東京都市大学は7月18日、都市生活学部 都市生活学科 高柳英明教授が、人流における歩行者の挙動把握が80%以上となる技術を開発したことを発表した。
本技術は、カメラ動画像と三次元レーザー計測を併用したもので、歩行者1人あたりの専有面積に応じて6段階に分けられる指針「サービス水準」を用いて把握精度を検証した。結果、既存のカメラ動画像、または三次元レーザ計測のみで把握した場合に比べ15%以上高い、80%以上の精度を可能とした。
また、これまでの技術は、混雑度合によって把握精度が安定しないという問題があったが、今回開発した技術を用いれば、どのような混雑度合であっても常に80%以上の精度で混雑状況を把握できることから、混雑状況を示す新たな指標としての活用が期待できるという。
高柳英明教授は、建築空間・都市整備コンサルティング国内最大手である日本工営・日本工営都市空間との共同研究のもと、同大学キャンパス内のアメニティー施設(世田谷キャンパス7号館1階 「nana café(ナナカフェ)」)周辺を対象空間とし、カメラ動画像と三次元レーザー計測を併用した利用者の行動把握を実施。人流の混雑密度すなわちサービス水準を適用した人流量の同定率を明示すべく、その精度を検証した。
既存のカメラ動画像、あるいは三次元レーザー計測のみの把握では、およそ65%程度の同定率であったものを、人流の混雑度合いであるサービス水準ごとに併用し、正しい把握事象数に対して以下の各同定率を得た。
・サービス水準A(1人あたり0.81平方メートル、空いている駅コンコース程度)にて81.3%
・サービス水準B(1人あたり1.21平方メートル、通常の通勤人流の混雑程度)にて85.7%
・サービス水準C(1人あたり1.62平方メートル、歩き難さを感じる通勤人流)にて84.0%
低混雑度合いにおいては、立ち止まり・滞留による長時間のオクルージョンが起こることが示唆され、単純に混雑度合いが高くなるにつれ同定率が下がるものではないという。
研究の背景と今後の展開
首都圏の土地利用の高機能化をはじめ、都市生活基盤のDX化や歩車空間のITS化といった社会要請を受け、都市空間の整備においては、単なるハード整備のみならず、質の高い空間利活用について、人流把握・解析により「事前に提案内容を評価すること」が求められつつあるという。
また、昨今の動画像カメラ・三次元レーザー計測機器などにより、歩行者行動の質的、量的把握技術が高度化し、都市情報提示技術への応用事例も多見されるが、それらの把握精度については「どれくらい確からしいデータであるのか」がいまだ明示されていないと同学は指摘する。
これらは混雑それ自体が引き起こす人垣の影による「センシング・オクルージョン」が要因であり、混雑度合いを示す群集密度のサービス水準(単位[平方メートル/人])に連関し、把握の度合い、つまり同定率(単位[%])が変化することが考えられるという。本研究は、この群集密度別に見た同定率を明示しつつ、動画像カメラと三次元レーザー計測の併用により80%以上の水準の同定率を担保する手法を明示した。
本研究の成果は、スマートシティー構想において、5Gスマートボールへの人流把握技術への展開、インバウンド増による観光地の回遊性分析と集客資源価値創造への寄与、歩車融合モビリティーの自動運転への展開、スタジアム・コンサートホールなどの大規模集客イベントの警備運営のデジタル化などにおいて利用が期待できるという。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります