ファーウェイに対する逆風は止みそうにない。トランプ大統領のもとで始まった制裁の方向性が注目されていたが、バイデン政権でもさらに厳しい措置を講じている。そんな中で、創業者の任正非(Ren Zhengfei)氏は、ここ数年で1万3000点の部品を中国製の部品に入れ替えてきたことを明らかにした。
3年間で1万3000もの部品を中国製に置き換え
任氏の発言は上海交通大学でのもの(https://aitri.sjtu.edu.cn/aitri/doc/5b108290-93d1-4320-818f-295c5c235f46)。
読者もご存知のように、ファーウェイは2019年に米国の「エンティティリスト(禁輸リスト)」入りした。これにより、米国産技術を用いた対象品目の製品を同社に輸出・再輸出できなくなった。ここには各種半導体などが含まれており、輸出するためには事前の許可(ライセンス)が必要。今年に入り、バイデン大統領はこれまで申請すれば許可が降りていた4G関連のパーツなどに対しても禁止するという強硬な姿勢をとっている(「「危機を脱した」と宣言したファーウェイに対し、米政府が輸出を全面禁止の動き」)。
今回公開されたスピーチの内容によると、この3年間、制裁によって供給を止められた部品について、ファーウェイは中国製部品に置き換える作業を進めているとしており、すでに1万3000点以上で達成したという。また、4000点以上の回路基板の再設計をしたことも明かしている。
任氏が強調するのは、ファーウェイの技術力だ。「20年近くを基礎理論の準備に費やし、数千億ドルを投じて、基礎理論を研究する科学者らをトレーニングしてきた」と語っている。ファーウェイは2022年、研究開発に238億ドル(約3兆1000億円)を費やしたという。
社内向けにERPも開発、AIでは土台技術に専念
それだけではなく、企業の経営の基本となるリソース管理や計画をつかさどるERP(Enterprise Resource Planning)も自社開発し、「MetaERP」として4月にローンチすることも公表している。MetaERPは、独自のOS、データベース、コンパイラや言語などで開発したという。
ERPは一般的に会計、オペレーション、サプライチェーン、人事などのリソースを効率よく活用するためのプランニングや管理の機能を含むもので、そう簡単に開発できるものではない。あらためて同社の技術力には驚くばかりだ。なお、MetaERPはファーウェイが収益性を改善するために開発した社内向けのものであり、外部への販売は考えていないそうだ。すでに各部門で実際に使用できるためのテストや総勘定元帳の年次決算のテストも済ませているとのことだ。
任氏のスピーチでは、もう1つ注目に値する部分がある。世界をにぎわしている会話型AIについての考えだ。
この分野では現在、OpenAIの大規模言語モデル「GPT」に基づく「ChatGPT」が一人勝ちのような状況だ。早々に同社に目をつけていたMicrosoftが「Bing」や「Microsoft 365 Copilot」に組み込んでいる。任氏のスピーチはCopilot発表の前だが、この分野のAIのプレイヤーは「Microsoftだけではないだろう」とする。ただし、ファーウェイはこの分野に参入する計画はなく、土台の処理を支える部分に専念する。また、これらAIサービスが広がるためには5Gが必要ともしている。
なお、対話型AIでは米国がリードしており、中国のテック企業は遅れをとっている。バイドゥは3月に入り「Ernie」をリリースしたところだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります