大きな組織でkintoneを活用するために必要なガバナンスとは
後半は、西日本鉄道 DX・ICT推進部課長 濱邊直人氏も登壇し、対談スタイルで進められることとなった。濱邊氏は2006年に西日本鉄道に入社し、現在はデジタル技術を活用した従業員の生産性向上や組織風土の改革に取り組んでいる(以下、敬称略)。
萩澤:西鉄さんのガバナンスルールについて特徴をお聞かせください。
濱邊:運用規定を定めるにあたって、3つのポイントを挙げました。1点目は内製化、2つ目が野良アプリの排除、3つ目が属人化させないこと、です。
萩澤:内製化を進めるにあたり、どんなルールを作りましたか?
濱邊:特徴的なのはスペースの扱いだと思います。各部門や部署単位でkintoneスペースを分けてアプリを管理しています。開発用のスペースと本番用のスペースを分けて、開発スペースでは自由にアプリを作れます。そこから本番運用する際は、申請してもらい、本番スペースに上げるといった運用を進めています。
萩澤:自由にするところと統制かけるところのバランスがよく取れてると思います。野良アプリ対策はされていますか?
濱邊:開発スペースで自由に作れるため、作りかけのアプリだったり、よくわからないアプリが存在してしまいます。そういった開発用スペースを定期的に棚卸しをして、削除をしてもらうように依頼をしています。実際にはまだ発動していませんが、ルール上は使われていないようなアプリを統括部門が削除できるようにしています。
萩澤:属人化を防ぐためには、どういった活動をされてるんでしょうか。
濱邊:弊社は異動が多いので、コーディングをしないというルールがあります。kintoneはJavaScriptを書いて機能を拡張できますが、それをやってしまうと、担当者が異動した後にメンテナンスできなくなるので、原則はコーディングせず、既存のプラグインを使うような運用をしています。
萩澤:この運用規定は、どうやって作られましたか?
濱邊:kintoneを本格稼働させる前に、kintoneの導入企業の方に話を聞いてみたところ、「ある程度の規模になると統制が取れなくなるから、先にルールを作った方がいい」という意見をいただきました。自分たちだけで作るのは難しいと思い、たとえばkintoneのサイトを参照したり、パートナーさんからの知見も参考にしながら作り上げました。
萩澤:私たちサイボウズが提供している文書に加えて、パートナーさんの知見や他の企業さんにも聞かれていて、すごいです。本当にひとりで抱え込まずに、いろんな方にご意見を聞かれていますね。次の質問ですが、運用規定を作って1年ほど運用してみて、変更されたところなどはありますか?
濱邊:当初、各部署で作ったアプリに対して、管理上の理由で採番していましたが、実際に活用する場面がなく、採番すること自体がコストになってきたので、やめました。
萩澤:逆に、他の変更がなかったということは、先にいろいろな方々からご意見を聞かれたことで、最初に作ったルールの精度がすごく高かったのだと思います。これからはどう運用する予定ですか?
濱邊:各部署が開発スペースと本番スペースを持っていて、開発スペースでは自由にできますが、申請をもらって本番に上げた後はトラブル回避のため、アプリを修正できないようにしています。しかし、使う中で改善点が見えてくることもあるので、たとえば管理者を設定するとかルールをきちんと定めるなどして、少し運用を緩めようかなと思っています。
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