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ラー博にまつわるエトセトラ Vol.23

あの銘店をもう一度第16弾  ハリウッド発 "逆輸入ラーメン"「IKEMEN HOLLYWOOD」

2023年05月16日 09時00分更新

 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 2022年7月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」と、2022年11月7日より、1994年のラー博開業時の8店舗(現在出店中の熊本「こむらさき」を除く)が、3ヶ月前後のリレー形式で出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

 あの銘店をもう一度の第16弾は、逆輸入ラーメンの第1弾となったアメリカ・ハリウッドの「IKEMEN HOLLYWOOD」さんの登場です!出店期間は2023年5月16日(火)から6月5日(月)です。

「JOHNNY DIP(ジョニーディップ)」

 まずは「逆輸入ラーメン」についてお話いたします。

 今でこそラーメンは日本食の代表として世界を席巻しておりますが、その広がりを見せ始めたのが2008年頃。ちょうど「一風堂」がニューヨークに出店を果たしたタイミングからアジアのみならず欧米にも広がり始めました。

一風堂NY1号店

 そこで当館では2010年から本格的に海外のラーメン事情の調査をスタート。当初は日本から海外への進出が大半ではありましたが、日本にお店がなく、海外で誕生したお店も少しずつ増え始めておりました。大別すると以下のようなパターンに分かれます。

【海外におけるラーメン店のパターン】
1、日本に店があるラーメン店の海外進出
2、日本に店がなく、現地の日本人が始めたラーメン店
3、日本に店がなく、現地の外国人が始めたラーメン店

【提供ラーメンのスタイル】
1、日本のラーメンスタイルを踏襲した味
2、日本のラーメンをベースに現地の気候・風土・食文化を取り入れた味

 私たちは「日本にお店がなく、現地の日本人又は外国人が始めたお店」で、「日本のラーメンをベースに現地の気候・風土・食文化を取り入れた味のラーメン店」を探し求め、調査をする中で、海外は日本とは違い、ラーメンを作る環境が整っていないという点に気づきました。例えば、麺は地域によって製麺屋がないため自家製麺をしますが、素材が十分に手に入らず、製麺機を日本から空輸した場合は故障しても修理してくれる業者がいません。また、豚骨や鶏ガラも日本のようにきれいに加工されておらず、とんこつラーメンでよく使用する豚頭等は、毛がついたままの状態です。

 そんな限られた環境の中、知恵と工夫により日本では生み出せないラーメンが誕生しており、私たちはその味と志を紹介したいと思いました。それが「逆輸入ラーメン」のコンセプトです。

 2013年時点で世界17ヶ国26都市を訪れ、アメリカ・ハリウッドにあった「IKEMEN HOLLYWOOD」(現在は閉店)を"逆輸入ラーメン"シリーズの第1弾として紹介することとなりました。

IKEMEN HOLLYWOOD外観(2013年撮影)

 「IKEMEN HOLLYWOOD」は2011年8月、ロサンゼルス市ハリウッド地区のブレア通りにオープン。エンターテインメント界で活躍した人たちの名前が刻まれた星型プレートが埋め込まれている「ウォーク・オブ・フェイム」から歩いて3分ほどの場所に位置します。

  オーナーのMAX KAWABATA氏は1990年代、アメリカで食べた日本食のクオリティにショックを受け「本物の日本料理を世界に広める」という想いを胸に渡米。NAKAMURA氏は若きカリスマラーメン店主と言われた「中村屋」店主・中村栄利氏で、日本での華やかな功績を捨て、2009年「日本のラーメン文化を世界に広める」という大志を胸に渡米しました。

 そんな志を持った2人が2011年、ハリウッドで運命的な出会いを果たし「IKEMEN HOLLYWOOD」が誕生しました。

創業前日のIKEMEN HOLLYWOOD店前にて

 コンセプトは「HOLLYWOOD発」。エンターテインメントの町だからこそ、メニューからネーミング、内装、制服まで、全てにおいて「尖ったエンターテインメント」を追求。ラーメンのスタイルは、自由の国アメリカを象徴する無国籍なテイストに日本の食文化を融合させた「アメリカンジャパニーズフュージョン」です。

尖ったエンターテイメントを追求した制服

 そして現地アメリカ人に支持されている理由の一つがUMAMI成分を持つ「鰹節」です。アメリカで大企業でも成しえなかった本枯れ鰹節の正規輸入に成功し、特注の鰹節削り器を使い、お客さんの目の前で削りたての鰹節をつけ麺やラーメンに投入するパフォーマンスを実現。これまで煮干しや焼干しなどはアメリカ人から「魚臭い」と敬遠されがちでしたが、削りたての鰹節は「これぞまさにUMAMI」とアメリカ人の間でもブームとなりつつありました。

鰹節削り器

 「IKEMEN HOLLYWOOD」はアメリカ初のつけ麺(DIP RAMEN)をメインとしたお店で、日本のつけ麺、ラーメンとも一線を画した味わいです。またハリウッドという土地柄からメニュー名もエンターテインメント性たっぷりです。

「JOHNNY DIP(ジョニーディップ)」

 「IKEMEN HOLLYWOOD」のシグニチャーメニュー。つけダレはとんこつをベースに、バジル、松の実、オリーブオイル、ニンニク、2種のチーズを使用したオリジナルつけダレ。「香り」と「旨味」を最大限に活かしたつけ麺です。

「IKEMEN DIP(イケメンディップ)」

 とんこつをベースのつけダレに、削りたての「枕崎産 鰹節」をふんだんにトッピング。削りたてですので香り、旨味が違います。

「ZEBRA DIP(ゼブラディップ)」

 とんこつをベースのつけダレに、シマウマをイメージした黒ニンニク油をあしらった、人気メニューです。

 その他期間中には今回オリジナルのつけ麺も披露する予定です!

 次回は、銘店シリーズ第17弾 は逆輸入ラーメン第3弾「カーザルカ」さん。

 お楽しみに!!

新横浜ラーメン博物館公式HP
https://www.raumen.co.jp/

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文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。

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