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売上1兆円規模も視野に入る大塚商会、しかしそれはあくまで通過点

2023年07月31日 08時00分更新

100年企業に向けて

 その一方で、大塚社長がメディアやアナリストを対象に、初めて使った言葉が、「100年企業」であった。2022年8月に開催した創業60周年記念の感謝会でも「100年企業」という言葉を使っていたが、今回の会見では、初めて資料を用いて、この言葉を説明した。

大塚商会のひとこと

 大塚社長は、「中・長期経営方針を実行に移し、安定的かつ持続的に成長を続ける会社として『100年企業』を目指す」と宣言。「100年企業になれるように、その礎をしっかりと築き、次に引き継げる環境を作りたい。お客様との長期的な関係創りこそ、100年企業への道になる。どんな環境変化にも耐えうる長期持続的なビジネスモデルを構築すべく、お客様との新たな関係創りを目指す」と述べた。

 ここで示した顧客との「新たな関係創り」とは、「常にお客様とつながっている世界を創ること」だという。

大塚商会のひとこと

 大塚商会の強みは、現場とつながっている営業力だ。だが、大塚社長には過去に苦い経験がある。

 2007年7月、製紙の原材料価格の値上げを背景に、コピー用紙の値上げに踏み切らざるを得ない事態が発生。大塚商会では、お客様に直接訪問し、説明を行うことにした。当時の顧客数は16万社。5000人以上の営業、サポート部門の担当者が総出し、パトカーよりも台数が多いと言われる営業車の機動力を発揮し、訪問活動を積極化した。だが、その結果に大塚商会社内には激震が走った。全勢力によって、直接訪問ができたのは約5万社。残りの約11万社には結果として、ハガキで通知するという結果になったのだ。つまり、直接訪問できたのは3分の1に留まり、現場とつながっているはずの営業力に課題があることが浮き彫りとなった。同時に、「うちはリアルの現場部隊があるから、なにがあっても大丈夫」という自信も一気に崩れ落ちた。

 このとき、大塚社長は、「できると思っていたことができていない。根幹といえる部分に課題があった。社長に就任してから、もっとショックだった出来事だった」と振り返る。

 3分の2の顧客に直接訪問できなかったことは、接点が薄い顧客が3分の2いるということでもある。そうした顧客は大塚商会と一度取引をしても、継続的な取引にはつながりにくい。実際にデータを収集してみると、取引を開始した顧客の約40%が3年以内に「ドロップ」していることがわかった。

 そこで、大塚商会の存在意義を改めて見直し、それを社内に徹底する一方、リアルだけの接点づくりに留まらず、Webなどのデジタルの活用、サポートを行うセンターの活用など、多面的な接点づくりに乗り出し、顧客との関係創りの改善に取り組んできた。

 今回の会見でも、「お客様との関係が薄くなってきたと感じる」と大塚社長は語り、「リアル、Web、センターの三位一体で連携し、お客様フロントを整備し、お客様への対応を強化することで、新たな関係創りにつなげたい」とする。接点を強くする取り組みは、2007年の出来事から15年以上を経過したいまも、大塚商会にとっては大きな課題であり、100年企業の礎づくりにおいて、最重点課題のひとつとなっている。

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