スイッチやコンセントなど電材を扱うパナソニック エレクトリックワークスは2022年、インド南部の工業団地スリシティで新工場の操業を開始しました。最先端の設備をそろえ、工場全体のデータを連携させて、生産ラインをほぼ自動化したハイテク工場です。これほど大規模かつ高品質の電材工場は日本国内にもありません。エレクトリックワークスはこれまで日本のものづくりをインドに伝える(輸出する)形で工場を運営してきましたが、今後は優秀なインドのエンジニアとともに新たなものづくりのノウハウを蓄積し、日本に“逆輸入”する考えです。7月5日、同社が報道陣に公開した工場から、現地の様子をお伝えします。
南インドのフラッグシップ工場
スリシティはインド南部の商業都市チェンナイ(旧名マドラス)郊外にある100万平方km四方の広大な工業団地。インド市場全体の約35%を占める最大の市場である南インド。そこに供給する製品をつくる工場が軒を連ねます。
工業団地とはいえ周囲は南インドそのもの。赤土がむきだしの原野と青々としたマンゴー林が広がります。そこかしこで牛やらヤギが草を食んでいて、初めは「本当にここに工場が建っているのだろうか」と不思議な気持ちになりました。
しかしのどかな風景を眺めているうちに、ユニ・チャームやコベルコ、操業準備中のダイキンなど、国内メーカーの工場が次々と姿をあらわします。
そして工業団地の最先端、要するに一番端っこにあらわれるのがパナソニック。ケータイ電波が届かないほどの僻地ではありますが、敷地面積約13万平方kmの大型工場です。
スリシティ工場は2022年4月操業。パナソニック エレクトリックワークスはインド国内4拠点に7つの工場を動かしていて、中心となるのは、北インドのハリドワール工場、西インドのダマン工場、そして南インドのスリシティ工場の3施設。各工場では各地に供給する製品を日本や中国から輸入するのではなく現地で生産して販売する“地産地消”の方針をとっています。ただし港のあるダマン工場からは、海をまたいで東アフリカへの輸出も始めていて、今後はインドに輸出拠点としての役割をもたせる狙いももっています。
工場で作っているのは、現地で人気のスイッチ「ローマ(ROMA)」「ペンタ(PENTA)モジュラー」シリーズのうち、最もスタンダードな5品目。パナソニックでは2007年に地元大手のアンカー(ANCHOR)を買収して事業を始めていますが、買収前から地元で愛用されつづけているロングセラー商品です。
スリシティ工場の特徴は、生産ラインを9割方自動化して、すべてのデータをシステムで連携させたスマートファクトリーであること。生産数と稼働率がどのように推移しているのかを把握して、稼働が悪い部分があれば、原因を分析して改善につなげるサイクルが実現可能。原材料の在庫なども同じシステムに連携させて一元管理しています。
従業員数は約300人で、生産能力は年産約1億2000万個。参考までにハリドワール工場の従業員数は約5000人で、生産能力は年産4億2000万個。従業員1人あたりの生産能力で単純比較すれば、スリシティ工場はハリドワール工場の3倍強にあたります。スリシティ工場は今後さらに十数億円程度を追加投資し、2025年までに生産能力を年産約2億個へと伸ばす計画。すさまじい規模ですね。
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