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パーツを探すのもデジタル化!4年ぶり開催のマウスコンピューター「親子パソコン組み立て教室」レポ

2023年08月09日 10時00分更新

文● ジサトラハッチ 編集●ASCII

工場はデジタルピックを採用、ヒンジの開閉機など独自の試験も導入

 マウスコンピューターは7月29日、長野県・飯山にて「親子パソコン組み立て教室」を開催した。「親子パソコン組み立て教室」は同社の毎年恒例のイベントだったが、新型コロナ感染症の影響もあり、4年ぶりの開催となった。

この日の飯山は36度と、各地と同じくからっと晴れた猛暑日だった

 イベント取材前には、工場内も見学させて頂いた。飯山工場の生産の流れは、「受入検査」→「部材保管」→「ピッキング」→「組立」→「機能検査」→「負荷試験」→「梱包」の順に行われる。

 機材の搬入の際は、型番と数量の確認を行なうのが一般的だが、マウスコンピューターでは開発から発行される部品のバージョンも確認する。なぜそのようなことをするかと言うと、部品の組み合わせによって不具合が発生する可能性があるからとのこと。

搬入口

 また、仕様書で一致していないものや、確認が必要なものには、黄色いラップを巻いている。使用できないものは、赤ラップを巻いて、使ってはいけないものが一目で分かるようにするためとのこと。

実際に倉庫では、赤ラップが巻かれた搬入物があった

 部品には、1点1点シリアルナンバーが添付されているので、それを読み込みデータベース化している。もしシリアルが付いていないものがあったら、独自のシリアルを添付している。また、部品にはいつ組み立てて出荷するものかが分かるように色カードを添付している。

搬入口にて部品ごとにシリアルナンバーを貼っていく

曜日ごとに色カードが分かれていて、いつ出荷するものかが分かるようになっている

 同社では、「デジタルピック」というシステムにより、登録したシリアルのバーコードを読み込むことで、必要な部品がどこにあるのか分かるようになっているという。

デジタルピックで読み取ると、必要な部品がどこにあるかが、点灯して分かるようになっている

 部品のピッキングが終わると、次にPCの組み立て作業になる。組み立てを行なう第二工場では、最初に組み立てるPCの部品が正しいかの確認を行なう。各部品のシリアルのバーコードを全て読み込み、間違ったものがあると、エラーが表示される。そのようにデジタル管理され、システマチックにPCの組み立てが行なわていた。

PCの組み立てや負荷試験などを行なう第二工場

正しい部品をピックアップしてきたか確認する場所。シリアルナンバーのバーコードを読み取って、部品が全て正しいかの確認を行なう

実際に組み立てを行なう場所では、シリアルナンバーを読み込むことで、PCの作り方のマニュアルが表示される

当日は稼働していなかったが、BIOSを書き込んでいる場所

次にOSのインストールや、インターフェースの動作確認などを行なう

負荷試験を実施し、悪い部品がないかを確認する。負荷試験を突破しなかった場合は、部品の交換が行われる

負荷試験がクリアになったら、最終的に各種シールを貼っていく

シールを貼り終わったら、クリーニングを行なって梱包する

梱包する箱にもID表記がされていて、シリアルを読み込むことで、どの箱を使えば良いかが分かるようになっている

 同社の搬入からPCの組み立て、梱包までの流れは前述したとおりだが、製品によって必要な機能試験の機器も見せて貰えた。非常に珍しかったのは、同社が独自で開発したノートPCのヒンジ部分の開閉試験機。ヒンジ部分はメーカー側でも耐久テストはしているが、それでも弱いので、開閉を繰り返し約2万回ほど行って、強度をチェックしているという。

ヒンジの開閉試験機

 また、PCの周辺温度を-30度から+80度まで変化させる恒温槽では、モニターのタッチパネルの結露の確認や、冬の温度が低い時でも電源がしっかり入るかなどの確認をしているという。

恒温槽

 加えて、Dolby Atmosの試験や水冷などのファンの試験をする防音室では、照明の色を変えてAdobeの色の確認もできるようにしているとのこと。

防音室

防音室の証明は色温度を変更でき、モニターの色のチェックができるようになっていた

無線LANの取り付けに悪戦苦闘ながら、PC組み立てを楽しんでいた

 親子パソコン組み立て教室は、マウスコンピューター 代表取締役社長の小松永門氏、飯山市市長 江沢岸生氏の挨拶から始まった。本イベントでは、実際に飯山工場で働く社員の方が、学校のように校長先生、先生となって参加者の親子の方にパソコンを組み立てるお手伝いをする形になっている。

 本イベントは午前の部と、午後の部に分かれて実施され、合計31組が参加。午前の部と午後の部を合わせた全体で、ノートPCとデスクトップPCの割合がほぼ半々だったという。

