【ベンチ】史上最速M2 Ultra搭載 約100万円「Mac Studio」ポテンシャルは従来テストでは測りきれない
一般アプリによるテストでは「メモリ容量の影響」も大きい
一般的なアプリによるテストでは、Finderによるフォルダーコピー、XIPファイルの展開、iMovie、Finalcut Proそれぞれによる動画のエンコード出力、XcodeにるiOSアプリのプロジェクトのビルドに要する時間を、各々ストップウォッチで計測して比較している。
したがってこれまでのグラフとは異なり、数値は秒を表し、バーが短いほど高速ということになる。結果を確認していこう。
●Finderによるフォルダーコピー
Finderによるフォルダーコピーは、一般的なフォルダーではなく、サイズが3GB近くで、項目数が約2万4000のiMovie(10.3.2)アプリのバンドルを、「フォルダー」としてFinder上でコピーするテスト。CPUの処理能力とストレージのランダムアクセス性能を測るテストとなる。
結果は、チップやそれを搭載する機種のクラスの順番とはまったく逆のものとなった。あえて言えば、シングルコアによるCPU性能との関連が強いと考えられ、ストレージの特性やその時点での状態も影響しているだろう。
●XIPファイルの展開
Xcode(バージョン12.2)インストール用のXIP圧縮ファイル(11.44GB)を、アーカイブユーティリティを使ってアプリバンドルとして展開する時間を計測する。動作としては、圧縮ファイルのシーケンシャルな読み出しと、そのデータを伸張処理、展開したフォルダー/ファイルのランダムな書き込みを組み合わせたものとなる。
結果は、理由を明確に説明するのが困難なほど、近接したものとなった。チップや機種による違いはほとんど認められない、と言える。
●iMovieによるムービーファイル出力
iMovieを使って、長さが約50秒の4Kビデオ(ファイルサイズは約125MB)を、540pに再エンコードして出力するのに要する時間を計測する。
結果は、M2 ProとM1 Maxが同等、M1 UltraとM2 Ultraもほぼ同等で、前者よりも40%以上速いというものとなった。実装メモリ容量にそれぞれ32GB、64GB、128GB、128GBという違いがあるが、32GBと64GBで結果に違いがないことから、この程度のビデオ解像度では、メモリ容量の影響はないと考えられる。
UltraはMaxを2つ接続したチップだから、エンコードに使用するメディアエンジンも、ProやMaxの2倍あることになる。これは単純にその違いの現れだと考えたくなるような結果だ。
●Final Cut Proによるムービーファイル出力
Final Cut Proによるテストは、25個の8Kビデオクリップをコンポーズしながら約43秒の4Kビデオファイルとして出力するもの。このテストは、いちどに処理するデータ量が多いため、実装メモリ容量が少ないと極端に遅くなることが分かっている。
結果は、M2 Proがもっとも遅く、M1 MaxとM2 Ultraがほどんど同じでM2 Proより6割以上速く、M2 UltraはM2 Proの2.5倍ほど速いというもの。実装メモリ容量をもう一度確認すると、M2 Proが32GB、M1 MaxとM1 Ultraは、それぞれ64GB、128GB、そしてM2 Ultraが128GBとなっている。iMovieでは同等だったM2 ProとM1 Maxで、これだけの差がついた理由は実装メモリの違いだろう。このテストでは、32GBでも、メモリ容量がネックになるのだ。
一方、iMovieでは差が付いていたM1 MaxとM1 Ultraが、ほとんど同じ速度となっているので、両者のメモリ容量が影響しているとは考えられない。つまりこのテストの条件では、メモリは64GBあれば十分ということになる。
M1 MaxとM1 Ultraがほぼ同じになった理由は釈然としないが、M1 Ultraと同じ容量のメモリを実装するM2 Ultraの方が50%以上速くなっているのは注目に値する。テスト時のFinal Cut Proのバージョンには1年分ほどの開きがあるので、最適化は進んでいると考えられるが、ソフトウェアの違いだけでここまで速くなるとは考えにくい。少なくとも高解像度のビデオをエンコードする処理に関しては、M2 UltraはM1 Ultraよりもかなり速くなっていると言える。
●XcodeによるiOSアプリのビルド
Xcodeによって、アップルが提供しているiOSアプリのサンプルプロジェクト「SwiftShot」をビルドするのに要する時間を計測する。
Xcodeによるアプリのビルド速度は、Xcodeのバージョンが進むほど向上する傾向が認められる。M1 UltraとM2 Ultraの違いは、それによるものと考えられる。
OSもXcodeも同じバージョンのM2 ProとM2 Ultraがほぼ同等ということからは、アプリ開発作業自体は、M2 Proでも十分で、M2 Ultraのポテンシャルは発揮しにくいと言えるだろう。ただし、Mac上で動かす他のデバイスのシミュレーターのことも考えると、すでにM2チップを搭載したiPadも登場していることから、開発用マシンのMacのパフォーマンスには、余裕があるに越したことはないと言える。
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