AIが電波の受信状況にあわせて最適化する
「5G AI Suite Gen 2」でミリ波の接続安定性向上
クアルコムはスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2023に出展。ホール3のクアルコムブースでは、同社の最新技術や衛星通信に関する展示が行なわれていた。
とくに注目を集めていたのが、ミリ波に関する改良。ポイントとなるのが5G対応モデムの「Snapdragon X75 5G modem-RF」。昨年発表された「Snapdragon X70 5G modem-RF」では、ミリ波とサブ6両対応させる場合は、それぞれトランシーバーが別れて搭載されていたが、「Snapdragon X75 5G modem-RF」ではそれを統合。これにより、実装面積を小さくでき消費電力も抑えられるとのこと。
またAIエンジン、「5G AI Suite」の最新バージョン「5G AI Suite Gen 2」が搭載されており、反射波など電波の受信状況にあわせてAIが最適化を行なう。特にミリ波は障害物の影響を受けやすいので、「5G AI Suite Gen 2」により通信速度の向上が期待できる。
こういったミリ波に関する技術改良が進むことにより、これまで局所的でしか使えなかったミリ波をより広いエリアで使えるようになる。担当者によると「ミリ波に関してはカバレッジを作るという発想にはない。ただホットスポットのような局所的なものではなく、ホットゾーンという言い方をしている」と話しており、ある程度実用的なミリ波のエリアが今後広がっていくと説明した。
「Snapdragon X75 5G modem-RF」の出荷は2023年中の予定。今年の後半から来年初頭にかけて登場するハイエンドスマートフォンなどに搭載されると予想される。
会場内にはスペインの通信キャリアのテレフォニカが商用環境のミリ波基地局を設置しており、端末展示コーナーでは、Xperiaを使ったミリ波の速度テストも展示。下り2.4Gbpsでの通信速度を計測していた。
ただし、これは何回か速度テストをした上での高スコア。測定するの人の立ち位置によっては下り1Gbpsを下回ることもあり、現状のミリ波の課題がよく分かる展示となっていた。こういった弱点が「Snapdragon X75 5G modem-RF」で解消できることを期待したいところだ。
また、端末展示コーナーにはレノボのSnapdragon 8cx Gen 3を搭載した「ThinkPad X13s」を展示。ミリ波にも対応したモデルで、担当者によると一部クアルコム社員に業務用PCとして配布されており、社内で使われているとのこと。
さらにIoT向けの5Gモデム「Snapdragon X35 5G modem RF」を展示。IoT機器ではそこまで通信速度は必要ないため、帯域を絞って消費電力を抑え長時間使用できる用になっている。
同じコーナーでは、クアルコムが1月に発表した通信衛星の「Snapdragon Satellite」についても解説。ディスプレーでの説明のみ実機を使ったデモはなかったが、イリジウムが提供している低軌道衛星を使用することや、テキストメッセージが送れるといった説明が行なわれていた。
「Snapdragon Satellite」は専用のチップを搭載することで、GoogleのAndroidプラットフォーム経由でサービスが受けられるようになるとのこと。端末メーカーとしては、OPPOやXiaomi、モトローラなどが対応を表明している。
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