週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

三苫の1ミリを生んだソニーのCMOSセンサー、車載向けシェアはすでに25%

2023年07月03日 08時00分更新

今回のひとこと

「モバイルイメージングの技術進化にはまだ余地があり、ソニーは、それを実現するための手段を数多く有している。これだけ多種多様なセンサー技術を持つ企業はほかにない。センサー技術の総合力は、ソニーの圧倒的な強みになる」

ソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長兼CEO

(ソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長兼CEO)

三苫の1ミリを生んだ、CMOSイメージセンサー

 ソニーグループのパーパスは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」である。その実現手段のひとつとして、同社では「感動空間の拡張」への取り組みをあげる。そして、感動空間の拡張を担っているのが、CMOSイメージセンサーである。

 ソニーグループの吉田憲一郎会長兼CEOは、CMOSイメージセンサーを「感動を生み出すクリエイション半導体」と定義し、「世界中の人々のクリエイションを支えるテクノロジーとして、欠かせないものである」と位置づける。

 感動空間の拡張のひとつの事例としてあげたのが、2022年秋にカタールで開催された「FIFAワールドカップカタール2022」での「三苫の1ミリ」だ。

三苫の1ミリ

 この映像を捉えたのが、ソニーのCMOSイメージセンサーを搭載したフルサイズミラーレス一眼カメラ「α1」であったことを示しながら、「一瞬を切り取るという大きな目標を持って開発したイメージセンサーが、勝敗を分けた瞬間を撮ることに貢献した」と胸を張った。

 この決定的な瞬間を捉えたことは、大きな感動を生み、サッカー日本代表のあきらめない姿勢が、強さにつながっていることを世界中に発信することになった。

 さらに、吉田会長 CEOは、「ソニーのCMOSイメージセンサーは、スマホのカメラを通じて、世界中のユーザーがクリエイターになることに貢献している」と述べ、身近なデバイスを通じて、より多くの人に、感動を生み出せる環境を提供していることを示した。そして、「この分野には、過去5年で1兆円以上を投資している。今後もクリエイションを支えるキーデバイスとして注力していく」と語った。

約9000億円の投資

 ソニーグループの十時裕樹社長COO兼CFOも、異口同音にイメージセンサー分野への投資を加速する姿勢を示す。

 2023年度までの第4次中期経営計画と同等規模となる約9000億円の投資を見込んでいるが、2024~2026年度の次期中期経営計画でも、同等規模の投資を行うことを表明。「これまでとは次元が異なる投資が必要になる」と発言している。

 イメージセンサー事業を担うソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長兼CEOは「2024年度からの投資は、長崎Fab5への追加投資と、熊本に新たに取得した土地での新工場建設の準備がメインとなる。さらに、R&Dにも継続投資し、規模は小さいが、M&Aの検討も進めていく」と語る。

 ソニーグループでは、熊本県合志市に27万平方メートルの土地取得を取得すると発表。2023年中には取得を完了する予定を明らかにしている。取得金額は非公表としたほか、工場建設時期についても、「いまは景気状況が悪いため、市場動向を見ながら、タイミングを判断したい」(ソニーセミコンダクタソリューションズの清水社長兼CEO)としている。

スマホ市場は縮小傾向だが、大判化で単価が上がる

 ソニーセミコンダクタソリューションズは、ソニーグループのI&SS(イメージング&センシング・ソリューション)分野を担う企業であり、「イメージセンサーNo.1 ポジションの強化」を基本方針に掲げている。

 事業の柱となっているのは、スマホ向けCMOSイメージセンサーであり、大判化や高性能化を軸に事業を拡大する方針を示している。

 清水社長兼CEOは、「スマホでは、カメラの差異化要素として、イメージセンサーへの期待が大きい。要求される技術水準も年々高まっており、大判化に対するニーズが高い。スマホの年間出荷台数は全世界で12億台へと減少しており、今後も数量は大きく増えることはないだろう。だが、イメージセンサーが大判化することで、単価が上昇し、売上げ上昇につながると見ている」とする。

 そして、「いまは、イメージセンサーがスマホの価値を高めることに貢献している。これができなくなったときに、イメージセセンサー事業も厳しくなるだろう。だが、10年先の時代まで、スマホメーカーが期待しているのは、イメージセンサーの進化である」とし、同社の付加価値戦略が、スマホ市場を支えることになるとの見方を示す。

 画素の進化やロジックチップの貼り合わせによる高機能化、カッパーカッパー接続による高精度化や安定した品質を実現していくほか、4Dや5Dという領域にいち早く進出することで、ソニーの技術的優位性をさらに強固なものにしていく考えだ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事