マウスコンピューター 代表取締役社長 小松永門氏

飯山市市長 江沢岸生氏

親子パソコン組み立て教室の説明を行なった、本イベントの校長を務めた高橋和樹氏

記念撮影も行われた

 その後、記念撮影があり、緑と青の2組に分かれて部品集め、部品の説明が行なわれた。部品集めは、従来紙の仕様書を使って各部品が収納されている場所のID番号を探っていたが、同社が子供向けに展開していたタブレットPC「mouse E10」を活用し、前述した工場のデジタルピックのような形で探せる仕組みに変わっていた。

台車の上に、子供が部品を入れられるくらいの高さまで折りたたみコンテナを積み重ね、そこにmouse E10を取り付け、移動しながら部品をラクに集められるようにしていた

部品のシリアルのバーコードを読み取ることで、部品の収納場所がタブレット側に表示されるようになっているようだった

先生のフォローを受けながら、子供たちは工場内を実際に歩き回って、楽しそうに部品集めを行なっていた

 実際にパソコンを組み立てる前には、CPUやメモリーといった各部品の説明が行なわれ、主要な部品の取り付け方の練習も行なわれ、万全の体制が取られていた。

部品のどの部分を触ってはいけないかなどが、マニュアルと実物を使って事前に確認

実際に組み立てる前に、各部品の取り付けを体験できるようになっていた

 実際のPCの組み立てでは、一生懸命お子さんが先生の説明を聞き、慣れない手付きでPCパーツを組み立て、親御さんが適宜手伝うといった、親子二人三脚で楽しんでいた。一番苦戦していたのは、最近ではデスクトップPCでも標準搭載が多くなった無線LANのアンテナ接続。小さい六角ナットをWi-Fiカードの基板に取り付けるのは、ややコツが必要なので、その部分に悪戦苦闘する子が多くいた。

無線LANのアンテナ接続が一番の難所のようだった

 4年前にゲーミングPCを選んでいる人は、親御さんが欲しい高性能なPCが安く買えるということで、タワー型のゲーミングPCが多く見受けられたが、今回参加した人の多くはお子さん用で、置くスペースを考えてという理由で、ハンドル付きの小型ケースのゲーミングPCを選んでいる人も何人か見られた。

今回はタワー型ばかりではなく、小型ケースのG-Tuneを選んでいる人も多くいた

 ある親子は、PC組み立てを通じてモノ作りの楽しさを体験して貰いたい、という理由であえて部品の多い構成にしたという。普段は飽き性の息子さんが、無線LANの取り付けに何度もトライしていたのは意外で、楽しんでくれてよかったと語ってくれた。

中には水冷クーラーを選んでいる人も。マザーボードを完全にPCケースに取り付けた後では、取り付け辛い無線LANカードは、マザーボードの下に緩衝材を入れて傷がつかないようにしながら作業していた

 遊びたい盛りの小学生のお子さんを対象としているため、ゲーミングPCが多いかと思ったが、一般的なノートPCを組み立てている子もいたので、一緒に参加していたお母さんに話を聞いてみると、お子さんがPCを欲しがったから参加したが、ゲーミングPCは遊んでしまうため全力で阻止した、との意見も。

 また、とあるお母さんは、飯山市の小学校でこの催しものを知り、家族で皆で使うPCが古くなったので、新しいPCが欲しいという理由もあり参加。PCはdGPUは必要なかったが、第12世代のCore i7搭載機が欲しかったという理由で、15.6型の「mouse K5」を選択。dGPUは「GeForce MX550」とゲーム用ではないが、今回参加したお子さんのお兄さんがプレイしたがっている『マインクラフト』くらいは動くので、楽しみに待ってくれていると応えてくれた。

ノートPCはmouse K5を選んでいる人が何人かいた

 さらに、今まではNintendo Switch版の『マインクラフト』をプレイしていたが、JAVA版の高い拡張性で遊びたいという理由で、ゲーミングPCを選択している方もいた。4年前に取材した際は、プレイしたいゲームは『フォートナイト』か『マインクラフト』という回答が多かったが、今回お話しをお聞きした限りでは、『マインクラフト』という回答が続き、未だに根強い人気であることが分かった。

 ちなみに、同社は今年で創業30周年を迎えるため、この日の梱包では段ボールを止めるテープも30周年仕様に。そして、30周年のロゴ入りのシールを貼って完成となっていた。シールは2枚貰えるが、記念に1枚は貼らずに持って帰る子もいたようだ。

 この30周年記念のテープとロゴシールは、一般実施に先駆けて使用されたもので、一般販売分への対応は近日実装される予定とのこと。

梱包に使うテープとシールは30周年仕様になっていた

 参加される理由は十人十色だったが、とにかくお子さんは真剣にPC作りを楽しんでいた。また、参加者の中にとても元気な女の子がいて、工場の見る物全てに関心を持ち、PCを組み立てられたことが、とてもうれしいと、大はしゃぎしていたのも印象的だった。4年前以前と同じく、来年以降の実施にも期待したい。

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