新しい季節を迎えて、パソコンの環境も新しくしようと考えている人も多いだろう。自分ではMacを使いたいけど、会社の仕事や大学の授業などで、どうしてもWindowsが必要という人も少なくないだろう。
そんな人には朗報だ。マイクロソフトが、Mac上のParallels Desktopの環境をWindows 11の動作環境として正式にサポートすることを表明したのだ。これで会社や大学で大手を振ってMacを使い続けることができる、かもしれない。どうすればいいのか、詳しく見ていこう。
マイクロソフトがParallels Desktopを正式サポート
そもそも、「どうしてMacではWindowsやそのアプリを直接利用することができないのか」「MacとWindowsの関係はどうなっているのか」といったあたりから簡単におさらいしておこう。
MacもWindowsのPCも、同じパソコンであることに変わりはない。言うまでもなく本体、画面、キーボード、マウス、またはトラックパッドなど、構成要素もほとんど変わらない。さらに少し前まで、正確に言えば2020年の9月にApple Siliconと総称されるチップを採用したMacが登場する前までは、心臓部であるチップの種類もほとんど同じ。ともにインテル系の命令セットを実行するチップを搭載していた。
しかもアップル自身が、MacにWindowsをインストールして実行するための「BootCamp」と呼ばれるソフトウェアを提供していたほど。また、サードパーティ製の仮想環境ソフトを利用することで、macOSの上の1つのアプリとしてWindowsを実行することも可能となっていた。つまりMacとWindowsの親和性はかなり高い状態だった。
その状況に変化が生じたのは、すでに述べたように、Apple Siliconを搭載したMacが登場してから。Apple Siliconは、それまでのインテル製のものとは異なり、ARM系のコードを実行するチップだ。OSやアプリにとっては、まったく異なるコンピューターに見えるもので、そのままでは旧来のプログラムは実行できない。それ以前にはARM系のチップを搭載するパソコンは稀で、WindowsにもARM系用のものがあるにはあったが、ほとんど普及しておらず、まったく別世界のものとみなされていた。
それを機に、アップルはBootCampの提供をやめてしまったので、Macに直接Windowsをインストールすることはできなくなった。しかし、仮想環境ソフトの中でもParallels Desktopは、いち早くARM用のWindowsをmacOS上で利用できるようなアップデートを実現し、Apple Silicon搭載のMacでもWindowsを利用できるようにしてくれた。ただし当初利用可能だったARM用Windows 10は、「Insider Preview」という一種のベータ版で、動くには動くが、動作の保証は得られないものだった。その上で使うアプリも、動けばラッキー、動かなくても文句は言えないというレベルのもの。残念ながらMacとWindowsの親和性は、一歩後退したと言わざるを得ない状況となった。
その後、マイクロソフトが製品版としてARM版Windows 11を発売したことで、このような状況にも好転の兆しが見え始めた。ちょっと考えると、ARM用のWindowsなのだからARM用に開発されたアプリしか動かないのではないかと思うかもしれない。
しかしARM用のWindowsには、インテル用に開発されたアプリのコードをその場でARM用に変換して動かす、一種の翻訳機能が内蔵されている。これは、Apple Siliconを搭載したMac上で、旧来のインテル用に開発されたアプリを動かすためのRosettaと呼ばれる機能と同様のもの。ユーザーは、どちら用のアプリなのか、まったく意識することなく、ほとんどのアプリを起動して利用できる。
こうしてARM用のWindowsでも、ハードウェアに直接アクセスするような特殊なものを除き、一般的なアプリなら、オフィス系やゲームなどを問わず、従来のインテル用アプリをほとんどそのまま利用できるというすぐれたものとなっている。
その上、冒頭で述べたように、マイクロソフトはARM用のWindows 11の動作環境として、Apple Silicon搭載Mac上で動く仮想環境ソフト、Parallels Desktop 18を正式にサポートすることを表明した(https://support.microsoft.com/en-gb/windows/options-for-using-windows-11-with-mac-computers-with-apple-m1-and-m2-chips-cd15fd62-9b34-4b78-b0bc-121baa3c568c)。
これで過去のものを含むすべてのアプリが動くことが保証されたわけではないが、少なくともARMを搭載したWindows専用機と同等のレベルで、Mac上でもWindows 11がサポートされることを意味する。Mac上でWindowsを使いたい人にとって、かなりの安心材料と言えるだろう。
ただし、インテル版のWindowsに対してARM版のWindows 11固有の制限というものもある。現在正式に表明されているのは、主にゲーム用のAPIとして、DirectX 12以降、OpenGL 3.3以降がサポートされていないというもの。逆に言えば、DirectX 11、OpenGL 3.2まではサポートされていることになる。このあたりを了解して使うなら、MacでもほとんどWindows PCと同様にWindowsアプリを使うことが可能となったのだ。
この記事ではこれ以降、実際に最新のM2 Proチップを搭載したMac miniを使って、その上にParallels Desktop 18をインストールし、さらにWindows 11をインストールして、いくつかのアプリの動作を試していく。Parallels Desktopそのものについては多くを語る余裕がないので、それについてはこちらのレビュー記事を参照してほしい。2022年、正式版のWindows 11が使えるようになった時点のもので、Parallels Desktop 18について基本的な事項も解説している。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります