インターネットイニシアティブ(IIJ)は、2023年7月3日に運用を開始した「白井データセンターキャンパス」(白井DCC)の2期棟をメディアに公開した。1期棟で実績を積んだ外気冷却を高度化し、AIを前提とした次世代データセンターへの架け橋となる「クラウド型データセンターの最終形」を目指したという。
1100ラックの規模へ 1期棟の外気冷却も踏襲
白井DCCは首都圏データセンターの集約地の1つである印西地区の一角に位置しており、住所としては千葉県白井市になる。印西地区は、埼玉県東部から千葉県北部にかかる下総台地の上にあり、災害リスクが低いという特徴がある。ハザードマップ上の揺れやすさは5段階中1~2で、液状化や土砂災害、浸水/内水氾濫も対象外。都心(大手町)から32kmと近いのもメリットだ。
2019年5月、IIJは約700ラックの規模となる1期棟をこの白井の地にオープンさせている。今回公開されたのは2022年5月から増設が進められてきた2期棟になる。約4万㎡の敷地のうち1/5となる約8000㎡を占め、終局時には1100ラック以上の規模となる予定。見学時も、特別高圧受電設備や燃料備蓄タンクの増設の作業が行なわれていた。
1期棟に引き続き、2期棟も直接外気冷却を採用。取り入れた外気を空調機械室に取り入れ、壁吹き出し空調でサーバールームに取り込み、IT機器を冷却している。熱された排気は天井のホットアイルから外に排出し、20kVAクラスの発熱にも対応する(フロア標準は6kVA)。
整流機構、壁吹き出しの空調、IT機器の排気スペースを区切るホットアイルキャッピングなどの採用で、空調機の送風電力も約1/3まで削減し、実測値としてのPUEで1.3までを実現している。ファンを高速に回して床から冷風を吹き上げる従来の空調に比べ、自然整流を前提とした壁吹き出しの開口部が広く、給気ファンの回転数も低いので、かなり静かなのが印象的だ。ただ、外気が高温の夏場はチラーで冷やす必要があるので、夏場の省エネは難しくなっているのも実態だという。非常用発電機の起動までサーバーへの冷却を停止しないよう、冷水循環用のポンプや送風用ファンはUPS電源によって保護されている。
電気設備に関しては、変電所から特別高圧受電設備まで2系統でループ受電してしており、最大50MWの受電容量を確保。IT機器やUPS、空調設備、照明、各種設備に対して冗長経路で給電している。3相4線式のUPSからの給電は配電ロスの多いケーブルではなく、バスダクトを採用しており、単相230VでIT機器に給電(100Vの提供も可能)。これにより変圧器が不要になり、スペースと送電ロスを削減できているという。
さらにテスラ製のリチウムイオン蓄電池を導入し、昼夜で変動の大きい空調電力でのピークシフト/ピークカットを進めている。オフピーク時の割安料金で電気を購入し、ピーク時に利用することで電力利用を効率化。電力料金の基準になるピーク時の電力利用を抑えることで、デマンド料金の低減も実現。2020年は受電時で10.8%をピークカットした実績を持つという。
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