ここ数年、コンピュテーショナル・オーディオという言葉がよく使われている。コンピュテーショナル・フォトグラフィーは、演算の力でカメラの画質を高めようという試みだが、オーディオの世界では当然ながら「音質」がテーマだ。
先日、アップルが満を持してリリースした第2世代HomePodも、そうした演算能力を用いてオーディオ体験の質を高めようとした製品だった。その成果については、以前に先行レビュー「【先行レビュー】大幅進化の第2世代「HomePod」比較するライバルがいない理由(本田雅一)」でお届けしたが、ワイヤレススピーカーの業界ではグローバルでトップの位置にある米Sonos(ソノス)も、ほぼ同じタイミングで新世代ワイヤレススピーカーを発表した。
しかし、開発の方向性はアップルとは大きく異なる。
Sonos本社がある米カリフォルニア州サンタバーバラの開発拠点を訪問し、第4世代となる新しいSonos製品について体験するとともに、その開発目標や音質設計について話を聞き、さらに音質評価も短時間ながら行ってきた。
「シングルユニット」のスピーカーでステレオ、空間オーディオを
ワイヤレススピーカーの発表のためにグローバルから記者を集めるのは異例だが、それだけ同社にとっては重要かつ自信のある製品だったのだろう。現地で披露されたのは時代を表す「Era」を名称に盛り込んだ「Sonos Era 100」と「Sonos Era 300」だ。
Era 100は第3世代Sonos製品における「Sonos One」に相当する製品だが、Era 300は従来製品におけるOneとFiveの中間価格帯とサイズのワイヤレススピーカーだ。
Sonosのシステムはほかのどの製品とも異なり、独自のWiFiネットワークで相互接続され、複数スピーカーを接続してもステレオ、サラウンドなどのアレンジをしても、異なるゾーンで複数のスピーカーに同じコンテンツを送る場合でも、完璧な同期が取れるようになっている。
さらにインテリジェンスに、スピーカー自身が音楽ファイルサーバやDLNAサーバ、あるいは音楽配信サービスに接続し、スマートフォンやPCの助けなしに音楽を再生できる。そうした意味ではアップルのHomePodをさらに拡張し、世界中の様々な音楽配信サービスや宅内での音楽共有環境などに対応できるようにした、極めて汎用性の高いワイヤレススピーカーだ。
第4世代となった今回は機能面では従来の製品を引き継いでいるが、Era 100ではステレオ再生、Era 300では空間オーディオ(Dolby Atmos)再生をシングルユニット、すなわち1台のスピーカーで実現しており、また内蔵するプロセッサの能力は従来よりも47%高性能化され、WiFi 6、Bluetoothオーディオにも対応したという。
さらにシステム拡張においても、従来よりも高い発展性を備える。それぞれの製品を2台ペアで使うことにより、ステレオ再生や空間オーディオ再生の質を高められるのはもちろんだが、壁反射を用いて立体的な音響を実現するSonos ArcやBeamといったHDMI対応のSonos製サウンドバーにEra 300(2台)、それに最大2台までのSonos Sub(サブウーファー)を用いることで、より優れたDolby Atmosの再生品位を実現する。
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