今年3月、マウスコンピューターのクリエイター向けデスクトップ「DAIV」シリーズを使って、グラフィックスカードによる画像生成AI「Stable Diffusion」の動作の違いを検証する企画を実施しました(「画像生成AI 速いマシンは世界が違う」2023年3月29日掲載)。
そのマウスコンピューターから、今度はAMD系のマシンである「DAIV FX-A9G90」をレビューしてほしいというお願いがありました。AMD Ryzen 9 7900X プロセッサーと、NVIDIA GeForce RTX 4090を搭載するフラッグシップモデルです(以下、「Ryzen9/4090機」)。
現在、筆者は「Project Genesis」というアクションゲームを少人数の開発チームで進めています。筆者が担当するのは、生成AIを使ったゲームのコンセプトアートの作成や、ゲームに登場する背景などのアセット開発。主に使用しているツールは、画像生成AI「Stable Diffusion A1111 WebUI」、ゲームエンジン「Unreal Engine 5」、「Photoshop」です。
筆者はAMD系のマシンを使用するのは初めてですが、「RyzenはUnreal Engineに強い」という話を聞いたことがあり、実際にどのくらい開発作業に使えるものか試してみることにしました。
ゲーム開発現場での使用感を探るとともに、3月の検証で使用したインテル系のハイエンドモデル「DAIV FX-I9G90」(Core i9-13900KFとGeForce RTX 4090搭載機、以下「i9/4090機」)、「DAIV FX-I7N60」(Core i7-13700KF、NVIDIA RTX A6000搭載、以下「i7/A6000機」)とも使い比べ、性能的なパフォーマンスも検証していきます。
DAIVシリーズ「画像生成AI向けPC」販売中
マウスコンピューターでは記事の検証結果を受け、DAIV FX-A9G90を「画像生成AI向けPC」として販売する。画像生成AI向けPCページのURLはこちら。今後もマウスコンピューターでは独自検証による製品追加を予定している。
DAIV FX-A9G90 | ||
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CPU | AMD Ryzen 9 7900X | |
グラフィックス | NVIDIA GeForce RTX 4090 | |
メモリー | 64GB (32GB×2 / デュアルチャネル) | |
ストレージ | M.2 SSD 2TB (NVMe Gen4×4) | |
無線 | Wi-Fi 6E( 最大2.4Gbps )対応 | |
電源 | 1000W/AC 100V(50/60Hz)【80PLUS PLATINUM】 | |
本体重量 | 約14.1kg | |
OS | Windows 11 Home 64bit |
4K画像が出力可能、計算も速い
Ryzen 9/4090機を触っての第一印象は、さすがにフラッグシップモデルとあってとにかくキビキビ動作していました。i9/4090機と比べて、使用感が大きく異なるということはない印象。しかし、他の機種から移行した方なら必ず動作の速さに驚くはずです。
まずは、Stable Diffusion A1111 WebUIでのベンチマークを実施しました。オープンソース化による進化が続いている、画像生成AIでは事実上の標準環境となっているアプリです。
3月掲載の記事と同じ条件でt2i(text-to-image:プロンプトを使って生成する機能)を試したのですが、全体的に結果に顕著な違いが出ました。
1つは、全体的な高速化。NVIDIAは5月24日に新型ドライバーの「GeForce 532.03 Driver」をリリースしています。Stable Diffusionへの最適化を進めたバージョンで、最大2倍の速度向上がはかれると発表されています。ただしA1111 WebUI側のプログラム改良が必要で、まだ部分的にしか対応していません。それでも新型ドライバーを導入するだけで、10〜15%の高速化が可能です。
さらに驚いたのが、i9/4090機では出力できなかった4K画像(3840×2160ドット)が生成できるようになっていたことです。3月の検証時には、ビデオメモリー不足によってエラーが出て生成を完了させることができませんでした。Stable Diffusionではそれぞれの使用ハードにより、生成可能なサイズは異なるのですが、生成のために必要なビデオメモリーが不足するとエラーが出てしまいます。i9/4090機が搭載しているNVIDIA GeForce RTX 4090のビデオメモリー容量は24GB。それほど大きな画像サイズは生成できなかったのです。
ところが今回検証したところ、Ryzen9/4090機でも、i9/4090機でも4K画質の出力ができるようになっていました。しかも、48GBのビデオメモリーを搭載するi7/A6000機より計算速度が速いという結果が出ました。どうも計算中に搭載するビデオメモリーを使い切った場合、あふれたデータを共有メモリーにスワップさせることで、メモリー不足を解消するという方法が取られているようです。この挙動はA6000用の最新ドライバーでは起こらないので、RTX系のグラフィックスカードに搭載された機能ではないかと考えられます。
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