がいいという傾向が見てとれる。また、シエンタのデザインが3代目になって可愛らしくなったのも要因のひとつと言える。
■【まとめ】スポーツカーとセダンの凋落
ミニバン、SUVが支配する市場
以上、トヨタの販売ランキングから自動車選びの傾向がわかっただろう。現在、トヨタは一番スポーツカーを作っているメーカーなのに1台も入っていないし、セダンも同様。これは今に始まったことはではないが、80年代後半からのスポーツカーとセダン人気を見てきただけに、スポーツカー大好きオジサンとしては悲しくなってしまった。
男性はミニバン、女性はコンパクトカーに人気が集中しているが、総合ではやっぱりミニバンが強かった。
今回はトヨタのランキングから考察したが、他メーカーでも似たような結果になっただろう。ホンダはミニバンと軽自動車ばかり、マツダはSUVばかりになっているはずだ。NSXやロードスターが売れているとは聞いたことがないし、日産だってGT-RやフェアレディZはマニアだけが買うものだ。
ランボルギーニやマクラーレン、ポルシェなどの発表会に出席すると、必ず「日本は重要なマーケット」と言われる。世界的にも高級車が売れる市場らしい。だが、日本では毎日のように貧しくなっているという報道が出る。持っている人は持っているし、持ってない人は持っていないという二極化が進んでいるのは間違いなく、だからこそ今回のアルヴェルが売れている件に繋がるのだ。
ある意味、クルマの市場動向は日本の景気をそのまま表している。メーカーだって売れない商品を作っても仕方ないのでミニバンやSUVばかりになっていく。今後、日本の景気が変わっていけばラインナップも変わるとは思うが、SUVに関しては世界的に売れているのでこれからも人気は不動だろう。
願わくは、スポーツカー人気が復活しますように。お願いします、モリゾー(豊田章男会長)さん!
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります