ANAグループは、2階建ての巨大な旅客機「エアバスA380(最大853席)」から、プロペラ機の「ボンバルディアDHC8‐Q400(最大78席)」まで、さまざまな機材(機体)を保有しています。どの飛行機にも特徴があり、乗るたびにワクワクするのですが、そのうちのひとつ「ボーイング767」が就航40周年を迎え、2023年6月21日、羽田空港で記念イベントが行われました。
「ボーイング767」は長い間、国内線・国際線問わずさまざまな路線で導入されていたこともあり、乗り込むとホームのように慣れ親しんだ、ほっとする印象のする飛行機です。世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験がある筆者が、40年にわたって日本の空を飛び続けてきた「ボーイング767」の凄さについてお伝えします。
時代を駆け抜ける767とコックピット革新
ANAの「ボーイング767」は1983年6月21日、国内線定期便(羽田ー松山便)として就航しました。1983年と言うと、日本では「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」が公開され、任天堂から「ファミリーコンピュータ」が発売された年です。ちなみにANAが国際線定期便の運航をスタートしたのは、45/47体制終焉後の1986年のため、「ボーイング767」は中短距離路線となる国内線での主力機としてスタートします。
「ボーイング767」は、当時の最新技術が注ぎ込まれた飛行機ですが、特に1973年の「オイルショック」の影響もあり、経済性を重視した設計思想が採用されました。エンジンは左右の翼に1基ずつの双発機で、機体サイズも空力を考慮した、比較的細長いセミワイドボディ機となっています。
コックピットもハイテク化が施され、2台のコンピューターとCRTディスプレーで最適な高度や速度、推力設定を算出できる「FMCS(フライト・マネージメント・コンピューター・システム)」を搭載しました。さらに、従来はピッチ(機首の上下軸)、ロール(横転軸)、ヨウ(左右軸)とそれぞれのコンピューターが独立していた姿勢制御システムを「FCC(フライト・コントロール・コンピューター)」としてひとつにまとめ、FMCSと連動可能な「AFDS(オートパイロット・フライト・ディレクター・システム)」を採用しました。
これらコックピットのハイテク化により、従来の航空旅客機から大きく変わったのがコックピットの乗務員数。それまでは「操縦士2人+航空機関士」の3人で運航していましたが、航空機関士の役目の多くをコンピューターに任せることで、「ボーイング767」では操縦士2人での運航が可能となったのです。
以降の航空旅客機のほとんどが「操縦士2人」での仕様になったことを考えると、ボーイング767は当時としては新世代の、歴史を変えた飛行機と言えるでしょう。
空の制約を打破していった767の信頼性とは
「ボーイング767」には、もうひとつ歴史を変えたポイントがあります。実は、当時の旅客機はエンジン性能の信頼性を考慮し、各国および各航空会社は双発機の場合、原則「万が一片方のエンジンにトラブルがあっても、60分以内に到着できる空港があるルートでしか飛行しない」という制限を設けていました。そのため洋上飛行が多い国際線では、双発機の使用が難しい状況となっていました。
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