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コロナ禍を経て移動活性化、次世代に向かうGoogleマップ

【独占取材】Googleマップは「東京ファースト」な地図作りだった(西田宗千佳)

屋外の天候の移り変わりと屋内ビューを組み合わせたイマーシブ ビューの表現

「次の世代」のためにイマーシブ ビューを整備

 この機能は数ヵ月以内に、東京を含む世界の主要都市で展開がスタートする。

 非常に派手で見栄えがする機能ではあるが、「ちょっと未来的すぎる」印象もある。人々は現状、まだ2Dの地図に慣れている。イマーシブ ビューのような3D地図に慣れていくのはこれからだろう。グーグルはかなりの先行投資として、イマーシブ ビューを軸にした地図開発を進めていることになる。それはなぜだろうか?

 「すべての地域データが正確にわかるようになること、これがまず優先であるのは間違いなく、現在進行形のものです。同時に私たちは、未来へのビジョンも持ちたいと考えています。私には子供がいますが、彼らは紙の地図で育ったわけではない。私たちは紙の地図で育ったし、画面上の地図の読み方も知っています。でも、新しい世代は紙の地図では育っていない。もっと没入感のある視覚的な体験をして育つはずで、こちらの方が理解しやすくなるでしょう。彼らは非常に素早く情報を探し、視覚的な方法で情報を消費したいと考えています。イマーシブ ビューのようなユースケースを使えば、より理解しやすくなるはずです」(ダニエルズ氏)

 「今はいくつかの都市やランドマークから始めています。しかし、考えてみてください。時間の経過とともに、私たちの体験はますます視覚的なものになり、没入的なものになるでしょう。誰もが世界をありのままに理解することが容易になる。地図を『読む』必要もなくなります。このビルから歩いて出て行くとして、私にはどちらに行けばいいのか、すぐに理解するのは難しいです。でも、イマーシブ ビューなら簡単です。私たちは、基盤となる地図データを常に新鮮に保つことだけに集中しているわけではないんです。AIやコンピューター・ビジョンを活かし、人々が世界を探索するのをより簡単に、より豊かに、より視覚的にするためのイノベーションも試みています」(ダニエルズ氏)

 そう考えると、イマーシブ ビューはGoogleマップにとって、もっと一般的な機能になっていくのだろうか? 現状はデータ整備の問題があって都市部からの展開となっているが、今後広がっていく可能性はあるのだろうか? すなわち、イマーシブ ビューは将来的に、「Googleマップにとって基本的なものになるのか?」という疑問だ。

 「ベースマップのようにして、地図をより没入的な体験にしたいと考えています。時間が経てば経つほど、あらゆる場所で地図はよりイマーシブなものになっていくでしょう」(ダニエルズ氏)

 時期はさすがに示すのが難しいようだが、イマーシブ ビューについては、ストリートビューがそうであるように、時間をかけてあらゆるところで使えるサービスにしていきたい……と考えているのだろう。

 それは確かに、楽しみになってくる世界だ。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

 

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