注目機能は「EyeSight」。ディスプレーはソニー製?
機能として、特に見事だなと思えたのはクラウンですね。Apple Watchにもつけていたクラウンをヘッドセットに載せてきた。VR/ARが出てきたときから、VR空間のものとAR空間のものは連続化すると言われてきたんですが、アップルはそれをクラウンにまとめてきた。ぐるっと回せばVRになり、逆に回せばARに切り替わる。それを1つのボタンというアナログな操作感で実現してしまったというのが本当に見事な設計だなと感じました。
SDKを使ってiPadでコンセプトを試すケースも出てきています。𝐑𝐔𝐁𝐄𝐍 𝐅𝐑𝐎さんは、iPad上で現実空間をスキャンすると、中世の道に変わるというデモ映像を公開しました。VisionProでそのまま実装できるのかはわかりませんが、現実世界がVRにあっという間に切り替わる、VR登場時に理想とされていた世界がまさに実現されています。
Just in case Bethesda decides to release yet another version of Skyrim for Vision Pro, I made a little volumetric concept in Unity :) pic.twitter.com/hHIOR3c1gX
— 𝐑𝐔𝐁𝐄𝐍🥽𝐅𝐑𝐎 (@Ruben_Fro) June 23, 2023
びっくりしたのは、外側に表情を見せる「EyeSight」機能。アップルのデザインチームのトップが、人間同士のコミュニケーションができないという理由から「VRはありえない」と主張していたらしく、そのための対策として「顔をつける」という噂が去年から出ていました。「何を言っているんだ?」と思っていましたが、実際に見せられると「なるほど」でした。顔をスキャンしてアバターを作り、リアルタイムに表示する。本人の顔もバイザーごしに見せる作り。本当によく考えられているなと感じました。この機能、DepthセンサーであるLiDARを搭載している「iPhone 13 Pro」といった他のアップル製品でも実現できるのではないかと思うのですが、来年あたり発表があるのかもしれません。
一方、装着してみないとわからないなと感じたのはウィンドウです。画面がキレイだとは言うものの、基調講演の映像で見せられているほど大きくは感じないんじゃないかと。あとは前面に搭載している3Dカメラ。これで撮ったという映像が感動的だという話ですが、ちょっと疑っています。というのも、左右のカメラと中央部分のDepthセンサーで録画していると思うんですが、それだけで臨場感のある映像は撮れない気がするんですよね。解像度などの情報も一切出されていないですしね……。とはいえ、3D写真は個人的に大好きなので、期待している点ではあります。
あとはバッテリーが2時間しか持たない問題です。これで2時間映画を見られるのかと。結局電源ケーブルをつけっぱなしにした状態が普通になるのかなとは思いました。
ただ、Oculusの創業者であるパルマー・ラッキー氏が、アントレプレナーのピーター・ダイアモンディス氏によるインタビューで興味深い指摘をしていました。アップルがバッテリーを外部化したのは「正しい方法」だというんですね。
「(一体型のヘッドセット開発する上で)バッテリーやプロセッサーをヘッドセットの前側に置いたことで大幅に重さを増加させることなってしまった。これはあまりよくない決定でした。アップルはより強力なチップセットやバッテリーを搭載するといった将来を考えたのだと思います。性能を上げ、よりヘッドセットを小さくしていくためには、すべてをヘッドセットに搭載するのには限界があるのです」(パルマー・ラッキー氏)
これまでのヘッドセットではバッテリーはヘッドセットの前や後ろに付くのが常識でしたが、今後大きく変わってくるのかもしれません。
それから、Vision Proには恐らくソニー製のマイクロOLEDが使われているのではないかと西田宗千佳さんが予想していましたが、私もこれに賛成です。
2021年のソニーの研究開発技術を発表するSony Technology Dayで発表された「圧倒的な臨場感」を持つというOLEDマイクロディスプレーは、サイズが10円玉サイズにもかかわらず、4Kの超高解像度を実現するというもので、ヘッドマウントディスプレーに使用されることが想定されているとアナウンスされていたのです。ただ、このディスプレーがPS VR2には搭載されないので「どういうことなの?」と思っていたんです。当時もアップルが4Kディスプレーを使うという噂が流れていたので、このソニー製品を使うのではないかと予想していたわけです。
ただし、アップルとソニーのどちらからも正式な発表はされてはいません。仮に他社製であってもこのOLEDマイクロディスプレーが大量生産品で採用される初めてのケースになることもあり、ハード価格を引き上げている一因ではないかと推測しています。
Vision Proは視野角が90度程度で、メタの「Quest 2」の110度ある視野角と比べてもかなり狭いのではないかと言われていますが、それはこのマイクロOLEDのサイズの影響だと思われます。ただ、そこが気にならないように、周囲をぼやかすなどUI/UXの工夫で見せているのはさすがだなという印象でした。
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