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三菱電機、意思決定プロセスを簡素化、検査不正問題へのアンサーは?

2023年05月15日 08時00分更新

今回のひとこと

「三菱電機は、BA(ビジネスエリア)単位での経営へと移行しており、これをさらに進化、発展させる。BAオーナーがスピーディな意思決定を行い、経営改革や事業変革の実行を強化する」

(三菱電機の漆間啓社長兼CEO)

BA戦略室

 三菱電機は、2022年4月からBA(ビジネスエリア)による経営体制を敷いてきたが、1年を経過し、それをさらに進化させるために、2023年4月から、BA戦略室を、各BAのなかに新設した。

 三菱電機の漆間啓社長兼CEOは、「三菱電機は、BA単位での経営へと移行し、同時に権限委譲を推進し、事業ポートフォリオ戦略の強化に取り組んできた」と前置きし、「今回のBA戦略室の設置は、BA経営体制のさらなる進化と発展を図り、スピーディな意思決定を行う狙いがある。BAオーナーは、経営改革や事業変革の実行を強化することができるようになる。BA戦略室は、各BAにおける戦略立案や実行を担い、BAオーナーを支える組織であり、投資家の視点でBA内を俯瞰し、資源の再配分による資産効率の最大化を行うとともに、ポートフォリオ戦略の立案実行、事業本部の壁を超えたシナジーの発揮、BA内とBA間の技術およびノウハウの融合、BAをまたがる人と技術のダイナミックな連携やソリューション事業の提供を推進していくことになる」と語る。

 現在、三菱電機には、社会システム、電力・産業システム、防衛・宇宙システムで構成する「インフラ」、FAシステムや自動車機器事業を担う「インダストリー・モビリティ」、ビルシステムやリビング・デジタルメディア(空調・家電)を担当する「ライフ」、情報システム事業を行う「ビジネス・プラットフォーム」の4つのBAがある。

 インフラBAでは、カーボンニュートラルの実現やエネルギーの安全保障、人手不足と老朽化するインフラ対策などの社会課題解決に取り組み、E&F(エナジー&ファシリティ)ソリューション事業を推進することになる。ここでは、2022年度に赤字を計上した防衛・宇宙システムのテコ入れが課題といえる。

 「防衛・宇宙システムは大口案件が増加したが、難度が高い開発案件において、大きなロスを出し、不本意な結果となった。プロジェクトの立て直しとともに、お客様のとの契約形態などの見直しを図っている」(三菱電機 常務執行役 CFOの増田邦昭氏)とする。

 社会システムや電力・産業システムも減益となっており、2023年度もインフラ全体では減益計画となっている。収益性の改善が課題だ。 

 インダストリー・モビリティBAでは、パワーエレクトロニクス技術とモーター技術、制御駆動技術を強みに、付加価値が高いコアコンポーネントを提供。好調なFAシステムが牽引役となっている。2022年度FAシステムの業績は、スマホや半導体などのデジタル関連分野の需要は減少したものの、リチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野を中心に需要が堅調で、過去最高の売上高および営業利益を達成している。その一方で自動車機器事業は、2023年4月に、分社化する構造改革を発表。事業運営の効率化と、事業ポートフォリオの再構築を図ることになる。

 漆間社長兼CEOは、「CASEをはじめとして、産業構造が急速に転換するなか、意思決定プロセスを簡素化し、よりスピーディな事業運営を行うため、自動車機器事業の分社化を実施する」と語り、「自動車機器事業は、当初は重点成長事業のひとつに位置づけていたが、急激な素材価格の高騰や物流費の増加など、コスト側の変動が想定以上となり、さらに、お客様に値上げの理解を得るまでにも時間がかかり、損益が急速に悪化した。電動化の需要が当初計画ほど伸びていないという影響もある。重点成長事業であることを一度見直す必要がある。今後、急速に市場が拡大すると予測される電動化に向けてしっかりと対応できるようにしていく」と語る。

 自動車機器事業の構造改革では、3つの施策に取り組む。ひとつめは、電動化やADASなどのCASE関連事業である。「技術シナジーが見込める最適なパートナーとの協業を模索し、三菱電機の先端技術を活用しながら成長軌道に転換することを目指す」と漆間社長兼CEOは語る。

 2つめは、電動パワーステアリングシステム製品などの強みが活かせる事業である。これに関しては、「コスト削減と効率化を推進するとともに、価格転嫁の加速などによる取引条件の見直し、不採算事業の削減、収益性の期待できるプロジェクトにリソースを集中させることに取り組む」という。

 そして3つめが、課題事業であるカーマルチメディア事業の終息だ。

 「カーマルチメディアは、2000億円弱の事業規模があるが、赤字が継続しており、収益改善が難しいと判断し、早期終息を図る」とし、すでに2022年度から新たな商談を停止。一度黒字化した上で、プロジェクトごとに、2~3年をかけて、段階的に終息することになる。

 漆間社長兼CEOは、「構造改革により、2023年度の自動車機器事業全体で黒字化し、中期経営計画においてはしっかりと収益を出せる体制構築を目指す」と語り、今後のCASE市場の成長を見据え、それに向けた体質改善を急ぐ考えだ。

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