クアルコムに追いつけ追い越せ!
「Dimensity Auto」で自動車業界に参入
MediaTekは29日、台湾・台北市で開催されるコンピューター関連の総合展示会「COMPUTEX TAIPEI 2023」の会期前日に発表会を開催。自動車向けチップセットでNVIDIAと提携することを発表した。スマートフォン向け統合チップセット(SoC)でクアルコムを抜き世界シェア1位になったMediaTekが、次に狙うのが自動車市場への本格的な参入だ。
MediaTekは先日、次世代自動車向けのインテリジェンス化プラットフォーム「Dimensity Auto」を発表した。Dimensityは同社の5Gスマートデバイス向けSoCの製品名で、その名前を冠したDimensity Autoは性能、電力効率、SoCインテグレーションといったMediaTekのスマートフォン向け技術がそのまま自動車に展開される。高性能コンピューティングやAI処理、高エネルギー効率など自動車のスマート化に必要な機能を、ワンストップで総合的に提供できるソリューションだ。
MediaTekはすでにスマートフォンのディスプレーやカメラ、オーディオ制御、また5Gや4G、Wi-Fi 7などの無線技術で高い技術力を持っている。NVIDIAとの提携により、Dimesity Auto向けSoCには同社が開発したAI、クラウド、グラフィックスなどの技術が融合され性能の大幅な向上が期待される。さらに新SoCをADAS(先進運転支援システム)と組み合わせることで、自動車内でのユーザーエクスペリエンスの向上、安全性の強化、シームレスなコネクテッドサービスが期待できる。
エントリーモデルからハイエンド端末まで、あらゆるモデルのスマートフォン向けSoCを展開しているMediaTekが、今後は大衆車から高級車まで様々な車種のデジタル化を可能にしようとしている。
Dimesity Autoは次の4つのコンポーネントの組み合わせとなる。
1、Dimensity Auto Cockpit
次世代自動車のスマートなコックピットとインフォテイメントシステム。マルチディスプレーと8K HDRディスプレーに対応、マルチカメラはHDR処理も可能。サウンド再生はハイレゾオーディオ対応で車内のエンタメ環境を大きく高めることができる。3nmプロセスで製造されるAIプロセッサは消費電力を抑えつつ起動時間も高速だ。
2、Dimensity Auto Connect
車内からインターネットやクラウドへの接続を高速化、安定化させる技術。5G、4Gといったセルラーネットワーク、衛星通信など非地上ネットワーク、Wi-Fi 7やWi-Fi 6、Bluetoothなど異なるワイヤレスネットワーク技術の相互運用や自動切換えを提供し、自動車の完全な常時接続を実現させる。5G向けIoT規格のNR-RedCapやWi-Fi 7のハードウェアオフロード技術なども提供する。
3、Dimensity Auto Drive
MediaTekが開発した高性能なAIプロセッシングユニット(APU)を使いADASの実装を実現させる。NVIDIAとの提携により同社が開発している高度なADASソリューションも統合されることになる。
4、Dimensity Auto Components
自動車メーカーのニーズに応じて多彩なコンポーネントを展開。自動車グレードの信頼性の高いSoCやスタンドアローンのコンポーネントも提供する。
自動車向けのインテリジェントプラットフォームは2021年にクアルコムが「Snapdragon Digital Chassis」を発表しており、すでに複数の自動車メーカーが採用を始めている。調査会社ガートナーによると、自動車内で使用されるインフォテイメント向けなどのSoCの市場規模は2023年に120億ドルに達する予定とのこと。後発のMediaTekはNVIDIAとの協業でこの市場でのビジネス拡大を目指す考えだ。
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